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misc 「いただきます」は誰に?

子どもの頃,「いただきます」は作ってくれた人に向かって言うものだと親に教えられた。半分は正しいが,半分は間違っている。

■ ■ ■

食事のとき,食べる前に「いただきます」と言う。誰かがいれば,「はいどうぞ」とか「召し上がれ」と合いの手を入れてくれる。私が子どもの頃,それは母親の役目だった。そして「いただきます」は料理を作ってくれた人に向かって言うものだと教えられた。

しかし,それは半分くらい正しくない。

人間は他の生き物の死によって支えられている。食卓に上るのは,動物や魚の肉や植物である。そして,人は新鮮なものを美味しく感じるようにできている。「新鮮」というと聞こえがいいが,「死んでから時間が経っていない」ことを意味している。「死にたてのぴちぴち」は美味しいのだ。あるいは「死んでから直ぐに加工」したもの,干物や燻製,も美味しい。

とさつの写真(ショッキング注意) には,豚,牛,鶏などの屠殺の映像が紹介されている(タグ付け caramel*vanilla さん)。

子どもはこの映像を見るべきではない。食べられなくなってしまう危険があるからである。ただし,成人してからは,もし美味しいお肉を食べたいと思うのであれば,いつかは知らなければならないと思う。「いつか」というのも問題である。私には,幼い頃に鶏をつぶす現場を見てしまったために鶏肉が食べられなくなってしまったという友人がいる。子どもの時に知るべきではない。知るべき年齢というものはあるのだ。また,屠殺の映像は,興味本位で見るべきではない。その現場は見なくてもいい。そのような事実があることが分かればいいのだ。

人として生まれた以上,他の生き物を食べなければ生きていけないのは仕方のないことである。生き物を殺さなければ生きていけないのだ。それだからといって,ベジタリアンになればいいのかと言えば,そうは思わない。肉食でもいいのである。ありがとうという気持ちがあればいいのだ。

私は趣味で魚釣りをする。魚が好き。そして,魚を食べるときは丁寧に,できるだけ身を残さずに食べる。釣り仲間に聞いてみると,皆そろって残さず食べるという。不思議なもので,魚を愛すると,それを美味しく食べようという気持ちが湧いてくるようだ。魚も自然と捌ける{さばける}ようになる。

「いただきます」という感謝の言葉は,目の前の食材に対して言うものである。自分の生が,多くの動物の犠牲の上に成り立っていることを考えれば自然と感謝の気持ちになる。食事のときに礼儀正しくするのも理由は同じである。行儀よく食べなければ,牛や豚にとって失礼というものである。もちろん,料理を作る人にも感謝しなければならない。その人がいなければ食材が美味しく食べられないからである。

「いただきます」の半分は料理を作ってくれた人に,半分は食材そのものに言うべきなのだ。

2010年11月13日追記: (5年後の今日)
ご飯粒について書きました (nlog(n): ご飯粒を最後のひと粒まで食べる理由)。

2011年11月13日追記: (6年後の今日)
もっと簡単な理由がありました (nlog(n): ご飯粒を最後のひと粒まで食べるごく単純な理由)。

Posted by n at 2005-11-13 01:45 | Edit | Comments (5) | Trackback(1)
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命をいただきます
nlog(n)さんの”いただきますは誰に”にトラックバックさせていただきました。 僕も母に子供の頃から食べ物を決して残してはならないと教育され、もし残そう物ならば、飢餓の話や、食べ物が食卓に来るまでの話など、延々と聞かされたのを覚えています。 小学生の頃、町... Trackbacked from: 平和な日々を・・・。 at November 14, 2005 09:28
Comments

正直言いますとBMしたのは興味半分です。

>「いただきます」の半分は料理を作ってくれた人に,半分は食材そのものに言うべきなのだ。

初めて当たり前のことに気づかされた気がします。
「いただきます」も「ごちそうさま」も100%作り手にだけ向けたものでした。
感謝の気持ちがこもっていたと言いがたい場合も多々ありました。
なんだかお恥ずかしい限りです…

Posted by: lomo at November 14, 2005 00:49

すっごい、目からうろこ。
明日からは子供達に、そういって教えよう。
彼女達は一応カトリック系の幼稚園に行っているので、神様に感謝して食べなさい、と教わってきているのですが、『それは違う!』と常々思っていたのです。

>行儀よく食べなければ,牛や豚にとって失礼というものである。
そうなんだ、食べるために殺したんだから、きちんと感謝して残さず食べないといけないんだ。うんうん。

Posted by: KM at November 14, 2005 22:24

lomo さん
人の欲望には残酷な一面があるのですが,よく分かっていないことが多いですよね。そこに注目して,私たちに強烈に見せつけたのがグリーナウェイです。グリーナウェイについてはそのうち書きたいと思っています。

KM さん
KM さんは目にうろこが生えていたんですか。あら珍しい。(なんちてスマソ)
お子さんたちをあまり脅かさないで下さいね。食べられなくなってしまうのは困ります。
神様に感謝するというのも間違っていないと思います。

Posted by: n at November 15, 2005 01:11

どもです。
うろこが生えたKMです。(笑)

>神様に感謝するというのも間違っていないと思います。

あはは。確かにね。
でも、今の子供達って、キレイ事だけじゃなかなか納得してくれないのですよぉー。(うちの子だけ?)
画像は勿論見せませんでしたが、話をしたら納得して、嫌いなものも一生懸命残さず食べていました。

Posted by: KM at November 17, 2005 21:18

それはよかったです。納得して食べるということは,体だけでなく心の糧にもなっているということですね。(気取りすぎスマソ)

Posted by: n at November 19, 2005 01:11
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