「大人買い」それは子供の憧れである。「自分の欲しいあの商品を,大人になったらまとめて買ってやる!」そう思うものである。昔は個人的なことだった大人買いは,近頃は様子が違ってきた。他人の目に見えるようになってきたのである。
「せ〜のっ,ドンッ!」
うちの子供は小学生の女の子。ここのところ,彼女は YouTube のレオンチャンネルに夢中。レオンチャンネルは,妖怪メダルその他子供向けグッズを紹介してくれる番組で,「せ〜のっ,ドンッ!」のかけ声に合わせて買ってきたメダルを開封するのである。トークは軽快だし上手く編集もされていて,動画としてよくできている。YouTube には「開封動画」が山盛りである (開封動画 - YouTube)。
妖怪メダルというのは,テレビ番組「妖怪ウォッチ」関連のグッズで,1個あたり100円くらい。2個入り180円(税抜)のような形で販売されている。中身は見えないので,くじ引きの性質がある。バンダイの公式サイト妖怪ウォッチ 妖怪メダランドは,トップページからだけでは妖怪メダルが何ものであるのかさえ一見しては分からない。よく分かっていない大人からすればディープな世界である。妖怪メダルはコンビニなどで売られているが,品薄商法ではないかと噂されるほど店頭にない。オークションでも見つけることができるがプレミアがついている。新しいメダルは「第何章」として期間を分けて発売される。新しく販売される日から数日は店頭で見つけることができ,そのときは定価で買うことができる。ブームとなったのは去年2014年で,最近は下火になってきている感じがする。
メダルを集めたいという子供心はよく分かる。私も子供の頃に仮面ライダーカードやプロ野球カードを集めたくちだからだ。仮面ライダースナックが発売されたのは1972年,スナック1袋につき1枚カードがついていた (仮面ライダースナック - Wikipedia)。それ以前は,集めるものと言えば駄菓子屋で買えるブロマイドか「チョコボールのおまけ」「グリコのおまけ」くらいだったから,集める量も限られていた。「ライダーカード」が子供の収集心に火をつけた最初の商品だったのではないかと思う (食玩 - Wikipedia)。
子供たちはたくさん集めることを夢に見て,「大人になったらお金を稼いで思い切りまとめ買いするんだ」と思うものである。いわゆる「大人買い」にあこがれるのである。
今までの「大人買い」は単に自分が子供だった頃の夢をかなえるものだった。自分のお金で好きなだけまとめて買って満足し,それで終了していた。これは大人になった自分だけの個人的な出来事であり,他人に見えるものではなかった。ところが,最近は YouTube の登場で様子が変わってきた。大人買いした大人がそれを自慢するようになってきたのだ。そうは言っても,「自慢」であるとは一言も言っていない。単なる商品紹介なのである。ところが,単なる商品紹介だとあなどってはいけない。「子供が欲しがるものの商品紹介」なのである。これには参った。子供が釘付けになるのも無理はないのだ。子供にしてみれば,自分は1個とか2個しか買えないものが,箱で買われてきてじゃんじゃん開封されるからだ。よだれ垂れまくりである。
YouTube には宣伝がついているので,動画の始まる前に宣伝を見ることを強制される。子供は,過払い金の整理をしてくれる法律事務所の宣伝を覚えてしまった。「かばらいきんって何?」と聞かれても親としては答えに苦しむ。まだ借金の概念も分からない子供に過払い金をどうやって説明しろというのか。
インターネットの影響で,子供はいろいろな情報を仕入れてくる。しかし多くの場合そのリクエストには答えられないのである。「ネットで妖怪メダル買ってほしい」→「それは普通よりも高い値段がついているからダメだよ」→「どうして?」→「…」難しい。「妖怪メダルコンプリートセットをネットで買ってほしい」→「それは誰か他の人が集めたものだからダメ」→「どうして?」→「…」難しい。妖怪メダルはくじ引きで,何が当たるか分からないものだ。枚数が増えてくれば,当然ダブる頻度も増えてくる。そういうことは経験することで分かっていって欲しいものなのだ。誰かが集めたコンプリートセットを高いお金を出して買うのは,もしお年玉をハタいて買えたとしても,子供のやるべきことではないと思っている。
親としてできるのは妖怪メダルの発売日を調べてやることくらいしかない。
それにしても「大人買い」。私の経験からすると,子供の頃にあれだけ欲しかったものなのに,お金を稼ぐ年齢になったときには驚くほど興味がなくなっていて,「大人買い」は結局のところ,「しない」という矛盾がある。そんなことが話せるような大人になって欲しいが,なかなか親の思うようにはいかないものだ。
Posted by n at 2015-06-24 22:41 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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