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Photo マグリット展に行ってきた

マグリット展に行ってきた。初めて見る作品も多くあり堪能した。

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マグリット展
マグリット展


先日,国立新美術館で開かれているルネ・マグリットの展覧会に行ってきた (マグリット展)。マグリットはベルギーの画家である (ルネ・マグリット - Wikipedia)。日本では13年ぶりの大回顧展とのこと。私が前に見たのは竹橋の国立近代美術館での展覧会だったから1988年のことである (東京国立近代美術館 ルネ・マグリット展)。自分にとっては27年ぶりのマグリットになる。

1988年のマグリット展でビックリしたのは,世界中の人が同じようにビックリしたパイプの絵だった。

C'est une pipe. (これはパイプである)

パイプが描いてあり,その下に「これはパイプである」と書かれている。絵の中のタイトルを含めてひとつの作品になっているものである。ふむふむ,なるほどその通りだ,と思って次の絵を見てみると,同じようにパイプが描いてあるのにタイトルが違うのである。

Ceci n'est pas une pipe. (これはパイプではない)

確かにこれはパイプの絵であって,パイプそのものではない。とすれば,さっき「ふむふむ」と納得していた自分は何だったのか。言われたことをそのまま鵜呑みにして分かったような気になっていただけだった。(検索してみたが「これはパイプである」の絵が出てこないのはなぜだろう…)。今回の展覧会では, パイプの絵は1点だけだった。

マグリットはこういうタイプの芸術家なのである。実際に絵をよく見てみれば, 観るものをうならせるような技術的な上手さはない。どちらかと言えばむしろ下手な方である。マグリットは, 人間が行う「認識」という行為に対して疑問を投げかけ, また絵をもって回答を示したりする画家なのである。

例えば, 「陵辱」(1934) というタイトルの絵がある。女性の頭部が描かれているのだが, 女性の顔が女性の裸体になっているのだ。目にあたるところは乳房, 鼻はへそ, 口の部分には陰毛がきているので (口の部分には下の口とまでは言っていないが), 見た目的にはユーモラスである。なるほど女性の裸体も見ようによっては人の顔に見えなくもないなと思う。これが一見したときの認識である。ところが, 次には深刻な問題が待ち構えている。タイトルの「陵辱」である。私たち男性が, 女性を見るときに, 裸を想像することで辱めていないかという問いかけになっているのだ。私自身, これは否定することができない。女性のことを,少なくとも一度は性的な目で見ている。年齢や容姿を問わず想像してみて, できるかできないかの妄想をするのである。この作品による指摘によって, 自分は心の中の野蛮な部分をバラサレたような感覚におちいる。そうなると, ユーモラスだなどと言って笑ってはいられなくなるのである。

今回の展覧会で, 私が一番好きだったのは, 初期の作品「水浴の女」(1925) である。後の多くの作品のモチーフになる, 女性, 窓, 球体が描かれている。直線と曲線の組み合わせによる画面構成は, 無機的なものと有機的なものの融合を連想させる。波打ち際の曲線と女性の脚の曲線という別の性質のものが同期し画面にリズムを生んでいる。この作品が処女作ではないが, マグリットの要素の多くが詰まっている作品だといえる。展覧会を見終わった後, 売店でこの絵の絵葉書を探したが見つからなかった。マグリット財団が作っているリトグラフにもされていなかった。人気のない作品なのかも知れない。ついには図録を買ってしまった。

マグリット展の図録
マグリット展の図録


図録を持って会計に行くと,レジの女性が何も言わず新品と交換してくれた。恐らくそういう仕事の決まりになっているのだろう。しかしその「新品」は,誰も触っていないという利点があるが,検品されていないという欠点があるのだ。レジに持って行く前にひと通りチェックしたのが無駄になってしまった。外でもう一度落丁がないかを調べなければならなかった。

記事の冒頭で出かけたのは「先日」と書いたが,この先日は実は4月のことで2か月も前である。マグリット展の後,同時期に同じ国立新美術館で開催されていた第31回全国公募書道展と第92回春陽展も見てしまった。書道展は無料,春陽展はマグリット展のチケットを見せれば無料になる。どちらも面白かったが春陽展の作品の数が多すぎて (600点くらいあった) 足が棒になった。

マグリット展の開催は東京展が今月6月29日(月)まで。次は会場を京都に移し7月11日から10月12日の会期で開催される。

少し気になったのは,今回の展覧会の Web サイトが http://magritte2015.jp という独自ドメインになっていることだ。短い URL はアクセスに便利だが欠点もある。サイトの管理は読売新聞社 (クレジットが「© The Yomiuri Shimbun 2014-2015 All rights reserved.」)。ドメインの維持にはお金がかかるので,会期が終わってしばらくすると,例によって捨てられてしまうのではないかと心配している (nlog(n): やめて欲しいドメインの使い捨て)。

488679002X

これはパイプではない

5つ星のうち4.7

ミシェル・フーコー,Michel Foucault,豊崎 光一,清水 正

Posted by n at 2015-06-25 22:21 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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