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Photo 赤瀬川原平講演会「『利休』『豪姫』勅使河原宏の作品のこと」メモ

昨年行った赤瀬川原平の講演会「『利休』『豪姫』勅使河原宏の作品のこと」は面白かった。1年越しのネタを書いてみることにする。

■ ■ ■

はじめに

昨年の2007年,埼玉県立近代美術館で開催されていた「勅使河原宏展」に行った (nlog(n): 刺激的だった勅使河原宏展)。その日に赤瀬川原平の講演会があったので聴講した。それから丸1年経ってしまったが,印象深い講演会だったので記事にしておく。

赤瀬川原平講演会整理券
赤瀬川原平講演会整理券


赤瀬川原平氏は前衛芸術家である (赤瀬川原平 - Wikipedia)。「超芸術トマソン」の命名者である。何で有名かというといろいろあって困るが,印象的なものでは,模写による特大の千円札とか,新聞紙で梱包した首を振るだけ扇風機とか,カニ缶を使った「宇宙一大きい缶詰」などがある。

日時: 2007年9月23日(日) 15:00〜16:30
場所: 講堂 (2階)
講演名: 赤瀬川原平講演会「『利休』,『豪姫』,勅使河原宏の作品のこと」
聞き手: 学芸員 前山裕司 氏
定員: 100名 (※当日10時より1階受付にて整理券配布)
費用: 無料

映画「利休」

脚本の依頼

路上観察に夢中になっていた頃,1986年に草月会の海藤日出男から「利休の映画を作るので脚本を書いてくれないか」という電話があった。勅使河原宏とは面識がなかったが,草月会館でアンデパンダンをやっていたので知ってくれていた。草月会館は前衛芸術に開かれた場だった。勅使河原宏は脚本家を探していて,条件としては,自分でやったことのある人間で,しかも文章を書いたことのある人間であることが必要だった。自分は美術作品を発表していて,小説を書いて芥川賞をとっていたので条件を満たしていたのだろう。

路上観察と侘び寂び

路上観察には,隠れたものを探し出す面白さがある。それを夢中になっていたが,何と名づけていいか分からない。何と呼べばいいかを考えていたら,藤森照信が,「桃山時代の侘び寂びと言っていたものはこれではないか」と言った。自分たちが発見したことが,実は先人たちがやっていたと分かったのがショックだった。

「利休」の構想

「利休は誰がやるんですかね」と聞くと,「マーロンブランド」だという (マーロン・ブランド - Wikipedia)。それは面白いと思った。型破りだ。秀吉はビートタケシだという。実際の配役は,利休は三國連太郎,秀吉は山崎努となった。

「茶」の発達と成熟

普通は,成熟していくものは,たいていは大きくなる。しかし,茶は発達とともに世界がだんだん縮んでいくのが特徴的。茶室の広さは,4畳→3畳→2畳と,成熟するにつれて縮んでいく。

日本の美しさ

「中央にない」というのが日本の美しさ。西洋は中心に置くが,日本は中心を避けて置く。「すいません」と言って,よけていくような感じ。床の間も中心にない。茶室の釜も中心からよけてある。釜が中心にないのは便利だからということもあるが。

人間は真円を描きたがるが,基本は楕円なのではないか。真円は中心が1つだが,楕円は焦点が2つある。そこで「楕円の茶室」というの案を出した。「楕円の茶室」には1つの焦点に花を置き,もうひとつの焦点には何も置かないというもの。しかし,「大衆芸術では,楕円の茶室はできない」と言われボツになった。

利休は芸術と政治の世界に生き,秀吉は政治と芸術の世界に生きた。勅使河原宏は「芸術が勝って利休が死んでいかなければならん」と言っていた。

映画「豪姫」

もともと,利休,織部,光悦の三部作の構想があった。「豪姫」は織部の話。結果から言えば,千利休は成功,古田織部は失敗,本阿彌光悦は実現しなかった。「豪姫」では,冨士正晴が切り取った織部を描いている。しかし,難しかった。だんだん家康と対立していく核心が出しにくかった。織部が切腹するモチベーションを表現するのも難しかった。

勅使河原宏

人物

怖いイメージだが,人懐っこい人。大胆。型破り。アバンギャルドの人。酒は強かった。草月流の家元。

家元というもの

いけばなの家元でありながら,自身が芸術家であり続けるというのは,実はとても難しい。芸術家として自分のスタイルを死にもの狂いで追ってしまうと,草月流の会員が沈んでしまう。つまり,家元が先に進みすぎると,後ろがついて来られなくなってしまうということだ。「アバンギャルドは特殊であって,誰にでも押しつけていいものではない」とのこと。頂点にそういうものがあるとしても,人によって満足というものは違う。

いけばなというもの

花は日々変わるもの。いけばなには,日々新しいものを探すことが組み込まれている。いけばなには型があるが,いけることで型以上のものが出てきて欲しいと願っている。映画はある種の花である。「いけばなは捨てないといけない。捨てる大胆さが花を生かす」と言っていた。

次の構想

いつだか,喜劇をやりたいという電話があった。内容を聞いてみると,「至れり屋」という至れり尽くせりをやり過ぎて慇懃無礼のような話にしたいとのこと。しかし,そこで終わった。

まとめ

すでにこの記事自体がまとめなのだが,さらに抽出してひとことずつにまとめていくと,次のようになる。

  • トマソンは昔で言うなら侘び寂びなのではないか
  • 利休にマーロンブランドを起用する構想があった
  • 茶の世界は成熟するにしたがって縮んでいく
  • 真ん中にないのが日本の美である
  • 家元と芸術家の両立の難しさは想像以上
  • いけばなには捨てるプロセスが組み込まれている

その他

この講演会は無料なのだが,定員が100名。そして公演開始は15:00であるが,入場整理券は10:00配布開始ということになっていた。これには困らされた。つまり,必ず講演会を見たいのであれば10:00に行く必要があるが,そうなると5時間も待たなければならないからだ。長すぎる。だからと言って直前に行ったのでは,すでに定員に達しているかも知れない。「赤瀬川原平だったら,知名度もそんなに高くないし,急がなくても大丈夫かな」と一瞬思ったが,「いや待て,もともと集まっている人たちは勅使河原宏を見に来ているのだから,全員が知っているはず」と思い直した。判断が難しかった。結局,作品を一通り見終わる時間を見越して前倒しにとり,13:30に美術館に着くように行ったのだった。そして受け取った整理券番号は76。もう少し遅ければ危なかったのだった。なんとかならんのか。

Posted by n at 2008-09-24 23:33 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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