Movable Type 10 周年だそうだ。最初に Movable Type を使ってみたときに「これだ! ずっと欲しかったのはこんなシステムだったんだよ!」と思ったのだった。
Movable Type が誕生から 10 周年を迎えたとのこと (Movable Type 10周年 | MovableType.jp)。
私が Movable Type を初めてインストールしたのは2003年1月だった。「これだ! ずっと欲しかったのはこんなシステムだったんだよ!」と思った。
私が興奮して,知り合いの日本に住んでいるアメリカ人に「Movable Type って知ってるか?」と聞いたら「知ってるよ。『活字』のことでしょ」と言われた。日本でムーバブルタイプと言えば MT のシステムのことだが,一般のアメリカ人にとっては "moable type" はグーテンベルク (ヨハネス・グーテンベルク - Wikipedia) の発明した活字のことなのである。
さて,Movable Type のシステムの話に戻る。それまでは,ウェブページと言えば HTML の手書きだった。1ページずつ書いていくうちに,少しずつ新しいタグを覚えたり,デザインを変えたくなったりした。しかし,そうすると,今まで書いたページを全部書きなおさなければならなくて,うんざりだった。
何とかならないのかと思っていたところに Movable Type が出てきた。順番が逆かも知れないが,スタイルシートというものを知ったのは Movable Type を使い始めてからだった。文書の構造 (HTML) とスタイル (CSS) を分けるという W3C の思想はすばらしかったが,Movable Type は更に上を行っていた。コンテンツとデザインを分離して,コンテンツは記事という形でデータベースに保存し,デザインをカスタマイズ可能なテンプレートという形で分離していたからだ。「これで長年悩まされてきたデザインの問題から開放される。デザインは後から何度でも変更できるから心配ない」これが最大の喜びだった。
トラックバックという考え方にも驚いた (nlog(n): トラックバックの衝撃)。それまでの,わざわざ相手のサイトに行って自分のサイトへのリンクをコメント内に書くという方法ではなく,自分のサイトにいながら相手サイトからのリンクを張るというのは新しかった。その機能は,自分の文脈のなかで相手の記事に言及し,ついでにバックリンクを張るという,あくまで自分の記事が主体だということが主張としてあるのだ。
スタイルシートは難しかった。3カラムがなかなか思うようにデザインできなくて,ああでもないこうでもないとやり直したのは何度か分からないくらいだ。Movable Type のデザインと言えばテンプレートタグではあるのだが,スタイルシートもきっちり分離されて設計されていたので,どうしてもスタイルシートと格闘しなくてはならなかったのだ。当時はブラウザ毎の表示が大きく違っていたので,Netscape でよくても Internet Explorer ではダメみたいなことがやたらと多く,バッドノウハウを蓄積するしかなかったという悪夢のような思い出がある。
Movable Type を使い始めて1年後,このサイトを公開した。自宅の ThinkPad に Linux をインストールし,ダイナミック DNS に登録して自宅外からアクセスできるようにした (nlog(n): ダイナミックDNSに登録)。これまでにサーバのハードウェアも何台か更新してきている。私にとって,Movable Type との付き合いは,自宅サーバとの歩みでもある。
このサイトは MT 2.661 で構築されている。コミュニティが一番盛り上がっていたころのバージョンである。最新版は MT 5.1 ということで,さてどうしようかと思っても仕方がないくらい隔世の感がある。「そんな昔のバージョンの Movable Type がどこにあるんだよ!」と言われそうだし,自分でも思ってみたので調べてみると,何と本家で全部公開されていた (Index of /downloads/archives)。「これだよ! このオープン感だよ!」。Movable Type は昔はこういうとてもオープンな感じがしていたものだった。「WordPress なんかの他のシステムに移行してもいいよ」とは直接は表現しないけれども,エクスポート機能を最初から用意しているとか,そのあたりも太っ腹でよかった。
MT のすべてのバージョンが公開されているのは嬉しいことだ。かつてのいい雰囲気が戻ってきて,コミュニティがさらに盛り上がってくることに期待したい。コミュニティと言えば MTQ | Movable Type 5 ユーザーコミュニティ で,ここに行けばたいていの問題は解決するが,1箇所に集中することで,逆に盛り上がっている感が広まっていかないところが難しいところである。
Posted by n at 2011-10-08 23:53 | Edit | Comments (0) | Trackback(1)
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