知り合いに連れられてスナックに行った。おねえさんがいるスナックは楽しいところ。ボッタクリで怖いということはないが,別の意味でちょっと怖い。お客のおじさま方は大人だった。
スナックよいとこ一度はおいで,酒は美味いしねえちゃんは綺麗だ。
つい先日のこと,知り合いに連れられてスナックに行った。そのスナックは知り合いの行きつけの店で,私も何回か訪れたことがある。今回は1年ぶりくらいか。
スナックはママがいる地元の酒場で (スナックバー (飲食店) - Wikipedia),一般的にはしっかりしたドアがついている。それは,大衆酒場よりは閉鎖的だが,馴染んでしまえば安心感につながるということも意味している。基本的に常連さんしかいない。私は常連さんが連れてくる一見さんである。といっても,すでに本当の一見さんではないので少しばかり毛が生えているといったところか。
中では常連のおじさまたちが思い思いに酒を飲んだり,話をしたり,歌を歌ったりしていた。
接客はママと,20歳代のおねえさんがしてくれた。流石に話すのが上手い。スポーツの話や最近の世間の話を少しずつ振りながら,こちらが引っかかって何か反応したところに,詳しく切り込んでくる。こちらも少しは知っている話なら面白いので,話下手な私も,それを意識してしまうことはなかった。よく「話題がないな」と思った途端,停滞した空気が流れるものだが,そういうことは一切なかった。他の客が話しているときは,興味がなければスルーすればいいので気が楽だった。ママは特に,いろいろなことをよく知っているのに驚かされた。どんな話題でも,こちらから振れば,何かしらの受け答えをしてくれる。日頃からそこらじゅうにアンテナを張り巡らしているからこそできることである。
ママは私と同年代の50歳前後のようだった。長くこの世界にいるそうで,なるほど話術は非常に上手い。自分を客よりも常に下に下に位置づけるようにするので,「ほら,わたしなんかあんまり勉強が好きじゃなかったから」などと言ったりしていたのだが,勉強が好きでないことが仮に本当だとしても,それは頭が悪いことを意味しない。頭の回転は非常に早いし,いろいろなことをよく覚えている。接客業で,客に好かれたいのなら当たり前のことなのかも知れないが,客の個人的なことをよく覚えているのだ。自分のことを覚えていてくれる人がいる店には自然と足が向く,そういうものである。
さて,ママは長年の経験で客の心をつかむ術{すべ}を身につけているのは当然だとしても,20代のおねえさんも別の技術を持っていて,それでもって経験を見事にカバーしていた。その方法とは,好き好きビームを出すことである。例えば,じっと目を見つめたり,話を聞いてよくウケたり,興味ありげにいろいろ聞いてきたりするのだ。そんなことをされたら,勘違いしてしまうではないか。ドキのムネムネが止まらないw。
そんな胸の高鳴りもお会計までである。そうか,この料金というのは,「勘違いさせてくれる料」なのか。もっと言ってしまえば,スナックはそういう疑似恋愛というかモテモテ感を提供してくれる場なのだ。そう思ってもう一度あたりを見回せば,そんなことは当たり前のように知っていて,それでも来ているおじさま方がいるのだった。そして思い思いにグラスを傾けつつくつろいでいる。その微妙な距離感を楽しむのか。勘違いしてしまって深みにはまったら怖いけど,その時だけと考えれば楽しく過ごせるものだ。そうかそうか,みんな大人だねぇ。
そんなことをヒシヒシと肌に感じた夜だった。といっても,肌の接触はなかったので念のため。
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