今日から,外国人の入国審査で指紋採取と顔面写真の撮影されることになった。私はこの制度に疑問を感じる。
16歳以上の外国人を対象とする,入国審査で指紋採取と顔写真の撮影を義務付ける改正出入国管理・難民認定法が,今日2007年11月20日より施行された (入国管理局)。これに対し,外国人からは反発の声があがっている。
「新たな外国人差別」 指紋採取に在住者反発 '07/11/18
「新たな差別だ」―。外国人に指紋と顔写真の提供を義務付ける入国審査制度が二十日から始まるのを前に、日本在住の外国人から反発の声が上がっている。
指紋押捺に関しては,以前も行われていたが2000年に撤廃されていた。これは早すぎる復活である。
1980年の「たった一人の反乱」にはじまる在日コリアン、在日中国人ら在日外国人1万人余による「指紋押捺拒否・留保」の闘いにより、2000年4月1 日に外国人登録法に基づく指紋制度は全廃されました。それから6年が経過して、再び外国人指紋制度の導入をもくろむ入管法改定案が国会に上程・審議されています。
私は外国人ではないが,指紋採取には疑問を感じる。というより,やってはいけないと思う。
人権侵害であるというのは,自分が外国に行ったときのことを想像してみると分かりやすい。自分は仕事や観光の目的で行っているのに,入国審査では「あなたは犯罪を犯すかも知れないので指紋と顔面写真をもらいます」と言われるのだ。単に外国人だからというだけで,犯罪の可能性がある人物だとするのは,人の尊厳を傷つけているということになる。
これは差別でもある。2通りの意味で差別である。第1には,指紋を採るのは外国人だけで,日本人からは採らないからである。第2には,外国人全員から採らないからである。外国人であっても,一部の例外を設けているのだ (新しい入国審査手続(個人識別情報の提供義務化)の概要について [PDF])。
2 対象者
下記の免除者を除き,日本に入国する外国人のほぼ全てが対象となります。
(1)特別永住者
(2)16歳未満の者
(3)「外交」又は「公用」の在留資格に該当する活動を行おうとする者
(4)国の行政機関の長が招へいする者
(5)(3)又は(4)に準ずる者として法務省令で定める者
外交や公用の場合を例外としているのは,その場合は人権を尊重しているからだろう。ではその他の人たちの人権はどうなのか。単なる観光者なのに,テロリストかも知れないと見られてしまうのだ。外交や公用であっても,もしかすると危険人物かも知れないではないか。友人の友人がアルカイダな法相だっているわけだし (asahi.com:「友人の友人はアルカイダ」 鳩山法相、外国人記者らに - 政治)。テレフォンショッキングなら,最短で2日後にテロリストが出てきてしまう。それでもいいのか。法相はこの入国審査システムの視察を行ったそうだ (BizPlus: 知財・総務:入国審査で指紋チェック、20日開始・法相が視察)。
「犯罪の危険性がある」というのであれば,日本人でも同様なわけだから,国民全員から指紋を採ることを仮定して議論すべきである。そうすれば,このシステムが本当に必要なのか,犯罪防止というのは口実なだけで別の目的があるのではないか,などを含めた深い議論ができるだろう。人ごとだと,どうしても議論が浅くなる。
指紋の情報流出があった場合を考えるととても怖い。自分の指紋が犯罪に使われる可能性があるからだ。自分の指紋が流出して誰か悪い人の手に渡ったとする。その人は,私の指紋から指紋付きの手袋を作ることができる。指紋付きの手袋で犯罪を犯せば,現場に残るのは私の指紋だけなのだ。現場に残された指紋は,私の身の潔白を保証するどころか,犯人であることを保証してしまうのだ。逮捕されたとしても,裁判をすれば勝てるかもしれない。しかし,それに必要な膨大な力と長い時間は,人生にとって何の得にもならない。もしもそういうことが,自分が行った外国で起きたらどうなるだろうか。文化も言語も違う外国で逮捕され,お前の指紋があったとして証拠をつきつけられる訳である。絶望するしかない。
施行日の今日,退去者はなかったようだ。
Posted by n at 2007-11-20 12:28 | Edit | Comments (0) | Trackback(1)来日外国人指紋採取:23空港5港でスタート 退去者ゼロ
16歳未満や特別永住者らを除く来日外国人から指紋・顔写真採取を義務付ける新しい入国審査制度が20日、全国の空港と海港で始まった。テロや不法入国防止が目的だが、外国人の人権制約に対し反発も予想される。入国時に一律に指紋を採取するのは04年に米国が導入して以来、世界で2番目となる。
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