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Photo 充実した日々を過ごした「子どものその」卒園

娘が子どものそのを卒園した。すばらしい幼稚園だった。

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「子どものその」は埼玉県ふじみ野市にある保育施設である (子どものそのグループ)。子どものそのでは,幼稚園の「子どものその保育生活協同組合」,保育園の「子どものその保育園」,2歳児までの保育園の「子どものそのBaby」を運営している。

一番歴史が古いのは1963年から続く「子どものその保育生活協同組合」であるが,無認可の幼稚園であるため,市の広報を通じて紹介されることはなく,あまり知られていない。しかし,その割には,入園を希望する子どもの数は常に定員以上で,いつもキャンセル待ちの状態になっている。要するに「知る人ぞ知る」幼稚園なのである。市外から通ってくる子どももいる。以下は,この「子どものその保育生協」の話である。

子どものその
子どものその


我が家の長女と次女はどちらも子どものそのにお世話になった。子どもの目をみていると,濃厚な充実した日々が過ごせたに違いないと思う。すばらしい幼稚園だった。

子どものそのを知ったのは偶然のことで,親である私が首を痛めて病院に通っていると (nlog(n): 頚椎ヘルニアその後),すぐそばで元気のよい子どもの声がした。気になって声のする方に行ってみると,そこは幼稚園で,園庭には丸太で作ったアスレチックがあり,子どもたちは裸足のまま走り回っていて,しかも泥だらけ。そして保育士たちも泥だらけだった。女の先生なのにどうするんだよ〜と心配になるくらい泥だらけだったのである。それが子どものそのとの衝撃的な最初の出会いだった。ここでドン引きするか興味を持つか,それがひとつの分かれ道になるだろう。

説明会に出てみると,自然の中でのびのびと育てる方針とのこと。土手や田んぼのあぜ道を散歩して虫やカエルを捕まえたり,ベーゴマやけん玉,あやとりや指編みなどの伝統的な遊びで手指の感覚を養うとのことで,とても共感した。読み書きなどを強制的に教えることはしないという点もいい。私は,勉強などは小学校に入ってから始めても遅くはないと思っていて,それよりも,虫やカエルを怖がらないとか,土いじりを楽しめるようになることの方が,もっとずっと大切だと思っているので,この幼稚園はぴったりだったのである。そして,運良く入園させることができた。

うんどうかい
うんどうかい


うんどうかい

子どものそのでは,年齢が同じ横のつながりだけでなく,縦のつながりも持たせるようになっている。年次としては,年少 (3歳児)→年中 (4歳児)→年長 (5歳児) と進んでいくが,それぞれの年次に役割を持たせている。基本的には年下の組に絵や作ったものをプレゼントするし,踊りを見せたりするので,年下の組からは,「さすが大きい組さん」と尊敬される。中でも一番大きく違うのは年長の役割で,例えば節分では,鬼になって小さい組の子どもたちを脅かしに行ったりするのだ。子どもたちは,1年前に思い切り泣かされたことを思い出しながら,今度は自分たちが鬼のお面を作って,「こんどおまえたちのところへいくぞ」と予告状を出し,怖がらせに行くのである。子どもに話を聞いてみると,「泣けばその子の鬼が逃げていくから」だそうで,いたずらに怖がらせに行くのではないと思っていることに感心した。

担任の保育士は,どの先生も熱心だった。泥だらけになって子どもたちと関わりながら,親との連絡もよくとってくれていた。週に2回ほど,クラスだよりを発行してくれ,子どもたちが何に取り組んでいるのかや,子どもたちの声を載せてくれていた。その他に子ども一人ひとりの連絡帳にもきちんと対応してくれていた。

子どものそのが愛されていることは,卒園生からも分かる。園児の親が卒園生ということもあるのだ。つまり,親子2代で子どものそのというケースである。しかも,それが珍しくない。親としては,よかった経験は自分の子どもにもさせたいと思うのは自然なことであり,昔から園の空気や環境が変わっていないという証拠でもある。

子どものその保育生活協同組合は,その「生協」という名前からも分かる通り,親の共同出資で成り立っている。そのため,お金の使い方については,親たちが承認する形をとっており,透明である。無認可の幼稚園であるため,市の補助が受けられず,保育料は安くはない。しかし,会計が透明であることで安心感がある。

親たちは,出資をするだけではなく,様々な形で子どものそのに協力してきている。入園前から気になっていた丸太のアスレチックは,園児のお父さんの手作りとのこと。丈夫で,動く部分には手を挟まないように,怪我をしないような配慮が行き届いた設計になっていた。子どものそのの年中行事には,お祭りなどの親の協力する企画も多く,それなりに大変である。その他にも,絵本の読み聞かせをする会は毎月あるし,人形劇をするお母さん方も準備が大変。しかし,その大変さも,子どもたちの喜ぶ顔を見れば吹き飛んでしまうのである。

子どものそのを立ち上げた能登真作氏は,現在は園長を退き理事長となっているが,その熱意には驚かされる。園の運営を行いながら,子どもたちとの触れ合いにも手を抜いていないからである。例えば,年長組では1月から2月にかけて,能登のおじさんと園児たちが手紙のやりとりをするという企画がある。子どもが書く手紙一通一通に対して能登のおじさんは返事をくれるのだ。うちの子どもは10通以上の手紙を送ったので,その返事も同じ数だけ届いた。今年の年長の園児は60名程度だったので,500通は書いていることになる。園児全員の顔と名前を覚えているのであろうことも驚きである。数年前に建て替えで一部の園舎が取り壊しになる際に,数百人の卒園生が集まったとき,その卒園生の名前を全員言うことができたというのだ。能登氏は切り絵作家でもある。

子どものそのは,認可幼稚園となることを長年の目標としてきた。今も幼稚園は無認可のままだが,新設の保育園は認可された。現在,子どものそのは,幼稚園と保育園の両方の機能を持つ認定こども園に向けて歩みを進めている。子どものそのを選んだお母さんたちの声は なぜ「その」を選んだか : 子どものその保育生活協同組合 で読むことができる。

Posted by n at 2014-03-31 20:42 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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