三鷹市美術ギャラリーで開かれている高島野十郎の展覧会に行ってきた。
来週の月曜日2006年7月17日まで,三鷹市美術ギャラリーで「没後30年 高島野十郎展」が開催されている(三鷹市美術ギャラリー ||| 没後30年 高島野十郎展)。
今回集められた野十郎の作品は100点。1988 年に開催された目黒美術館での展覧会以来の大きな展覧会である。この展覧会を待っていた(nlog(n): ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの炎)。
三鷹市美術ギャラリーは,三鷹駅前徒歩0分。南口正面にあるビルの5階にある。
人が少ないうちにゆっくり観たいと思ったので,11時少し前に到着。上りのエスカレータが動いていない。4階のレストラン街は11:00からだからだ。レストランは開いていないが,その上の美術ギャラリーは10:00から(ひっそりと)開いている。5階に行くには,エレベータか階段しかない。
5階に上ると,すでに人が沢山来ていて驚いた。中年の女性が多い。展示する側も,恐らくその年齢を対象にしているのだろう。というのも,絵のかけてある高さが低いのである。身長160cmの人に合わせてあるのだ。これは,今回の美術展の最大の難点であった。180cmの私には低すぎるのだ。プラド美術館展のマリアは逆に高すぎた(nlog(n): フェリペ4世とその娘マルガリータ)。なかなかぴったりの高さの展覧会に巡り合わない。
野十郎の作品はどれも素晴らしい。変わったものでは,東京帝国大学在学中に描かれた,魚介類の観察図が展示されていた。学術的な形式で描かれたものだが,芸術品に見える。学生時代は魚類の感覚の研究を行っていたという。画家としては不思議な経歴の持ち主でもある。
美術展に行ったときに,絵を身近に感じるコツがある。それは,「美術展の作品の中で,自分の一番好きな作品を探す」と思って観ることである。そう思うだけで,漠然とした姿勢で観ることがなくなる。じっくり観るようになるのだ。私は必ずこれをやる。
今回の私の一番は,
だった。枯れ草の生えた土手の向こうに見える落日を描いたものだ。逆光のため,土手はシルエットだが,ちらほらススキの穂が見える。秋の空気を感じさせる素晴らしい作品である。
その他の気に入った作品は以下の通り。
画力もすごいが,視点が面白い。
展示の最後には,照明を落とした「蝋燭の部屋」が用意されていた。1枚の絵に1つの蝋燭{ろうそく}。あやしく灯る蝋燭に囲まれた不思議な空間を体験できる。
細かいことで気になったのは,サインである。
となっている。「M. Y. Takashima」の「M」が何を示しているのか分からない。横文字でなくなった「野十郎」というサインが日本人としての心意気を感じさせる。これはいい。漢字のサインをする画家は少ない。
悪い意味でとても気に掛かったのは,野十郎のローマ字表記である。今回の展覧会の英語表記は「The 30 Year Memorial Retrospective Exhibition of YAJYURO TAKASHIMA」となっている。パンフレットも「Takashima Yajyuro」。何が言いたいかというと,「jyu」としている「じゅう」の表記である。「じゅう」と「じゅ」は同じでもよい。それは問題ではない。「じゅ」は,訓令式なら「zyu」,ヘボン式なら「ju」となる。つまり「jyu」はあり得ない表記法なのである(■ローマ字のよくあるまちがい)。訓令式とヘボン式が混ざってしまっている。「Yajyuro」を,高島野十郎本人が自分の名前のローマ字表記として使ったものなのか,展覧会開催者が新しくつけたものなのかは不明である。非常によく見かけるが,間違いである。
高島野十郎の「高」は,旧字を用いるのが正しい(上の「口」の縦線が上下に突き出る)。
入場料は大人600円。ウェブサイトの割引入場券を使えば480円になる。質,量,価格すべてに満足できる展覧会だった。
Posted by n at 2006-07-12 23:25 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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