当サイトはリンクフリーではありません。リンクして頂いた場合でもご連絡は不要です。
この表現は矛盾していない。「リンクフリー」という言葉がどういうわけか蔓延してしまったので変に思えるだけである。最近は「トラックバックフリー」というのも出てきてしまい,イヤ〜ンな感じが急増中。
「リンクフリー」という言葉は,「このホームページにリンクを張るのに許可は要りません」という意味で使われている。しかし,これは日本国内だけで通用する話。英語圏で link-free というと「リンクのない」という意味になってしまう。「デューティーフリーショップ(duty free shop)」は,好きなだけ関税をかける悪徳な店ではないし,「バリアフリー(barrier free)」の住宅は,「家の中に勝手に柵を作っていいです」という無法地帯を宣言している訳ではない。
日本に個人のホームページが出来始めた最初の頃,相手のホームページへリンクする場合にはその相手の許可を貰うのが礼儀とされていた。「勝手にリンクしちゃダメ」などというサイトもあったりした。最近はブログ文化が浸透してきたこともあり,「リンクには許可不要」が当たり前になりつつあるが,それでもまだ「許可を取るのが仁義」の名残は多くある。心情的にはよく分かる。
コンピュータの世界で「フリー」という言葉が一般的になったのは「フリーソフト」からだろう。ヒッピー的な持ち味の概念である。あっけらかんとしているが,思想はちゃんとある。日本にはなかった文化である。フリーソフトは,誰でも自由に使ってよい「自由な」ソフトウェアである。使用にあたって,作者に許可をとる必要はない。
「ホームページへのリンクの許可が不要」と「ソフトウェアの使用の許可が不要」という連想から,「リンクフリー」という言葉が生まれたのだと推測できる。日本人にすれば,ごく自然な発想である。しかし,問題は使い方を間違ってしまったことである。「リンクの許可不要」と言いたいのであれば,"Feel free to link this site" などの表現になる(リンクに許可は不要です - 情報教育Wiki)。「ニッポン人の使うエイゴの意味 Glossary of Japanese Eng"r"ish」には link-free の他にも沢山の例が挙げられていて,読むと涙がちょちょ切れる。
もしかすると "Please link freely" → "Link freely" →「リンクフリーリー」→「リンクフリー」になったのかも知れない。「ly」などの語尾を省略することは,日本語ではよくあることだからである。「ビューティフリー」は「ビューティー」に略してしまうし,「シックスス・センス」は「シックス・センス」に略してしまう。
ともあれ,「リンクフリー」はビミョーな表現なので,できれば使わない方がよい。「リンクはご自由にどうぞ」でいいではないか。ええじゃないか,ええじゃないか(水曜どうでしょうのミスターより)。よいではないか,よいではないか(時代劇の悪代官より)。「リンクフリー」は,無理やり訳すなら「リンクがない」になり,「リンクするな」という意味でもないし,「リンクしません」という意味でもない。意味がよく分からない。その辺りがビミョーなのだ。
「トラックバックフリー」も広がってしまわないといいんだけど…。
蛇足:
ウェブサイトを「ホームページ」と表現すること自体がおかしいのでは? とか「ページ」というのがそもそも変なのでは? という細か〜い議論もあったりするが,ここでは目を思い切りつぶるのが吉である。ちなみに私は「ホームページ」より「ウェブサイト」と言う方が好き。
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