トラックバックの送り手の様々な考え方を数値化し,解釈を与えることを試みる。
トラックバックを送られたので,喜んで見に行くとリンクがない。しかし,よく読むと何となく関連のある記事なので,そのトラックバックを削除するかどうかに悩むことがある。関連情報はまったくないが,リンクだけがある場合もある。これもトラックバックを削除するかどうか微妙。以前トラックバックの本質について考えた(nlog(n): トラックバックの衝撃)。トラックバックは,本来,リンクした記事に対して送るものである。しかし,実際はそうなっていない場合が多い。なぜこのようなことになるのだろうか? もちろん,それはトラックバックの送り手の考え方に違いがあるからである。
この記事では,トラックバックの送り手の考え方や,トラックバック後のサイトの関連性などを数値化し,意味づけを試みる。
トラックバックについては,考え方に4つの文化圏があるという説がある(トラックバックをめぐる4つの文化圏の文化衝突――「言及なしトラックバック」はなぜ問題になるのか [絵文録ことのは]2006/01/06)。次の4つであるという。
- 言及リンク文化圏
- ごあいさつ文化圏
- 関連仲間文化圏
- spam文化圏
なるほどである。しかし,私にとってこの分類は若干分かりにくい。「言及リンク」は「言及」と「リンク」の両方を含んでいるが,「言及」と「リンク」は別のものである。また,「言及」の中には一言で紹介するだけの場合もあるだろうし,引用までする場合もある。色々な場合があるので,よく分からなくなってしまうのだ。そこで,ここでは「リンクがあるかないか」と「関連情報があるかないか」だけの場合を考えることにする。次の4通りとなる。
この4つは,上の文化圏の分類に「ほぼ」対応する。ほぼブラジル。
まず,上にあげた4つの場合について客観的評価を与える。トラックバックの「送り手」「受け手」と,記事を読む「第三者」の3つに対し,リンクや関連情報があることでどれくらい嬉しいかを「嬉しさメータ」で表現する。嬉しさを数値で表現する。客観的評価といいながら,思い切り独断が入ってしまうが,その辺はご勘弁。
まずは,「リンクあり・関連情報あり」の場合を考える。トラックバック本来の姿である。送り手はしっかり記事を書いたので,トラックバックを送りたい。嬉しさ度「2」である。受け手は,自分の記事にリンクが張られて,関連情報も手に入るので嬉しさ度「2」。どちらかの記事を読んだ第三者は,リンクをたどれば情報が増えるので,嬉しさ度「2」。誰もが嬉しいということになる。
次は「リンクあり・関連情報なし」の場合。トラックバックの受け手は,リンクされたのは嬉しいが追加情報は得られないので,嬉しさは若干低くなって「1」。第三者はトラックバックをたどっても追加情報は得られないので,嬉しくなくて「-1」となる。たどり損だからである。
3つ目は「リンクなし・関連情報あり」の場合。受け手は,トラックバックがあったのでどんな発展があるのか気になってリンクをたどると,自分の記事へのリンクがどこにもないのでショック。嬉しさ度は「-1」。第三者は,関連情報が手に入るので嬉しい。しかし,トラックバック元からはトラックバック先へたどることができないので,得られる情報は半分になる。というわけで嬉しさ度「1」。
最後は「リンクなし・関連情報なし」の場合である。これは基本的に誰も嬉しくない。嬉しいのはトラックバックを送った人だけである。いわゆる「迷惑トラックバック」である。
トラックバックの送り手の考え方について取り上げる。ここでは,トラックバックを送る場合,「自分のことだけを考えているか」「送った先の管理者のことを考えているか」「一般の第三者のことを考えているか」の3点に注目する。「考慮している」ならば「1」とし,「考慮していない」なら「-1」とする。
ここでは無理矢理「平等型」「自己完結型
八方美人型」「対話重視型
一直線型」「自分本位型」の名前をつけた。この名前自体は重要ではない。ここで重要なのは,誰に対して配慮しているかである。いい名前が思いつかないのは語彙が少ないからである。
トラックバックの送り手の行動は,その人の価値観で決まり,「価値観は客観的評価と主観的評価の両方で構成される」と仮定する。つまり,
である。別の言い方をすれば,
客観的情報を,主観的に評価した結果が,自分の価値観になるということである。「主観フィルタに客観的情報を通す」と考えてもよい。客観的評価=嬉しさ度,主観的評価=考慮係数であるから,トラックバックの送り手は,
で価値を決めていると考えられる。上の計算式を使って,トラックバックの送り手の価値観を計算する。例えば,「リンクあり・関連情報なし」を「対話重視型
一直線型」の人はどのように評価するかは,
で計算され,得点は「4」になる。内積をとるわけである。これをまとめたのが次の表である。
記事情報 | 客観的評価 | トラックバック送り手の考え方 (主観的評価) | ||||||||
平等型 |
自己完結型
|
対話重視型
|
自分本位型 | |||||||
嬉しさ得点 | 考慮係数 | 得点 | 考慮係数 | 得点 | 考慮係数 | 得点 | 考慮係数 | 得点 | ||
リンクあり 関連情報あり |
送り手 | 2 | +1 | 6 | +1 | 2 | +1 | 2 | +1 | -2 |
受け手 | 2 | +1 | -1 | +1 | -1 | |||||
第三者 | 2 | +1 | +1 | -1 | -1 | |||||
リンクあり 関連情報なし |
送り手 | 2 | +1 | 2 | +1 | 2 | +1 | 4 | +1 | 2 |
受け手 | 1 | +1 | -1 | +1 | -1 | |||||
第三者 | -1 | +1 | +1 | -1 | -1 | |||||
リンクなし 関連情報あり |
送り手 | 2 | +1 | 2 | +1 | 4 | +1 | 2 | +1 | 2 |
受け手 | -1 | +1 | -1 | +1 | -1 | |||||
第三者 | 1 | +1 | +1 | -1 | -1 | |||||
リンクなし 関連情報なし |
送り手 | 2 | +1 | -2 | +1 | 2 | +1 | 2 | +1 | 6 |
受け手 | -2 | +1 | -1 | +1 | -1 | |||||
第三者 | -2 | +1 | +1 | -1 | -1 |
なんだかすごいな。
この表の見方は次の通り。例えば「平等型」の主観フィルタを持った人の得点を縦に見ていくと,一番高得点なのは「6点」で,その左を見ると「リンクあり・関連情報あり」になる。ということで,「平等型」の人は,リンクをして関連情報を書いた上でトラックバックすることに高い評価を与えるということが分かる。
逆に,横からも見ていくことができる。トラックバックをたどったら,「リンクがなくて,関連情報はあった」という場合は,「リンクなし・関連情報あり」を横に見ていくと,一番高い得点は「4」で,上を見ると記事を書いた人が「自己完結型
八方美人型」であることが分かる。「自己完結型
八方美人型」というのはしっくりこないな。もう少し何とかならんか。まあ型の表現はおいておいて,何にせよ「トラックバックの相手先への配慮はない」ということが分かる。
その他も同様である。リンクも関連情報もないのは,低い得点になっている。多くの人から嫌われるのもうなずける。もう少し工夫をすれば,もっと低い得点にできるかも知れないが,今回はこんなところで終わりだ。
この表には「トラックバックしない場合」は含まれていない。しかし,リンク先や第三者に配慮しているかを基準に考えれば説明ができそうである。
追記:
[絵文録ことのは] さんへのトラックバックは,「Ping 'http://kotonoha.main.jp/mt/mt-tb.cgi/1150' failed: HTTP error: 302 Found」で失敗してしまう。
2006年9月26日追記:
「八方美人型」を「自己完結型」に,「一直線型」を「対話重視型」に変更しました。まだしっくりこない感じもしますが。修正箇所は右上の History ボタンで見ることができます。[絵文録ことのは] さんへのトラックバックは反映されたようです。
Master Archive Index
Total Entry Count: 1957