大腸がん検診の一環で注腸検査というのをやったのだが,検査結果を説明してくれる医師が,この検査はあまり意味がないと…。えっ? なにそれヒドい。同じ目にあう人が少しでも減ればという思いを込めて情報共有しておく。
今年の大腸がんの検体検査で便潜血陽性だというので,かかりつけ医に総合病院への紹介状を書いてもらった。平たく言うと,この場合の検体というのはウンコのことで,要するに「ウンコを送りつけて調べたら,血が混じっていたので,もっと詳しい検査ができる病院に行くことになった」ということである。
ところが,総合病院というのは,曜日によって来ている医師が違うし,専門家が休暇のときは別の科の医師が担当することになっている。今回,私を襲った悲劇的結末は,これらのダブルパンチが原因だった。すなわち,検査を決定した医師は専門外であり,その医師は検査当日まで責任を持ってみてくれた訳ではないということであった。
検査を決定したのは,高木医師 (仮名) である。大腸がん検査は,専門医としては消化器科の医師となるのだが,この医師は外科であった。外科の医師でもこのくらいの診断はできるのである。その際の説明は次のようなものだった。
医師: 大腸の壁は,胃の壁と違ってとても薄いので,誤って傷をつけてしまうと大変なことになる。だから,最初は注腸検査をやって,問題が見つかったときに内視鏡を改めてやりましょう。ということでいいですね。
私: はい,分かりました。
注腸検査というのは,バリウムをお尻の穴から「大腸」に向かって「注入」し,レントゲン撮影して撮影された像を検査する方法である。実際の注腸検査は,医師が行うのではなく,レントゲン技師が行う。
最終的には,患者である私が検査方法を了承したことになっているが,所詮は素人なので,大先生の言われるがままである。この日は検査の予約日を決めて終了となった。
ところが,検査当日,検査の終わった後に結果を説明する医師の見解は違っていた。窪田医師 (仮名) も消化器科ではなく,外科だったが,次のようなやりとりがあった。
医師: どうして内視鏡検査でなく,注腸検査にしたんですか? 注腸検査では,細かいところがよく見えないので,あまり意味がないんですよね…。
私: えっ?
そこで,注腸検査を決定した医師が説明してくれた内視鏡検査のリスクについて伝えたところ,「そんなこと言ったら,注腸検査だって何が起こるか分からないですよ。やってみて分かったでしょ,お腹に空気入れられて…」,注腸検査にも内視鏡検査にもリスクはあるとのこと。また,注腸検査では,小さい腫瘍は見つけられないとのことだった。エックス線画像では,腸壁の向こう側とこちら側が重なってしまうし,バリウムが溜まったところは白飛びして判断できないのである。
この医師の見解では,注腸検査では細かい部分が見えないため,「注腸検査」→「便潜血の原因が特定できない」→「内視鏡検査」となるし,逆にもしも大きな腫瘍があれば「注腸検査」→「腫瘍をよく見る必要がある」→「内視鏡検査」となって,いずれの場合でも内視鏡検査が必要ということになるというのである。つまり,注腸検査をやってもやらなくても大腸ファイバーによる検査が必要になるということは,やるだけ無駄だというわけである。ごもっとも。
注腸検査を勧める医師に反対するということは,言うのは簡単だが,実行するのはかなり難しい。合理的な考えを持たない大先生は,素人が何をいっているのだかとバカにして,結局自分の思う検査にしてしまうからである。こちらは素人だから説明を求めているのに,素人なら玄人にしたがっていればいいと権威を押し通す医師というのは少なからずいて,もうどうしようもない (nlog(n): 意思疎通の難しさ,nlog(n): 患者から見た良い医師とは)。
注腸検査では,鮮明なエックス線画像を得る必要があるので,できるだけ大腸に食物が残っていない状態にしておく必要がある。そのため,前日からがっちりと食餌制限をすることになる。私の場合,検査食をアレルギー成分の関係でとらないことにしたので,自前で,朝おかゆ,昼おも湯,夕おも湯だった。重湯はおかゆの上澄みのことである。検査当日の朝食と昼食は抜きで,お腹が空っぽのまま検査を迎えた。前日には水を2リットル飲まなければならない。これはなかなかの苦行であるが,砂糖で味をつけるといくらかマシになる。
前日の晩には下剤を飲み,当日の午前中には下剤をお尻から入れる。この下剤というのは見事なまでによく効いて,昔話「三枚のお札」よろしく,常に「ぴーぴーのさかり」状態となる。寝ている間に知らずに出てしまうということはないが,夜中にもトイレに起きる必要があった。
注腸検査をする際は,前日と当日の2日連続で休暇がとれる日程にするのがよい。前日は,ほとんど食べられなくてフラフラなので,仕事にならないからである。
注腸検査では,お尻の穴に管を挿入して,バリウムと空気を流し込む。お腹が張って便意をもよおすが,我慢しなければならない。「はい,息を止めて,はい,楽にして」が交互に指示される。しかし,楽にするのは息だけで,肛門を楽にしてはいけないのである。胃がんの検査でバリウムを飲むときも,ツラいのは発泡剤で,ゲップをしてはいけないという点である (nlog(n): 人間ドックに行ってきた)。入口が逆でもこれは同じである。お尻の穴から空気を入れられて,もよおすが,オナラをしてはいけない。なかなかにツラい。しかも,硬い板の上を,ゴロンゴロンと転がれという指示まで出る。
硬い板の上を転がる点については,内視鏡検査も同じである。空気を入れるのも同じ。検査当日の大変さは注腸も内視鏡も同じである。違いは,前日の食餌コントロールである。この点では注腸検査の方が大変。
検査自体は15分程度である。着替えなどを含めて30分ですべて終了する。
それにしても,すごかったのは検査終了後のあの開放感。究極まで我慢して,それを一気に開放するという快感で,別の方面に目覚めそうになったことは内緒である。
私のように食物アレルギーがある場合,検査食が食べられないことがある。これは代用がきくので,それほど大きい問題ではない。私が経験した問題は,検査食をキャンセルしたところ,同時に下剤の処方もキャンセルされてしまったことである。普通は検査食と下剤はセットになっているので,一緒に処方されるようになっているのだが,キャンセルもまとめてやられてしまった。私はうっかり者なので,これに気がついたのは検査の前々日で,病院に問合せたところ,下剤を別途処方してくれた。しかし,再診料は取られるは,病院に行く時間も手間も交通費もかかるわで,ヒドいものだった。病院側のミスなのに,患者が負担するって,どうなの?
食物アレルギーがあって検査食を処方されない人は,下剤が処方されているかを確認することが大切ということである。
結局,エックス線の画像で診断してもらっても,便潜血の原因らしきものは見つからなかった。原因はおそらく,この画像以外のところにあるだろうということ。で,結局,原因は「痔」だったのかもということに。
注腸検査についてまとめておく。
もう注腸検査はやらないけどな!
Posted by n at 2013-12-11 22:21 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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