子供の頃,フォークが空中に浮いている食品サンプルを見て,これを作る人はすごいと思った。
9月12日は食品サンプルを事業として成功させた岩崎瀧三{いわさき・たきぞう}の生誕日だそうだ (岩崎瀧三 - Wikipedia)。Google ロゴに紹介されており,今年で生誕121周年だそうだ (岩崎瀧三生誕 121 周年)。
子供の頃に見て驚いた食品サンプルは,フォークが宙に浮いているナポリタンスパゲティだった (食品サンプル ナポリタン - DuckDuckGo)。小学生の頃は手品が大好きだった。演ってみせるのも好きで,「騙しているのに喜んでくれる」というのが不思議な感覚だった。普通は,騙せば騙された人はいい気持ちはしない。ところが手品は逆なのだ。それと同じことが食品サンプルにも言える。ナポリタンスパゲティの場合は,単に料理を表しているだけでなく,フォークが浮いていることでエンターテイメントにもなっているからである。しかも人が演じる必要がなく,そのものだけで楽しませるものになっている。
小学校4年生くらいのときに,近くのお茶屋に登場したのが「無限にお茶が出続ける急須」だった。これにも度肝を抜かれた。急須の口からお茶が休むことなく流れ落ちているだけでなく,その急須も宙に浮いていたからである。仕組みがなかなか分からなくて,店の前で長い時間見続けたことを思い出す。結局のところ,1か月ほどしてから店の前を通りかかると,水切れで動作が止まっている状態になっているのを見てしまった。水が流れていないと魅力がゼロだった (六角通を歩く〜京都の東西の通りを歩く?〜 | Kyohu の状態)。
その後,妄想でなりたいと思ったのは「汚れ職人」である。これは勝手につけた名前なので,実際は別の呼び方をされているのかも知れない。ここで言う「汚れ職人」とは,洗剤の実演販売で「使用前・使用後」を見せるための準備の仕事である。例えば使って汚れた換気扇を見つけてくるのは難しい。そこで綺麗な換気扇に「それらしい汚れをつける」。これが汚れ職人である。「脱毛前・脱毛後」を見せるための「毛を生やす」のも同じである。消費者を騙して買わせるというのが主な仕事で,その商品が優れているかどうかについては言及しないので,黒に近いダーティーな職業である。これをメインの仕事にするのは良心的にもキツそうだと思った。
憧れてはみたものの,食品サンプル職人にはならなかった。しかし,その精神は見習って行きたいと思った。食品サンプルに最低限必要なことは,食堂で提供される料理を道行く人に見せることだが,それだけで留めておくことはない。アイデアを追加することができて,それで人を喜ばせることができるということなのである。
Posted by n at 2016-09-12 21:45 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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