人糞を肥料に使わなくなった現代においても,ぎょう虫というのは絶滅していないそうだ。宿主がいなければ死んでしまうというのは大きな弱点だが,逆にその特質が絶滅しない強さにもつながっているのかも知れない。そんなことより,朝起きてから「ペッタンペッタン」を忘れないことの方が重要だ。
娘の通う幼稚園から「ぎょう虫検査をせよ」とのお達しがきた。ぎょう虫というのは,お腹の中に住もうとする寄生虫である。こんな時代にもなって,すなわち,すでに人糞を肥料に使わなくなってから久しい時代になってまで「ぎょう虫検査」が必要なのかと疑問を持ったが,平成13年度の小学校低学年の調査では 1 % の割合で発見されているとのこと (医薬品管理センター/ぎょう虫(蟯虫)検査と駆除対策)。100人に1人の割合で見つかるというのは思っていたより多い。子どもが感染すると親にも高い確率で感染するというので,親も安心してはいられない (ギョウチュウ - Wikipedia)。身の回りの環境が衛生的になったとしても,ぎょう虫の入り込む余地はある。無農薬野菜である。農薬を使わない分,健康にはよくて人体に優しいが,同時に虫にも優しいからである。それから生肉がある。シカ肉の刺身は美味だが,寄生虫がいる可能性がある。
寄生虫がいるとアレルギー性疾患がなくなるという藤田博士の話がある (20040418藤田紘一郎東京医科歯科大学教授 ちょっといって講座「人と回虫とウイルスの深い仲」)。他人に感染しないのであれば,アレルギー体質の私自身が飼いたいくらいである。アレルギーがなければ好きなモノが食べられるからである。ただ,寄生虫とアレルギーの関係については疑問視もされており,アレルギーが必ず直るというものでもないらしい (ほぼ日刊イトイ新聞-主婦と科学。研究レポートその3 花粉症続報。〜ほぼ日読者研究員の報告より〜)。
ぎょう虫検査の説明書を見ると「おぉ懐かしい」。いまだにキュービーの絵が使われていたので心が少年時代に戻ってしまった。しかし記憶と違うのは,キューピーの姿勢である。
このキューピーはしゃがんでいるのである。私の子供時代であるおよそ35年前は,「"見返り美人風前へならえ"のポーズ」だったのである (ぎょう虫検査・検便 に写真あり)。どうやらこのポーズは地域によって違うようで,東京では「前へならえ」,それ以外では「しゃがみ」になっているとのこと。セロファンの色も違い,東京では「1日目は黄色タグ,2日目は紫色タグ,貼り付ける部分にはグルグル渦巻の点線」だが,それ以外の地域では「1日目2日目の色分けはなしの文字表示,貼り付け目標は青色で中心に十字」になっている。
これは「ウスイ式」とある。これも私の記憶にはない。これには次のような内情があるそうだ。
東京だけテープの種類が異なる理由については、実際、商売が絡んでいるそうです。かつて「ポキール」(ぎょう虫の虫下しの商品名ですね)を販売していた三共製薬が「ポキール」販売促進のために「ウスイ式」(東京タイプではない方、青い◎印のやつです)テープの販売権を取得して全国の寄生虫予防協会にに卸していたそうです。
(現在も東京全域と千葉の一部以外はほぼ「ウスイ式」が制圧しているはずです。)
ところが、東京都寄生虫予防協会とは価格面で折り合いがつかず、都の協会は独自に「ピンテープ」(東京タイプの、渦巻きが書いてあるやつです)を開発した、という経緯があるとのことです。
ウスイ式のキューピーには丸輪太郎という名前がついているそうだ (丸輪太郎 - Wikipedia)。
ぎょう虫検査は,朝起きてからすぐにやらなければならない。多くの家でやるのと同じように,我が家でも「トイレのドアノブに検査キットをビニール袋に入れて吊るしておく」作戦をとった。これなら忘れっぽい私でも大丈夫。
目が覚めたら「いきますよ,はい,ペッタンペッタン,もうひとつおまけに,ペッタンペッタン」。和やかに採取が終了した。
2014年5月2日追記:
和やかにはいかなくなりました (nlog(n): ぎょう虫検査で「エッチ!」とな)。
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ギョウ虫検査用のセロハンが20年くらい前から欲しかった
当時は一般人は買うことができずネットで一生懸命に検索しても全く出てこなかった
いつの間にかアマゾンなどで普通に買えるようになっていた
それに気付くのが遅れ、ようやく注文したときには、どこのサイトも売切れ、生産中止、再入荷予定なし、該当商品無し、ばかりで結局入手できなかった(泣)
Posted by: たけうち at December 31, 2015 03:08たけうち さん
Posted by: n at December 31, 2015 03:30マジですか!たしかに駆け込み需要があったようですね。
nさま
ご返信あありがとうございます。ハイ、本当のことです。自分のうかつさが腹立たしく、本当に落ち込んでおります。
個人的感情を長々とすみません。
でもなぜ、一部地域では検査の継続を検討しているのに、検査用セロハンが早々姿を消してしまったのか。不思議ではあります。あるいは下のようなことか?
https://www.youtube.com/watch?v=tcGhbRPkstA
Posted by: たけうち at January 01, 2016 12:18たけうち さん
Posted by: n at January 01, 2016 13:35一般販売をするほどの量を作らなくなったということなのでしょうね。医療機関に申し込めば,1年に1組ずつならもらえるかも知れません。