昨年大変な思いをした頚椎ヘルニアは,その後順調に回復した。経過についてまとめておく。
昨年の10月に突然首が回らなくなった (nlog(n): 首が回らなくなった)。調べてみると,頚椎{けいつい}ヘルニアであることが判明した (nlog(n): ギックリ首)。動けるようになるまで2か月,完治まで3か月かかった。現在は4か月目で問題はなし。痛み止めと湿布の助けを借りながら,「自然治癒」するのを待ったのだった。長かった。
心配をしてメールをくださった方々,ありがとうございました。同じような症状が出たという方もいらした。何かの参考になるかも知れないので,経過をまとめておくことにする。
首を回すと痛んだり,腕や肩甲骨が痛むのであれば,首が原因である可能性が高い。そのような症状が出た場合,自分で判断するのは危険である。専門の医師に診断してもらうことをお勧めする。
一般に,何らかの問題が発生した場合,解決のためには,知識と経験の2つの方向からのアプローチがある。自分が今まで経験してきたことであれば,その経験から解決法を見つけ出すことができるだろう。しかし,未経験の場合,自力解決は手遅れになるという高いリスクがある。他人の力に頼るべきである。
頼るべき他人とは,ここでは医者である。最初によく調べてもらうのがよい。MRI などの精密検査をやってくれる病院がよい。専門の科は「整形外科」になる。MRI などの検査結果は,状態を客観的に判断する材料となる。そのような病院には,専門性の高い医師がいるはずである。知識と経験の両方をバランスよく持っている。
鍼灸師やマッサージ師の多くは,知識よりも経験を多く使って問題に迫る。体のツボの場所等も,先人の経験の積み重ねの結果である。優秀な鍼灸師であれば,すぐに問題の核心に迫ることができる。しかし,経験が浅ければ見当違いのことをすることもある。間違った処置は,症状の悪化を招くことになる。個人技に頼る部分が多く,リスクが高い。
私は専門家ではない。相談されても答えられない。次のようなメールが来ることがあるが,困るのはこちらなので,すぐに返信している。
相談:「似たような症状で困っているのですが…。」
回答:「ここで相談していないで,すぐに医師に相談してください!」
まずは精密検査を受けることが大切である。自己判断は,精密検査の後でもできる。
症状が安定せず (安定した「痛み」が出ない),少し様子をみたいときは,「安静にしておくこと」が大切である。仰向けになっていれば,痛みは徐々にひいて,時間が経てば楽になるはずである。安静にしていても痛む場合は重症なので,夜中であっても,すぐに病院に行かなければならない。
むやみに動かしたり,整体に行ったりしてはいけない。私は,病院に行く前に整体に行ってしまい,症状が悪化した。
治療方法は,症状の重さによって異なる。
私の場合,痛みの出方や,MRI の結果を総合して,軽度であるとの診断であった。まずは安静にして様子を見る。痛みが長期に亘って (数か月単位) 出る場合は,注射や手術等の別の手段を考えていくとのことだった。
手術に関して医師に聞いてみたところ,「できればやらない方がよい」とのことだった。腰の椎間板ヘルニアで手術する人もいるが,同じ椎間板の問題であっても,腰と首とでは精密度が大きく違うのだそうだ。例えるなら「腰が柱時計だとしたら,首は腕時計」だそうで,手術には高度な技術が必要であり,後遺症が残るリスクもあるとのことだった。
安静にして治療するということは,基本的には「寝たきり」である。しかし,食事やトイレには行かなくてはならない。私を担当してくれた医師は次のように言っていた。
私の場合,痛みは,首ではなく腕と背中に出た。背中は,肩甲骨の背骨に近い部分である。湿布はそこに貼った。腕には激痛が走るが,湿布をどこにはったらよいか分からない感じである。結局,腕に湿布を貼ることはなかった。首に貼ることもなかった。
横になっていれば痛みはないが,起き上がると痛みが出る。どうやら腕の重みで首が引っ張られて神経を圧迫するらしく,そうすると強い痛みが出るようだ。実際,反対側の腕で痛いほうの腕を持ち上げるようにすると痛みが和らぐのである。
痛みがなくなってきたら,リハビリを開始する。床ではなく,壁に手をついて腕立て伏せをせよとの医師からの指示があった。その他,リハビリについては ためしてガッテン:過去の放送:警告! 首の痛み総点検 が詳しい。
私が処方してもらった痛み止めは,飲み薬は「ロキソニン」,座薬は「ボルタレンサポ」である。痛み止めは,胃に負担をかけるとのことで,できれば飲まないことが望ましい。次のような会話があった。
医: 「痛み止めを飲みすぎると,胃に穴が開きますので,減らしていってください」
私: 「では,お尻から入れる座薬にした方がいいですか?」
医: 「座薬でも,胃に穴が開きます」
私: 「えー!?」
要するに,痛み止めというのは,体に吸収されて効果を発揮するのであって,鎮痛剤そのものを口から入れようがお尻から入れようが,変わりはないということなのである。薬効成分を含む血液は体中を巡るのであるから,どこから入れても胃には行くのである。これを聞いて,目にびっしりとはえていたウロコがボロボロ落ちたことは言うまでもない。
温めるのか冷やすのかについては,普段は冷湿布を貼って冷やし,リハビリで動かす前には十分温めるということになっていた。
症状が出てから,どのように快方に向かっていったかの印象をグラフにすると,上のようになる。異常は突然やってきた。予兆はなかった。その後,良くなったり悪くなったりを繰り返しながら,全体的に良い方向に向かって行っている。以下では1か月ごとにみていくことにする。
1か月目は,ほとんど寝たきりで何もできない状態。尾骶骨{びていこつ}のあたりに床ずれができた。起き上がれば腕が痛いし,寝ていれば背中が痛いという,どうしようもない状態である。
病院には週に1度ずつ通った。これが大変だった。車の助手席に乗って病院まで行くのだが,車内で悶絶する。座った姿勢でも痛みが出るのだ。病院の待合室でも,2人分の席をとって寝ている状態であった。混雑しているときは,申し訳ない気分になった。お年寄りには席を空けたいので,1人分をゆずり,そのお年寄りに寄り添うような変な姿勢になっていた。他人なのに仲良し風。
痛み止めは毎日飲み,湿布は毎日貼る。
2か月目は少し動けるようになったが,制限時間は5分程度。横になって痛みが引くのを待たなければ起き上がれない。神経から来る痛みは,筋肉痛とは違って,我慢ができないのが特徴。筋肉痛は,歯をグッと食いしばれば我慢できるが,神経の場合はダメである。「イタタタタ」となって,ひとり北斗神拳になる。風呂場でのストレッチを開始する。これも,よく「アタタタタめる」のが大切である (しつこいな)。
寝たきりで1か月を過ごすと,首の筋力が落ちるという問題が出てくる。治すには,首の筋力をつけなければならない。首の筋力をつけるには起き上がる必要があるが,起き上がると痛みが出るという困難に直面する。様子を見ながら徐々に起きている時間を長くしていくしかない。
そこで,「痛みは出ないが首は鍛えられる」姿勢を工夫した。上の図のように,背中にクッションを当て,首を浮かせるようにした。膝には本やパソコンを置く。実際は,本の代わりに子供が乗っていることの方が多かった。遊んでほしいのは分かるが,邪魔である。
2か月目も,痛み止めは毎日飲み,湿布は毎日貼った。
3か月目は,仕事に復帰した。仕事はデスクワークである。午前中は問題ないのだが,午後になると痛みが出てくる。そこで,1か月間は午前中のみの出勤とさせてもらった。
仕事中は,首のカラーをつけたままにした。それでなければ午前中も持たなかったのである。帰宅すると,すぐに横になって眠った。横になるだけでなく,本当に寝ていた。午前中の負荷が疲れとなって出たのかも知れない。
痛みがひいたと思ったら,肩から小指にかけて痺れが出るようになってしまった。医師に尋ねたところ,「ぶりかえしちゃいましたね」。一直線で良くなるものではないということが分かった。
3か月目は,痛み止めは減らした。湿布は毎日貼った。
4か月目は,フルタイムの通常勤務が可能になった。カラーは付けなくてもよくなった。相変わらず首は回せないが,普通に仕事ができる体に戻ったのであった。
4か月目は,痛み止めは停止。湿布も貼らなくて済むようになった。
結局,職場復帰までに3か月かかったことになる。現在,首が回せないという不便はあるが,ほぼ正常という状態になっている。今回のことでよく分かったのは「歳をとると,壊れやすく,治りにくい」ということである。結局原因は分かっていない。医師は「恐らく,加齢と,疲労の蓄積によるものでしょう」と言っていた。気をつけないとまた発症する可能性がある。
リハビリは今後もずっと続けていく予定である。朝目覚めたときには,起き上がる前に,天井に向かって腕を屈伸する体操をすることにしている。「エアー腕立て伏せ」である。そういえば,死んだ祖父が同じような体操をしていた。祖父が首をやったかどうかは分からない。その時は「布団で体操なんて横着な」と思っていたが,やることがだんだんと似てきているのであった。
Posted by n at 2008-02-06 23:47 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
Master Archive Index
Total Entry Count: 1957