今日はクリスマスイブ。クリスマス当日より、なぜか前夜祭が盛り上がる。それよりもこの時期に一番気になるのは「X'mas」と書かれた看板である。「Xmas」ではないのか?
クリスマスは「Christmas」であって、基本的には省略して書くものではない。しかし、どうしても省略したい場合は「Xmas」になるだろう。「Christmas」→「Christ + mas」→「X + mas」→「Xmas」だからである。「mas」は「祭」を意味する。
アポストロフィ (apostrophe) 「'」は、「John's」などの所有格を作るときと、省略を表わす場合に用いられる。省略で身近なところでは、「it's」や「'04」がある。「it's」は「it is」の省略形である(it has のこともある)。「it is」→「it 's」→「it's」となっている。「is」の「i」が省略され、しかも前の「it」と連結されているのである。「'04」は「2004」のうち、最初の2ケタ「20」が「'」に置き換えられたものである。「`04」という、バッククォーテーションが使われているのをたまに見かけるが、間違い。バッククォーテーションマークに省略の意味はない。
さて、振り返ってクリスマスを見てみると、「X + mas」に省略されている部分はないので「Xmas」となる。もっとも、「Christ」を「X」に読み替える部分でかなり失礼なことをしているので、できればこの表記はやめた方がいい。よく知らない宗教に対して、それもそのご本尊というべきキリストに対して「省略」を使うのは、土足バリバリである。
アポストロフィの省略の意味が最も強く出ている例に「Rock 'n' Roll」がある。ロックンロール。「Rock and Roll」の「and」が省略されて「'n'」になっているのだ。そういう訳で「'n'」の両側にはスペースが残っているのである。「Rock'n Roll」では意味が分からないので注意。もし、「Rock'n Roll」という英語表記を訳すことになったら、日本語も崩して「ロケンロー」とした方がいいだろう。
日本人の多くは記号に無頓着である。もともと句読点くらいしか記号はないし、中学校の英語の授業でも教えてくれないので仕方ないことではある(日本語の横書きの句読点を「、」「,」「。」「.」のどれにするかも、本当は考えた方がよい)。中学校ではほとんど使われない「筆記体」を習った覚えがあるくらいだ(私は、筆記体を使っている英語圏の人に出会ったことがない。全員がブロック体を使っている)。横文字圏には沢山の記号があり、その全てに意味がある。そして厳密な使い分けが行われているのである。宗教だけではなく、知らない文化圏の言葉を使う場合は注意が必要である。「知らないからテキトーに使っちゃえ」は許されない場合が多い。
省略を表わす記号としては、アポストロフィの他に「...」がある。これも私たち日本人はテキトーに、いくつも点々を打って「点点点点点点点点」としてしまうのだが、点の数は3つが正解である。洋書を読んでみれば、全ての点は3つになっていることが分かる。数学の本なら沢山出てくる。(x1, ..., xn) の間の点は必ず3つである。数学の場合は「and so on」と読むように大学時代に教えられた。「and」「so」「on」がそれぞれ1つの「.」になって、合計で3つの点「...」になっていると覚えればよい。日本語の一般の印刷物の場合は、「…」だとバランスが悪いことから「……」(6点)が用いられることも多い。
2004年12月25日追記:
最近は誤記というのが多少認知されたのか、「X'mas」と「Xmas」が半々くらいになってきているのは喜ばしいことである。ひでゆきの小ネタ部屋・ココログ別館: NOVAのクリスマスCM、表記を変更 によれば、NOVA の CM は去年と今年で表記が違うのだそうだ。Christmas - Wikipedia, the free encyclopedia (または 日本語版)には、「Christ」を「X」で表わすのはギリシャ表記の頭文字に由来するとある (Χριστός [Christos])。実体参照で書けば、Χριστός になる。あくまで「キリスト→X」であり,「十字架→Cross→X」ではないとされる(Xmas - Wikipedia)。
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