どこのスキー場でも,コース外を滑走する人が多く,問題になっているようだ。そんな中,八海山のコース外滑走の案内は核心を突いており,感動を覚えた。
コース外を滑走するスキーヤーやボーダーは,スキー場の悩みのタネである。コース外滑走はスノーボードが登場してから格段に多くなったように思う。スキー場はロープ等でコースを明確に示しているのに,そのロープを乗り越えてコース外を滑ってしまう。スキーヤーにとって,誰にも荒らされていない場所を滑るのは気持ちがいいものである。自分のシュプールだけが残るので後味も最高。しかし,問題は事故の起きた時である。スキー場が「コース外」として設定しているのは,危ないからである。実に単純な理由だ。そんなことはスキーヤーやボーダーには分かりきっていることでもある。しかし,コース外は,スキー場のパトロールにとっては助けにくい場所でもあるのだ。
ほとんど全てのスキー場で,このコース外滑走の問題が起きている。よく見る注意書きは,「コース外滑走の事故については責任が持てません」のような,責任回避的な言い回しである。そんな中,先日のスキーで見つけた八海山スキー場の注意書きは秀逸だった。
誰が考えたのか知らないが,これは実に説得力に満ちている表現である。
ご案内
当スキー場ではコース外滑走は禁止です。
コース外は救助活動の範囲ではありません。
コース外より救助を要請した場合有料となります。
八海山スキー場
コース図が明示されており,その下にこの説明がある。スルドい。ただ事実を淡々と書いてあるだけなのに,何だろう,この説得力は。いや,事実が書いてあるだけだからこそ,この説得力が生まれているのかも知れない。スキー場が自分のサービスの範囲を明確にしていて,そのサービスの範囲外のことについて明言しているだけなのだ。誰が見ても「そりゃそうだ」と納得できる。単に責任を回避している訳ではない。「スキー場のコースという十分なサービスを提供している」というような,自信さえ感じさせる。注意書きとはこうあるべきである。素晴らしい。注意書きを読んで心を動かされるとは思わなかった…。
「コース外滑走をしてもよい」とは書いてない。あくまで禁止である。しかし,どうしてもコース外を滑りたい人は,その後のことを頭に入れておかなければならない。「コース外より救助を要請した場合は有料」だと。「コース外で雪にはまったら自力でどうぞ」とは書いてないが,極端な場合,次のような会話が想像できる(あくまで想像である)。
スキーヤー: 「コース外の林の中で動けなくなっている人を見つけました。」
パトロール: 「それは事故かもしれませんね(立ち上がりながら)。ところで,その人は助けを求めていましたか?」
スキーヤー: 「いいえ。こちらの呼びかけには応えていましたが,助けは求めていませんでした。」
パトロール: 「(椅子に戻りながら) そうですか。」
スキーヤー: 「助けに行かないんですか?」
パトロール: 「要請があればすぐにでも。」
スキーやボードは,コース内でも十分にスリリングであり楽しめるものである。それよりもスリルを求めるのであれば,スキー場に行ってはいけない。スキー場でも何でもない「普通の山」に行くべきなのだ。
Posted by n at 2005-02-28 00:06 | Edit | Comments (2) | Trackback(1)
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はじめまして(いや、しょっちゅう拝見はしてましたが、たぶんコメントは初めてです)。
いや、笑わせていただきました。でも、いいことですよ。
僕は一度だけカナダのウィスラーにスキーに行ったことがあるのですが、ここのこの手の注意書きは、細かくは覚えていませんが、
Posted by: Shin at March 01, 2005 02:42「コース外に行って死んでも知らないよ」
みたいな、もっと強烈なものでした。海外のタバコのストレートな警告と同じ感じと思ってもらえれば。
そんなことを思い出しました。
海外でスキーとはうらやましい。カナダではストレートな表現なんですね。日本も見習うべきだと思います。単に「どういうことが起きるか」を説明すればいいだけなので,難しくないはずです。やり過ぎると,いたずらに恐怖心をあおるだけになってしまうので,それも考え物ですが。
Posted by: n at March 05, 2005 02:30