東京タワーの蝋人形館が9月1日で閉館となるというので,なくなってしまう前に見納めに行ってきた。そこにあったのは,蝋人形をキーにした魂のコレクションだった。
東京タワーの蝋人形館が2013年9月1日に閉館となった。そのお知らせが東京タワーの Web サイトに掲載されたのが7月 (東京タワー蝋人形館が閉館へ、ネットで惜しむ声 ロックミュージシャンと拷問人形並ぶマニアックな施設 : J-CASTニュース)。とても残念である。閉館する前に行って見納めをしてくることにした。前回行ったのはもう数十年前のことで,ぼんやりとした記憶しかない。
東京タワーが全体的に黒っぽく見えるのは,光の加減ではない。どうやら塗装の塗り直し工事のため,足場とネットが取り付けられているようだ (平成25年2月より足場組みの作業等をはじめており、塗り始めてから10ヶ月ほどかかる見込みです。現在のところ、平成26年2月中終了予定です。工事は全て夜間に行います。
東京タワーの秘密(東京タワーQ&A) | 東京タワー TokyoTower オフィシャルホームページ)。
蝋人形館があるのは,東京タワーフットタウンの3階。タワーに登るにはチケットを購入する必要があるが,タワーの下にある4階建てのビルへの入場は無料である。今回はフットタウンが目的なのでチケットは不要。エレベーターで3階へ。
蝋人形館の入口には,大きく「蝋」の文字が。よく見ると,マルに「田」のロゴがついている。これは「でん」と読むはずである。入場料は500円。隣のスペースワックス (3Dミニシアター) も500円だが,両方見られるチケットは800円にディスカウントされる。この情報を見逃していたので,500円で蝋人形館へ。
今回はいつになく家族連れで賑わっていた。おそらく,言い出しっぺはお父さんであり,「家族サービスにかこつけてタワーに登るが,本当の目的は蝋人形館」のような感じだろう。しかし,ここでの問題は,子どもは蝋人形に全く興味がないということである。つまりじっくりと見ることはできないに違いない (涙)。
入るとマリリン・モンローがお出迎えしてくれる。「七年目の浮気 - Wikipedia」の有名なシーンである。残念ながら,下から風が吹き上がるというギミックは動作していなかった。よく見ると横にいるマドンナの足元にも通気口があるではないか。もしかして,マドンナのスカートもめくれ上がる仕掛けだったのではないだろうか。後ろと横は鏡張りであり,全方向から観察できるようになっている。「風ボタン」を探したが見つからなかった。あったらいいな「風ボタン」,押してみたいぞ「風ボタン」。
次に来るのは,エリザベス・テーラー,ジョン・ウェイン,シャロン・ストーン,ジョディ・フォスター,ジュリア・ロバーツである。猿の惑星のコーネリアスもいる。しかし,この人口密度の高さはどうだろうか (人形口密度?)。創業が1970年であることから考えて,徐々に増やしていったとしても,密度として濃すぎである。実は,ここは「一般向け」の展示であって,その理由は後々明らかになるのであった。
ありがたかったのは,場内のカメラ撮影が禁止されていないことだった。以前は撮影禁止だったから,閉館直前の大盤振る舞いなのかもしれない。ともあれ,時間とともに風化してしまう記憶は頼りにならないので,写真に残せるというのは大変嬉しかった。
観覧コースとしては,「一般向けコース」のまま出口に向かうことができるが,その手前で横にそれるルートがある。それはジミヘン (ジミ・ヘンドリックス - Wikipedia) から始まる「ロックミュージシャンコース」である。
上は「Le Berceau de Cristal」のコーナー。これは,アシュ・ラ・テンペル のアルバムのレコードジャケットを立体的に再現したものである (ジャケット参考 Le Berceau de Cristal)。しかし何か足りない。それは,中央の女体の彫刻である。彫刻を蝋人形で再現したものが中央に置かれていたはずなのだが,ヌードであることから,もしかすると自主規制で取り除いてしまったのかも知れない。したがって,そこは単なる「写メの背景」としか機能していなかった。
自主規制の可能性としては,「拷問コーナー」にも言える。以前は「丸見え」だったが,壁ができていて,小さな覗き穴からしか見ることができなくなっていた。見たい人だけが見ればいいという点では,ゾーニングとして適切だが,見たい人が全体を見られないという点では残念である。
そしてザッパ兄さん (フランク・ザッパ - Wikipedia)。これは似ているんじゃないか。東京タワーの蝋人形館と言えばフランク・ザッパだよね〜と,昔はそう言っていたっけ。
キング・クリムゾンファンとして今回特に会いたかったのはフリップ先生である (ロバート・フリップ - Wikipedia)。見た目,どちらかというとマイケル・ジャクソンの後期 (!?) に似ている。しかも若すぎだが,そんなことは問題ではない。お会いできたということが重要なのだ。そういえば,以前あったマイケル・ジャクソンが見当たらない。ジミー・ペイジもあったらしいのだがどこへ行ったのか。
太陽と戦慄 の皿を発見。こんなのも作られていたのか。欲しい! と思ったが,ちょっと待てよ。手に入ったとしても,皿としては使いたくないし,だからといってただ仕舞っておくのは意味がないし,と悶絶する自分の姿が見えた (皮算用的姿である)。
ルッツ・ウルブリッヒはアシュ・ラ・テンペルの元メンバー。蝋人形としてはこれが一番似ているような気がする。蝋人形館に登場したのは10年前の2003年のことのようだ。
ジャーマン・プログレ/クラウト・ロック好きが聖地とあがめる東京タワーの蝋人形館に、新たにルッツ・ウルブリッヒの蝋人形が追加された。彼は、アジテーション・フリーに参加後、ア・シュラのメンバーとして、マニュエル・ゲッチングを支えてきた人物。これで、同館のジャーマン・ロック蝋人形コーナーには、クラウス・シュルツ、マニュエル・ゲッチング、マニ・ノイマイヤーとあわせ、4体の人形が並ぶこととなったのだそう。
OOPS! ウープス - 東京タワーの蝋人形館にルッツ・ウルブリッヒ登場 2003/05/21 20:58
館内に流れている音楽は,マニュエル・ゲッチングの E2-E4 (東京タワー蝋人形館の閉館前にこれを聴け! |エンタメ情報まとめサイト『minp!』)。マニュエル・ゲッチングはアシュ・ラ・テンペルのリーダーである。同館のオーナーはアシュ・ラ・テンペルが本当に好きなのだろう。
蝋人形館のたたずまいは,一見B級である。しかし,実際はB級ではない。「B級」というのは「B級映画」からの転用で,B級映画というのはもともとは早撮り低予算の映画のことだったのである (B級映画 - Wikipedia)。蝋人形館には見た目以上の額がつぎ込まれている。蝋人形館には70〜100体の蝋人形があるそうで,実際の価格は不明だが,1体200万円だとしても (朝日新聞の記事) 1億5千万円から2億円はかかっていることになる。ビートルズの蝋人形は2000万円だそうだ。
社長のロック好きは筋金入りです。例えば、ビートルズの名盤のジャケットに実際に使用されたメンバーのろう人形を2000万円で購入。
というか,ビックリしたのはその値段だけではなく,ジャケットのメンバーたちが蝋人形だということである。確かにメンバーは「蝋人形」だとされている (サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド (アルバム) - Wikipedia)。
話がそれてしまった。これだけのお金をかけられるというのは,オーナーがお金持ちだということである。オーナーは藤田元という方で,藤田田氏のご子息である。藤田田氏は,日本マクドナルドや日本トイザらスの創業者として知られている (藤田田 - Wikipedia)。蝋人形館の入口のノボリにあった「田」のマークはこの意味だったのである。
今回来てみて改めて分かったのは,東京タワー蝋人形館の魅力は,むしろ蝋人形以外のところにあるということだった。それは,かなり限定的ではあるが特定のミュージシャンに関する膨大なコレクションである。中心にあるのはアシュ・ラ・テンペルだが,ロックつながりでディープ・パープル,プログレつながりでキング・クリムゾン,ドイツつながりでカンなどに広がっていた。さらにまったく関係のない昭和レトロなグッズの数々。すべてに共通するのは,「オーナーの好きなもの」であること,ただひとつである。オーナーの琴線に触れたレアな品々,それを見せる場だったのである。
引いた見方をすれば,これは単なるコレクション自慢である。オーナーが永井豪ファンクラブの会員で還暦を祝ってもらっていることも分かった。その他,ミュージシャンと一緒に撮った写真や自分宛のサインもあって,「他人の自慢話を金を払って聞くのかよ」的な一面も確かにある。しかし,これだけの激レア品が集まっているということは価値があることなのである。例えば,自分で持っていたとしても,普段は邪魔だし,多分押入れの奥にしまいこんでおくしかなく,宝の持ち腐れになるだけで,何も価値を産み出さない。集めて展示するということで始めて価値を持つものもあるのである。
コレクションは基本的に男ばかりでハードボイルドな感じなのが好印象。そして,少しだけ女性に対する趣味が出ていたのもさらに好印象だった。ブリトニー・スピアーズ,ケイト・アプトン,ケイト・ミドルトン (英皇太子妃) である。ケイト・アプトンはいいねぇ。お世話になりました (?)
一般的に,この蝋人形館のようなスタイルは,地方の秘宝館などによく見られるものである。よくあるパターンとしては,地方のお金持ちがお金にものをいわせて珍品を収集して展示してみるものの,徐々に興味が薄れていき,ホコリがたまってグダグダになってしまうというものがある。一方で,この蝋人形館はホコリがたまるどころか,常にアップデートされていてごく最近のものまであるというところにスゴさがあった。
出口を出たところにあったショップで,閉館後について聞いてみたところ「半分は移転先へ,半分は会社の倉庫に保管する予定です。移転先はまだ言えません」とのことだった。
心配なのは同館にあるという70〜100体のろう人形の今後。まさか、お役御免ですべて処分されてしまうのか?
「いえ、当面の間、倉庫に保管します。また、ロック関連のろう人形のみ、別の場所に移転して展示する計画も進行中です。未確定ですが、ろう人形館としての再スタートではなく、ロックカルチャーを語り継ぐための施設になる予定です」(運営会社広報担当者)
この話と一致している。廃棄されてしまうのではないとのことで安心した。蝋人形館のリニューアルオープンに期待である。
今回の私自身の収穫としては,ジャーマン・ロックの CAN の展示コーナーで見つけた DVD である。どうしてこんなところにヌードジャケットの DVD が? と思ったら,映画 Deep End の音楽は CAN が担当しているということで,これは観てみなければならないなと。
リニューアルオープンしたあかつきには是非訪れたい。ホルガー・シューカイの蝋人形なんか見てみたいのだがどうか。
Posted by n at 2013-09-04 22:18 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
Master Archive Index
Total Entry Count: 1957