自作自演を公開しちゃう。第1弾は「のみなさい」。
かれこれ20年前の録音になる。4トラックのマルチトラックカセットレコーダ TEAC 244 を使った多重録音である。使用楽器は,エレキギター,バイオリン。ドラムはドラムマシンの打ち込み。
画家は自分の作品の横に立って説明することはない。映画監督も映画の見所を説明しない。お笑いでどこが面白いかを説明するのは林家三平くらいである。音楽家は自分の作品を説明しない。しかし,それはプロの話。プロでない私は,自分の曲の聴き所を説明してしまう。そういうのもあっていいではないか。
多重録音はマイク・オールドフィールドの影響を受け,2本のギターは第4期キングクリムゾンの影響を受けている。
当時,私は詞が書けなかった。どうしても書けないので,短い言葉をつぶやくことにした。それがこの「のみなさい」の歌詞である。
曲は前半と後半に真っ二つに分かれている。申し訳程度に歌が入っているのが前半部分。後半は9拍子と10拍子がずれていく構成になっている。この1拍ずつずれていくという手法は,キングクリムゾンがディシプリンの中で行っているものである(ディシプリン(紙ジャケット仕様): キング・クリムゾン: 音楽)。そのルーツはブライアン・イーノのアンビエントミュージックにさかのぼるが,それはまた別の話。さて,ディシプリンの方法は,同じフレーズをずらしていくために,不協和音が出てきてしまう。わざと不協和音になるようにしている訳だが,私はこの曲で不協和音にならないようにしたかった。そこで,拍はそのままでフレーズだけを変えるという方法をとった。
後半の聴きどころは,変拍子がずれてずれて戻っていくというもの意外に,もう1つある。ディシプリンでは,ギター2本が左右に分かれているが,この曲では左右にはしたくなかった。「中央」と「まわり」にしたかったのである。左右から同じ音が出れば「中央」になる。「まわり」は右よりでも左よりでもない。しかし「中央」でもない。そこで,同じフレーズを2回弾くことで「まわり」の実現をした。右チャンネルに1回録音した後,左チャンネルに同じフレーズをもう1度弾いて録音する。そして,右と左を同時に聴くと,1回目の録音と2回目の録音でコンマ何秒かのわずかなずれが発生するので「まわり」に聴こえるのである。機材を持っているなら,右のショートディレイを左に録音しても同様の効果が得られる。
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