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misc バイクのパワーが過剰であって欲しい理由

バイクのパワーは過剰なくらいがよい。危険を回避する選択肢が増えるからである。パワーに余裕があれば非力なバイクではできない自力脱出が可能になるのだ。

■ ■ ■

私が最初に乗ったバイクは Honda Steed 400 だった (ホンダ・スティード - Wikipedia)。排気量 400 cc の中型バイクで「物持ちがいい私のことだから,10年は…,少なくとも5年は乗るだろう」と思っていた。しかし,実際は1年も経たないうちに Harley Davidson Softail Custom に乗り換えていた。排気量 1340 cc の大型バイクである。そのバイクは盗まれてしまったためにもうない (nlog(n): ハーレー盗難の思い出)。

スティードとハーレーの決定的な違いは馬力である。スティードは非力すぎたのだ。とは言っても,スティードだって速度メーターは何キロまであったか忘れてしまったが 140 km/h 以上はあったから,スピードが出なかった訳ではない。乗り換えたのには,1つの恐怖体験があったからである。あの経験は忘れることができない。それは次のようなものだった。

バイクで中央分離帯寄りの車線を走行
バイクで中央分離帯寄りの車線を走行


そのとき,私はバイクで2車線道路の中央分離帯寄りの車線を走っていた。後ろには乗用車,左にはタンクローリーが走っていた。

車線変更するタンクローリー
車線変更するタンクローリー


突然,タンクローリーがこちら側に寄ってきた。「ォィォィおいおいオイオイ!」どうやらタンクローリーからは私が見えていないらしく,単に車線変更をしにかかっているようだった。私はアクセルを全開にして前に出ようとした。しかしパワー不足でスピードが出ない。後ろに下がろうにも,後ろには乗用車がついてきている。そこで仕方なくホーンを鳴らすことにした。しかし,それまで一度も鳴らしたことがなかったのでスイッチの位置もよく分からず,探しているうちにどんどんタンクローリーは迫ってくるしで,生きた心地がしなかった。そしてどうにかホーンを鳴らすことができ,後ろの車も状況が分かったらしく,ホーンで加勢してくれた。タンクローリーはようやく気が付き,もとの車線に戻っていったのだった。

その日から私はパワーのあるバイクを探し始めた。

「日本国内の法定速度は最高 100 km/h なんだし (最高速度 - Wikipedia),それ以上はオーバースペックだから必要がない」のような議論をする人がいるが,そういう人は法律を守るのがいいのか,自分の命を守るのがいいのかよく考えてみるべきである。もちろん法律を守りながら死んでいくという選択肢もあるだろうし,止めはしない。「オーバースペック」というのは性能が必要以上であるという意味である。これは和製英語とのことだ (過剰性能 - Wikipedia)。

議論をニュートラルにするなら,必要以上にパワーのあるバイクは,危険な状況からの脱出の選択肢を増やしてくれると言い換えればよい。非力なバイクの場合は,上のような状況では他人に危険を知らせて回避するという,他力による脱出方法しかない。パワーがあれば,他力脱出のほかに,アクセルを開いて前に抜けていくという自力脱出が可能になるのだ。つまり自分が事故に遭う確率を自力で下げることができる。もちろん前に別の車が走っていれば自力脱出は不可能ではあるのだが,そこまでギリギリの車間で割り込んでくる可能性は低い。

スティード400は力不足を実感したが,同じ 400 cc のクラスでもレーサーレプリカやネイキッドであれば瞬間的にスピードを上げる力は持っている。これはバイクで出せる最高速度で判別できるものではなく,瞬間的に出せる出力の大きさの方が重要になる。排気量だけでなくバイクの種類にも大きく左右されるものなのである。

パワーがあり過ぎなバイクは,スピードを必要以上に出せてしまうため危険走行も可能になる。世の中には危険走行をする人間がいてそれが目立つため問題視されるが,パワー過剰のおかげで危険からの自力脱出を可能にするという事実もあるということを強調しておきたい。

Posted by n at 2010-11-05 06:01 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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