The Who 単独来日公演に,2日連続で行ってきた。2日目は日本武道館である。
The Who (ザ・フー - Wikipedia) 単独来日公演に,2日連続で行ってきた。今日はその2日目。アリーナ席のチケットは12,000円なので,懐にも打撃である。2008年11月17日(月)の公演会場は日本武道館。開場時間の18:00頃,最寄りの九段下駅を降りると,すでにかなりの人で混雑している。
さいたまで見かけなかったダフ屋が何人もいる。「チケットないひとあるよ〜」とか何とか言っている。それよりもちょっと驚いたのは,「チケット譲ってください」と書いた紙を持って,来る人の方に向けて立っている人がいたことである。そういう人が何人もいて,若い女性が多かった。彼女らの目的は何だろうか。ウドーは The Who の追加公演 (2日後) のチケットを今日も販売している。チケットが正規ルートで手に入らない訳ではないのだ。「譲って」には「タダで」という意味なのだろうか。公演が始まってしまえば,ダフ屋からディスカウント価格で購入できると言われているので,それを利用するという手もある。「見られないかも知れないのに,九段下には来る」というあたり,熱意があるのかどうかが微妙に分からない。「お金は全然ないが,暇だけはある」という人なのだろうか。
非公認グッズ販売は,さいたまよりも多い。演奏終了後,放送で「アーティストの権利を守るため,場外で販売されているグッズはお求めにならないようお願いします」のようなことを言っていた。「権利を守る」という理由は初めて聞いた。
ステージのセットは昨日と同じ。これを見て思ったのはスタッフの作業量である。コンサートに使う機材はすべて演奏者が持ち込む。したがって,昨日の夜に演奏が終わった後,ステージ上の機材,照明,ミキシング卓,コードなど,関連する物品をすべて撤収し,次の演奏会場に運んでから,設置して調節しなければならないのだ。プロのステージでは,音が出ないなどのミスは許されないことはもとより,アーティストへの音の返しも無線で確実に行わなければならないので,かなりの精度が要求される。それを毎日続けるのだから,大変なことである。
開演は19:00。開演10分前になると,昨日と同様に照明機材のところにスタッフが登り始めた。女性スタッフも躊躇なく登っている。照明スタッフは日本人のようだった。音に関するスタッフは全員外国人だったから The Who 専属なのだろう。照明スタッフは,もしかすると「現地調達」なのかも知れない。
今日の演奏リストは次の通り。Set List: Can't Explain / The Seeker / Anyway Anyhow Anywhere / Fragments / Who Are You / Behind Blue Eyes / Relay / Sister Disco / Baba O'Riley / Eminence Front / 5:15 / Love Reign O'er Me / Won't Get Fooled Again / My Generation / Naked Eye / Encore: Pinball Wizard / Amazing Journey / Sparks / See Me Feel Me / Tea and Theatre (17th November, 2008 - THE WHO LIVE AT BUDOKAN)。公式サイトにあるように,For the first of there two Budokan gigs, The Who added 'Naked Eye' to the set list.
Naked Eye が追加された。Won't Get Fooled Again が入る順番も違っていた。
スクリーンの映像は以下のようになっていたと思う。
曲順 | 曲名 | スクリーン |
1 | Can't Explain | The Who の昔のフィルム |
2 | The Seeker | 手と花のフラッシュバック |
3 | Anyway Anyhow Anywhere | ユニオンジャック |
4 | Fragments | 磯に砕ける波 |
5 | Who Are You | マネキンCG |
6 | Behind Blue Eyes | 目の中の万華鏡 |
7 | Relay | ヘッドライトと羽毛 |
8 | Sister Disco | 女性が描いてある看板 |
9 | Baba O'Riley | コンピュータ画面のデジタル文字 |
10 | Eminence Front | 油と水が上下 |
11 | 5:15 | 線路の映像早回し |
12 | Love Reign O'er Me | モッズ暴動のモノクロ映像 |
13 | Won't Get Fooled Again | 5枚のタロットカード |
14 | My Generation | 世界各国の面白映像 |
15 | Naked Eye | 金色の電球 |
16 | Pinball Wizard | ピンボール |
17 | Amazing Journey | 稲妻風の背景で手話のような手の動き |
18 | Sparks | 黒に近い灰色一色 |
19 | See Me Feel Me | 油と水のサイケ風 |
20 | Tea and Theatre | 大きな屋敷のアニメーション |
5:15 の汽車の運転席の映像では,汽車が線路の左側を走っていた。イギリスでは,車は左側通行で,汽車も同じように左側通行だということを再確認した。日本の交通もイギリスからの輸入なので左側通行である。その他,国旗にユニオンジャックが入っている国は左側通行である。
今日の席は素晴らしかった。アリーナAブロックの中央である。ロジャーとピートの表情までよく分かる。今日の演奏で印象的だったのは,ロジャーもピートも実に嬉しそうだったことである。今までにない観客の反応のよさに喜んでいたように思えた。アリーナ席は歌詞を全部覚えていて歌える観客ばかりである。ピートが腕を回すたびに,「オーッ」とも「ワーッ」ともつかぬ歓声が上がった。
音響的には,武道館はよくない。音の反響が大きく,ウワンウワンといってしまう。さいたまの方が音的にはよかった。しかし,観客の盛り上がりに関しては武道館の方が上回っていた。アリーナ席だけではなく,武道館内の観客が総立ちである。しかも1曲目から最後まで。私は背が高いので,後ろの人が見えなくなってしまうため,静かな曲では屈んでいたために,腰が痛くなってしまった。しかし,今日は体を動かしていたので,昨日よりは足の疲れはなかった。
ピートは演奏時の音量やトーンをかなり気にしていて,演奏している最中にギターのボリュームだけでなく,横に置いてある卓や足元のエフェクターのツマミをいじるのだった。Amazing Journey の途中では,ピートが弟のサイモンに何か耳打ちをし,サイモンがギターを変えた。ピートがサイモンのギターの不調に気がついたのだろう。そのあたり,音をスタッフ任せにしないというこだわりを感じた。手作り感あふれる感じである。Eminence Front では,ロジャーがテレキャスターを持ち,リフを弾くのだが,音が小さい。下手ではないのだから,もう少しインパクトがあるくらい大きな音量でもよかったのではないだろうか。
ピートの弟であるサイモン・タウンゼントは,サイドギターである。しかし,それだけでなくコーラスも担当している。彼のコーラスは,The Who のサウンドにかなりの厚みを持たせている。後ろの方にいて,地味な存在ではあるが,彼がいなかったらあのサウンドは得られないだろう。ピートは気が向いたときにしかコーラスをしないが,サイモンは常にやっている。そして確実に仕事をしている。それが素晴らしい。感動を覚えた。
ドラムのザック・スターキーも素晴らしい。キース・ムーンが死んでから,ザ・フーは死んだと思ったが,彼のドラムはキースを思わせる。Wikipedia によれば,ザックはリンゴ・スターの息子である。しかし,リンゴはドラムを教えてくれなかったため,キースから学んだとある (ザック・スターキー - Wikipedia)。彼はキース・ムーン直伝のドラマーなのだ。彼の演奏が生き生きとしているのは,キースのマネをするのではなく,ザックのオリジナルのドラミングをしながらキースのスピリットを表現しているからではないだろうか。
お気に入りのギターを壊すこともなく,最後はロジャーとピートの2人のアコースティックナンバーで静かに終わった。大人のための The Who のライブであった。
ピートが去り際に "See you soon!" と言っていたので,また来日するかも知れない。
Behind Blue Eyes の歌詞 (Who | Behind Blue Eyes lyrics) の「can show through」が,日本語の「検証する」に聞こえてしかたがなかった。Limp Bizkit のカバーバージョンでは,さらに長く「None of my pain and woe can show through」が「ノロマっぷりを検証する」に聞こえるらしい (空耳アワーアップデート - 05年5月27日のデータ)。
2012年4月24日追記:
ロジャー・ダルトリー来日公演「Roger Daltrey performs the Who's Tommy and more」に行って来ました (nlog(n): Roger Daltrey 来日公演2012@東京国際フォーラムに行ってきた)。
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