厚生労働省は「アガリクス3製品を調査し,1製品に発がんを促進する作用が認められた」という発表を行った。これは,「アガリクスには発がん性がない」ということを証明したのではないのか。
本日 TBS「噂の東京マガジン」で,アガリクスに関する話題が放送された(TBS | 噂の東京マガジン「噂の現場」(2006年4月9日放送) - 風評被害!?日本最大級のアガリスク農場が大ピンチ)。厚生労働省の発表によって,アガリクスが売れなくなってしまったというのだ (放送終了後のバックナンバーを残してくれているのは嬉しいことだ)。
番組で取り上げていたのは,今年2006年2月13日付の厚生労働省の発表(厚生労働省:アガリクス(カワリハラタケ)を含む製品の安全性に関する食品安全委員会への食品健康影響評価の依頼について)のうちの,2番目の文書 厚生労働省:アガリクスを含む製品を摂取している方へ である。
私も読んでみて疑問を感じた。番組の論点とは違うことを感じたのでまとめておきたい。
アガリクスを含む3つの製品を調査し,このうちの1つに発がん促進作用が認められたというのだ。そこまでは問題がない。しかし,次の記述が問題である。「3 今回の試験結果は、ラットにおいて発がん促進作用が認められたというものであり、ヒトに対してただちにがんを引き起こすという結果ではありませんが、」と前置きした上で,次のような注意を促している。
(3) 上記2製品及びその他のアガリクスを含む製品については、発がん促進作用が確認されたわけではありませんが、関連する製品の摂取に当たってはご注意下さい。
厚生労働省:アガリクス(カワリハラタケ)を含む製品の安全性に関する食品安全委員会への食品健康影響評価の依頼について
「関連する製品の摂取に当たってはご注意下さい。」これは何を言っているのだろうか。次の3つが考えられる。
自分の身の安全をとるのであれば「摂取しない」を選択せざるを得ない。注意することで摂取の判断が簡単につくくらいなら,研究所や専門家はいらない。さらに,文書の最後で次のように念を押している。
本件について、いわゆる風評被害が生じることのないよう正確なご理解をよろしくお願いします。
しかし,このように書くのであれば,どうにでもとれる「ご注意下さい」という曖昧な表現はよくない。風評被害は曖昧な表現から生じるのだ。厚生労働省は言っていることとやっていることが違っている。「正確な理解」を求めるのであれば「正確な表現」をする必要があるのではないか。
さて,よく考えてみれば,そもそも「摂取に当たってはご注意ください」とするのは間違いであることに気がつく。なぜなら,アガリクスを含む3製品中,2製品は発がん性が認められなかったからである。図に描くと次のようになる。
「アガリクスを含む製品」とは,「アガリクス成分」と「その他の成分」で構成される。全ての製品はアガリクスを含んでいて,1つだけに発がん性が認められたというのであれば,「アガリクスには発がん性がない」と結論づけるのが自然ではないのか。つまり,「摂取に注意は必要ない」のである。
発がん性にはもう1つの可能性もあるので,まとめると次の2点になる。
アガリクス製品を製造する工程においてアガリクスが変質してしまい,それが発がん性を持ってしまったという可能性もあるだろう。しかし,いずれにしても「アガリクス摂取には注意」というのは間違っている。焦げた肉に発がん性があったとしても,肉そのものに発がん性があると言うのは間違っている。それと同じだ。さらに,検査をクリアした2製品「以外の関連する製品」も注意しろといっているのは大きな間違いである。根拠を示していないからである。根拠のない発表は「風評」のもとになる。国の発表は強い力を持つ。それこそ「注意して」発表してもらいたいものだ。
その後の2006年3月20日付にも発表があるが(厚生労働省:アガリクス(カワリハラタケ)を含む製品の安全性に関する試験結果について),厚生労働省の主張は変わっていない。
補足というより蛇足:
たまにアガリクスなのかアガリスクなのか分からなくなってしまう。正しくは「アガリクス」である。英語のつづりを想像すると,間違いにくい(Agaricus)。最後が「k」で終わるのは何となく変な感じがするでしょ? 名前を間違いやすいのは私だけではないようだ。噂の東京マガジンのタイトルも間違っている(「アガリスク農場」になっている)。
Master Archive Index
Total Entry Count: 1957