最近,「…が,」を逆接でなく使っている文を目にすることが多くなった。これがとても気になる。
「…ですが」に使われる接続助詞の「が」についてだが,逆接でない使われ方をよく目にするようになった。
助詞の「が」には,格助詞と接続助詞がある(助詞 - Wikipedia)。「私がそれを食べた」の「が」は格助詞。「私はそれを食べたが,やめておけばよかった。」や「私はそれを食べたが,あなたは食べなかった。」の「が」は接続助詞である。ここで取り上げたいのは接続助詞の「が」である。接続助詞の「が」は「だが,しかし」に置き換えても意味が通るように使うべきだ。ここで,逆接とは,前の文脈と相反する事柄として後の文脈を導く接続の仕方をいう(接続詞 - Wikipedia)。
まず,使い方が完全に間違っている例をあげる。H18年度ウェブアプリケーション開発者向けセキュリティ実装講座の開催について には次の文がある。
本講座は本年2月、4月に実施しましたが、好評でしたので、今回は、新たに脆弱性の深刻度評価を用いた届出情報の分析結果や、ウェブアプリケーションの発注者が考慮すべき点なども紹介します。
短くしてみると,より明確になる。「本講座は本年2月、4月に実施しましたが、好評でした。」これはよくない。「本講座は本年2月、4月に実施しましたが、好評ではありませんでした。」ならよい。内容の「本講座」としてはよくないかも知れないが。
次は微妙な例である。PHP x API + akky = ? [dh's memoranda] には次の表現がある。
ちなみに献本いただいたのは去年のことですが、内容もりだくさんで面白いので、なにかインスパイアされて作ってみようと思ってそのままになっていました。
これは途中までは間違っているように見えるが,最後まで読むと間違っていないことが分かる文である。つまり,
献本いただいたのは去年のことですが、内容もりだくさんで面白い
ここまで読んだ時点では,何が言いたいのか分からない。メチャクチャな文に見える。ところが,最後まで読むと問題ないことが分かる。
献本いただいたのは去年のことですが、(中略) そのままになっていました。
途中を省略してみると,出だしと結びが対応していることが分かる。この文が分かりにくいのは,(中略) の部分に別の句が挿入されているからなのである。このような構成の文をひらたさんは連発する。どうやら癖らしい。ブログの内容でないもので揚げ足をとっているようで申し訳ない。
さて,ブログで一番多い「が」の間違った使われ方は,この記事の最初の文のようなものである。
「…ですが」に使われる接続助詞の「が」についてだが,逆接でない使われ方をよく目にするようになった。
上の文で使っている「が」は,提示に用いられている。この使い方は書き言葉では禁止され,話し言葉では許容されている。ブログは,話し言葉と書き言葉の中間くらいなので,微妙な位置ではある。書いてあるものだが,話し言葉の延長で書かれることが多いからだ。しかし,やはり提示の「が」は気持ちが悪い。使わないように心がけたい。
Posted by n at 2007-01-15 01:02 | Edit | Comments (2) | Trackback(0)
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接続助詞の「が」ですが、私も多様しています。
広辞苑
・前後の句を接続し、共存的事実を示す。「・・・ところ」などの意。
→「きのうお訪ねしましたが、たいそうお元気でしたよ」
→「下京辺によい庭をもたれた御方のござるが、これに唯今宮城野の萩が盛りでござる。」
大辞林
二つの事柄を並べあげる場合、時間的前後・共存など、それらの時間的関係を表す。
「驚いて外に飛び出した―、何事もなかった」
「しばらく見ていた―、ふっといなくなった」
とのことで、
>「本講座は本年2月、4月に実施しましたが、好評でした。」
を
「本講座は本年2月、4月に実施しましたところ、好評でした。」
に置き換えても意味が通るように、前後の句の共存関係が成り立っていれば、使えると思います。
でも、「ですが」(指定の助動詞「だ」の丁寧な言い方「です」と、助詞「が」)ってのは下のように使うとなんだか違和感があります。
「本年2月、4月に実施しました本講座ですが、好評でした」
Posted by: nano at January 15, 2007 16:50「接続助詞の『が』ですが、私も多様しています。」
nano さま
情報ありがとうございました。そういえば辞書にあたるのを忘れていました。
http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/?search=%E3%81%8C&match=beginswith&itemid=03046500
大辞林 第二版 (三省堂)には次のように出ています。
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(1)前置き・補足的説明などを後に結びつける。
「次に予算の件です―、重要なので今日中に決めてください」「御存じのことと思います―、一応説明します」
(2)二つの事柄を並べあげる場合、時間的前後・共存など、それらの時間的関係を表す。
「驚いて外に飛び出した―、何事もなかった」「しばらく見ていた―、ふっといなくなった」
(3)対比的な関係にある二つの事柄を結びつけ、既定の逆接条件を表す。けれども。
「学校へ行った―、授業はなかった」「君の好意はうれしい―、今回は辞退する」
(4)どんな事柄でもかまわない、の意を表す。「…うが」「…まいが」の形をとる。
「どうなろう―知ったことではない」「行こう―行くまい―、君の勝手だ」
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私がよくないと思うのは (1) の用法です。便利なのでつい使ってしまいそうになりますが,使わない方がより論旨が明確になると思うのです。
Posted by: n at January 16, 2007 22:43