迷惑メールの代名詞「スパム」の呼び名は、ミンチ肉缶詰の SPAM に由来する。しかし、迷惑メールを「SPAM」と書くのはよろしくない。小文字で「spam」またはカタカナで「スパム」と書くのがよい。「SPAM」を製造している会社の主張は、なかなか粋である。
(空缶は筆立てに最適) |
スパムの語源については、モンティ・パイソンの寸劇からという説が有力で、RFC2635 に説明がある。airhead さんによる日本語訳 では、次のようになっている。
大規模な迷惑メール配信や迷惑ネットニュース・ポストを指して用いられる用語「spam」は、映画/TVスタジオのカフェテリアで演じられたモンティ・パイソンの短編集に由来する。その短編では、会話のすべてが「spam spam spam spam spam spam and spam」になってしまうまでメニューにある品目それぞれが「spam」という言葉に乗っ取られてゆく。この短編が、大量の迷惑メールや迷惑ポストでメーリングリストやネットニュースグループを乗っ取られたときの有り様とあまりによく似ていることから、この用語はインターネットコミュニティで一般的に用いられるようになった。
缶詰会社にとっては迷惑な話である。
「SPAM」という缶詰を作っている会社「Hormel Foods」の主張は面白い。SPAM and the Internet には、迷惑メールのことを「SPAM」とは書かないでくれ、「spam」としてくれとある。大文字の「SPAM」は製品のトレードマークなので、区別するために小文字の「spam」を使ってくれというのである。日本語であれば、「spam」あるいは「スパム」とすればいいだろう。単に「商標を使ってくれるな」と言っているだけなのに、なぜかいい感じ。「SPAM」と書いた個人を目の敵にしていないからなのかも知れない。
モンティ・パイソンの寸劇の音声とスパムの歌は、The Monty Python Spam Skit! で聴くことができる。内容は、空飛ぶモンティ・パイソン25話「スパム・スケッチ」 に日本語訳されている。出演する男は、ミンチ肉のスパムを迷惑に思っているのではなく、スパム好きとして描かれる。製作年は Unix のエポック(時計開始)と同じ 1970 年。「ミンチ」(あるいは「メンチ」)の語源は「mincemeat (ミンスミート)」、同じ意味で使われる「ランチョンミート」は「昼食用の肉」という意味で、ひき肉を直接指すものではない。
大文字、小文字で区別するといえば、「Web」と「WEB」というのもある。「Web」は「World Wide Web」、「WEB」は Donald E. Knuth による文芸的プログラミングシステムのことをいう。これも使い分けたい表現の一つである。プログラムというのは不思議なもので、自分の書いたものであっても、1ヶ月も経つと他人が書いたものと同じくらいの呪文のカタマリになってしまう。そこで、コメントで覚え書きをしたりするのだが、所詮は覚え書に過ぎず仕様書にはならない。これを一気に解決しようというシステムが、文芸的プログラミングシステムなのである。プログラムとその説明を1つのドキュメントに書いてしまうのである。これをシステムにかけると、プログラムと説明を分離してくれる。このシステムの利点は、プログラムと仕様書のメンテナンスが1ヶ所で済むため、「プログラムはバージョンアップしたが、仕様書が古いまま放置される」という問題がなくなることにある。WEB システムは、もともと Pascal 言語用に開発されたが、その後 C 言語に移植され、現在ではほとんど全ての言語が WEB で書けるようになっている。有名なのは、組版システム TeX がある。残念なのは、ほとんど全ての計算機言語には対応しているのに、「日本語」文書に対応したシステムが少ないことである。
2004年11月28日追記:
WEB についての記述を追加しました。履歴は右上の をクリックすると見られます。
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