日本と西洋では,お釣りの計算の方法が違うという。これは何を等価交換の対象として見ているかが違うことの結果だと考えると,上手く説明することができる。
日本と西洋では,お釣りの計算方法が違うということをよく耳にする。日本式は引き算でお釣りを計算し,西洋式は足し算で行うと言われている (日本 西洋 お釣り - Google 検索)。しかし,これはそもそもの考え方が違うことの結果でしかない。これは仮説だが,「品物とお金を等価交換するとき,何を等価と見るかが日本と西洋では違う」のだと考えると,その結果としてお釣りの計算の違いを合理的に説明することができる。このことに気がついたとき「ヘウレーカ!」と叫びそうになったので以下に紹介する。
日本では,等価交換の対象はモノである。例えば,1箱513円のドーナツを,1000円札を出して買ったとする。お釣りは487円。これは,513円の品物に対して,1000円は貰いすぎなので,多すぎた分を返すという発想である。多すぎた分はいくらかというと,1000円から本体代を引いた額ということで 1000-513 を計算する。引き算になっている。
お釣りの出し方の特徴としては,大きな額から返している。例えば5000円札を出したとすると,「まず大きい方から4000円,残り487円のお返しです」というように,大→小の順で返してくれる。
西洋では,等価交換の対象はお金の総額である。例えば,513円のドーナツを1000円札で買う場合,1000円という金額が等価交換の対象と見るのである。「こちらが1000円出すから,そちらも品物を含めて1000円分用意しろ」という訳である。そこで,品物513円をもとにして 513→515→520→550→600→1000 となるようにコインを使っていき 513+2+5+30+50+400 を計算する。見事に足し算になる。
洋風のお釣りの出し方の特徴としては,小→大の順になる。小さい金額の硬貨から始めることで,キリのいい 5 とか 50 を作っていくからである。
和風は「もらい過ぎた分を返す」のに対し,洋風は「同じ金額分を双方で用意する」ことになる。どちらも等価交換ではあるが,洋風の方が厳密である。目の前で同額の交換がなされるからである。和風はいったんお札を渡してしまっているので,そこでもし逃げられたらブツは手に入るかも知れないがお釣りは戻ってこない。そういう意味では,和風の方がより強い信頼関係をベースにしていると言えるだろう。あるいは,西洋にはチップという文化もあるので,混乱を避けるのにも便利な方法だと言える。洋風方式では,交換するときのコミュニケーションは不要だとも言える。
等価交換の考え方を入れて見直すと,洋風のお釣りが「足し算」であるということは,「引き算ができないから」という理由ではないことが分かる。どちらかと言えば「引き算の必要性を感じないから」なのである。結果的には,それが「ひき算ができない」につながるかも知れないが,それは能力の問題ではないのである。
小銭が多くなってくると重いし財布も傷みやすくなる。そんなときには,「お釣りの硬貨の数を少なくする」作戦を実行することがある。513円の品物を買うのに1000円札を出すと,お釣りで硬貨を11枚もくれてしまう。これは嬉しくない。そこで,お財布の中を探して,10円玉と5円玉を追加して渡す。すると,お釣りは500円玉と1円玉2枚の合計3枚のコインが返ってくるだけなので,差し引きコインが1枚増えるだけで済む。11枚増えるよりも軽い分嬉しさ倍増である。たまに500円玉がなくてジャリジャリくれてしまうこともあるが,それでも枚数としては半分で済む。
これはお釣りを「大→小」の順で出す習慣から出てくる発想である。一番大きい硬貨を考えたときに「500」がヒットするからこれが可能なのである。「小→大」の順からだと「500」にたどり着くことができない。このため,10円玉と5円玉を出したときに「それはいいから」と突っ返されて,さらにコインをワンサカ返されることになってしまうのである。
日本式は「品物が主体」の等価交換で,西洋式は「総額が主体」の等価交換だと考えることができる。より詳しく言えば,日本式は「品物の代金」に注目し,西洋式は「やりとりするお金の最大額」に注目しているということである。「お釣りが引き算か足し算か」は,もとの等価交換の対象が違うことからくる結果なのである。西洋の人にとっては,引き算が苦手だからやらないのではなく,必要性を感じないから引き算をしないだけなのである。
ただし,これは手で計算するときの話。何年か前に海外旅行に行ったとき,スーパーマーケットの会計ではレジに表示されたままのお釣りが返ってきた。
イラストは 千円、二千円、五千円、一万円札のイラスト-無料ビジネスイラスト素材のビジソザ の素材を使わせていただいた。
Posted by n at 2014-05-31 20:00 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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