R-SIM の役割を勝手に解説してみる。R-SIM というのは,MVNO の SIM と重ねて iPhone のスロットに差し込むブツのことである。
R-SIM7+ が au iPhone 5 で動作するようになったので (nlog(n): au iPhone 5 で R-SIM7+ が動作するようになっていた),その役割について考えてみることにした。R-SIM のマニュアルは提供されていないので,動作から想像しているだけなので間違っている可能性もある。だが,以下のように考えるとモヤモヤがすっきりする。
まず,SIM ロックのスマートフォンの動作からおさらいしておく。私の所有しているスマホは,キャリアが au の iPhone 5 で,SIM ロックされている。SIM ロックされていると,そのキャリアが発行する SIM でしか通信ができない。docomo や SoftBank,あるいは MVNO など,他社の SIM では通信できないようになっている (SIMロック - Wikipedia)。特定の SIM でしか動作しないように鍵がかかっているので「SIM ロック」と呼ばれる。
R-SIM の目的は,特定のキャリアに SIM ロックされているスマートフォンに,他社の SIM をセットして使えるようにすることである。この目的を実現するには,通常はスマートフォン本体の改造が必要になるのだが,R-SIM は,本体の改造はせず,他社の SIM と R-SIM を重ねてひとつの SIM として挿入することでその機能を実現している。
もともと1枚の SIM しか入らないスロットに,異物を混入して無理やりねじ込むのだからかなり強引な方法である。抜き差しを繰り返すとガバガバになったりしないのだろうかと心配したが,R-SIM は薄く作ってあり,また本体側にはある程度の余裕も持たせてあることが分かった。
インターネットで検索すると,多くのサイトでは「R-SIM を使って SIM フリー化する」という表現が使われている。本家でも「Unlock SIM」つまり「SIM ロック解除」と表現されているから (R-SIM7 Unlock Sim for iPhone4S and iPhone5),単にこれにしたがったまでだろう。確かに,他にどんな「分かりやすい売り文句」があるのかと聞かれれば,ないような気もする。この「SIM フリー化」という表現は,R-SIM の機能からすると若干違うような気もするが,あながち間違いとも言えない。つまり,スマートフォンと R-SIM をひとつのまとまりだと見ると,そのスマートフォンには MVNO の SIM をセットして通信ができる。したがって,そのスマートフォンが「SIM フリー」であるように見えるからである。
R-SIM の本来の仕組みは,MVNO の SIM をキャリアの SIM に見せかけることである。スマートフォンからすれば,R-SIM と MVNO SIM を重ねたものは,キャリアの SIM に見えるのである。キャリアのスマートフォンにキャリアの SIM が入るのであるから,スマートフォンには改造は不要ということになる。
R-SIM は SIM に重ねるという,ハードウェア的なアプローチをとるが,これだけではどのキャリアのスマートフォンに挿入しているのかが分からない。そこで,ソフトウェア的な設定が必要になるのである。「Select Carrier」で「JP AU」というスマートフォン本体のキャリアを指定するのはこのためである。
R-SIM は挿入された SIM をキャリアの SIM に見せかけるための仕組みである。「SIM フリー化」や「SIM ロック解除」も見方によっては間違いではない。
2015年6月12日追記:
「圏外病」について書きました (nlog(n): R-SIM7+ で SIM が「圏外病」に)。
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