花が美しいのは,もしかすると植物の生存戦略のひとつかも知れないと思ったりする今日このごろ。
今日はなぜか生物のことについて考える日 (nlog(n): 動物の脚の曲がり方に疑問を感じたことがあるか)。
今回は植物について考える。植物のことは,考えれば考えるほど分からなくなってくる。目も鼻も耳もない植物がどうして動物のことを知っているのか。
植物について,最初に驚いたのは果実のことである。ニワトリの卵は,黄身の一部に小さな胚があって,黄身は胚が成長するための栄養として使われる。リンゴの実も,構造としては卵と似ているので果肉が種の栄養となるのだと思っていた。種が果肉の中心部分にあるのは,果肉を合理的に養分として使えるし,果肉が動物に食べられたとしても種だけは守られるからである。疑問としては,どうして動物に対して美味しくしてしまうのだろうか,ということだった。ところが実際は,果実は種の養分ではなく,動物に食べてもらうためだというのである。これには驚いた。果実を動物に食べさせたときに,種も丸呑みさせて,動物がどこかに移動してウンコをしたときにそこから芽を出そうというのである。植物は動けないが,動物を使えば移動することができて,しかも生息範囲を広げることもできるというわけである。
小学校高学年では,風媒花や虫媒花について習う。花に蜂が来るというのはあまりにも見慣れている光景であるので,疑問を持たなかったが,よく考えてみれば植物が虫のことを知っているということである。植物が花粉の運び屋として動物を選び始めたのは三畳紀であるとのことだ (受粉 - Wikipedia)。三畳紀 は,白亜紀,ジュラ紀の次の時代で,八代亜紀以前である (!?)。
植物はなぜか動物や昆虫のことを知っている。食虫植物はもちろん,虫媒花であっても寄ってきて欲しい虫を選んでいるのである (NEC presents THE FLINTSTONE (bayfm 78.0MHz) :実は、植物って戦略家なんです!(ゲスト:農学博士・稲垣栄洋さん))。
もっと驚くのは,虫の形と好みを知っている植物もあるということだ。ハンマーオーキッドという蘭の一種は,ハナバチのメスと同じ形と匂いと触感を持っていて,ハナバチのオスを騙して交尾行動をさせ,その瞬間に受粉するのである (麗しき蘭にまつわる下世話なお話 - むしブロ)。ハナバチのオスは金ヅチのように「コーンコーンコーン釘を刺す〜」ような動きをすることから,「ハンマー」の名前がついている。さて,ハンマーオーキッドはどのようにしてハナバチのことを知ったのだろうか。植物には目も鼻も触覚もない。唖で聾で盲のピンボールの魔術師と同じである。魔術師には脳がついているが,植物には脳もない。昆虫との唯一の接点は受粉の瞬間である。ハナバチのオスは,だまされて交尾行動をするときに精液を放出するというから,その精液だけがオーキッドにとっての手がかりである。ということは,精液の遺伝子から虫の姿形が分かるような仕組みをオーキッドが持っているということになってしまう。最初の接触はどうだったのかという疑問もあるが,そこまで考えなくても,十分に恐ろしい話なのである。リンゴであれば,種が動物の体内を通るときに接触がある。
ここで身近な花に目を移すと,人間はどういうわけか花を美しいと思うようになっている。人間も植物も生物という点では同じなので,生物同士で何かしら共感するところがあるからという考え方もできる。しかし,もともと,花は昆虫に対して魅力的な色や形になっていて,それはもちろん受粉のためである。では,無駄なく虫を惹きつける機能が美しさとして映るのだろうか。それだけとは思えない。実は人間も視野に入れているのではなかろうかと,そう思うのである。ダンゴムシは,特に悪いことをしていないのに,人間が不快だというだけで嫌われ排除される (害虫 - Wikipedia)。植物の花は,人間に「快」の感覚をもたらし,好んで育てられることで,生息範囲を広げているのではないかと思うのだ。
人間は植物に精液をかけることはないが,育てるときに接触はする。そこから何らかの遺伝子情報を取得しているのかも知れない。あ〜怖い。
Posted by n at 2013-10-03 22:53 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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