nlog(n)

運転免許証の更新に行ってきた。道路交通法の改正により，記載事項が変わった。変わったのはいいがあまりにボロボロなので，思わず免許証を捨てそうになった。危ない危ない。

はじめに

先日はくたびれ儲けしたので (nlog(n): 運転免許証の更新に行ったが休みだった)，改めて出直すことにした。リベンジである。リベンジとはすなわち，個人的な恨みを晴らすための報復のことである (リベンジ - Wikipedia)。はい，すみません，普通に免許更新に行ってきただけです。でも，やり場のない怒りのようなものと脱力感が湧き上がったのは本当です。

更新のために向かったのは，埼玉県東入間警察署である。人間ではなく入間{いるま}である。

先日ホワイトボードがあった場所には案内板が置かれていた。

なんだかな免許証

限定付中型自動車免許

中型自動車とは，2007年6月2日に施行された道路交通法の一部改正により新設された区分である (中型自動車 - Wikipedia)。それまでは普通と大型の2種類だったが，普通・中型・大型の3種類となった。中型が新設された目的は「貨物自動車の事故防止を図るため」だそうだ。

2007年6月2日施行の道路交通法より

種類	普通自動車	中型自動車	大型自動車
受験資格	18 歳以上	20 歳以上・経験 2 年以上	21 歳以上・経験 3 年以上
車両総重量	5 t 未満	5 t 以上・11 t 未満	11 t 以上
最大積載量	3 t 未満	3 t 以上・6.5 t 未満	6.5 t 以上
乗車定員	10 人以下	11 人以上・29 人以下	30 人以上

全日本交通安全協会発行「交通の教則 [運転者用]」平成20年11月改定 p. 5

中型が導入されたのはいいが，同時に普通免許は範囲が狭くなってしまった。では今までの普通免許はどうなるのかというと，範囲としては中型の真ん中くらいまでの範囲はOKなので，種類は「中型」，条件がついて「中型車は中型車(8t)に限る」となったのである。

それにしても，この条件の文言は何とかならなかったのか。中型車に限るから中型免許なのであるから，「中型車は中型車に限る」は当たり前ではないか。条件として記述する意味がない。意味を持つのは「8t」のところだけである。しかも，この「8t」は，重量を示していることは明らかだが，車体総重量なのか最大積載量なのかは不明確である。したがって，「中型車は車体総重量8t未満に限る」とすべきだったのではないかと思うのだ。

警察署職員の話では，「今後，履歴書等に資格を書くときは，『中型自動車8t限定免許取得』などと書いてください」とのことだった。

空欄になった本籍地

新しい免許証には，本籍地欄があるものの，本籍地が書かれていなかった。これも道路交通法改正によるものだそうだ。

警視庁の運転免許本部免許管理課の話

• 「運転免許証に本籍地を記載しなくなったのは、警察庁が何年か前から国民の声を受け、ご本人が出自を知られたくないという方がけっこういらっしゃったということからです」
• 「個人的には表面に欄をつくる必要はないと思うのですが、まだ空欄の扱いについては特に触れられていません。今後、47都道府県で取り入れられていくなかで、将来的にはなくなる可能性もあるかと思います」
• 「それはやはり法律が変わり、免許証をつくる上のシステムが変わっているので、ICカードには記載することはできません。ご本人の意向によらず、本籍は空欄となってしまいます」

運転免許証の「本籍」が空欄になってる理由って？ | エキサイトニュース

何ということだ。本籍地欄は必ず「空欄でなければならない」というのだ。い，意味がない。単に邪魔なだけである。「法律に則って作ったらこうなっちゃいました」的なボロボロ感が満載である。十分な議論がなされていないまま法律が施行されてしまっている。現場の声が反映されていない。現場の声を聞くか，自分の運転免許証を見ればすぐに分かることなのに。改正したのは，運転免許証を持っていない人，あるいは持っているが見たことのない人なのではないか。運転手付きの車にしか乗らないとかそういう人である。

IC カード化

運転免許証には IC チップが埋め込まれていた。空欄になった本籍情報などは，この IC チップに記録されているのだ (運転免許証 - Wikipedia)。IC カード化されたのは2007年1月4日からである (ICカード免許証：警視庁)。しかし，このシステムもかなりボロボロである。

情報を引き出すには暗証番号が必要である。情報の種類によって，暗証番号が異なる。暗証番号は4桁の数字で，これを2組覚えなければならない。覚えなくてもいいかもしれないが，覚えない番号は「暗証番号」とは普通言わないのを知っているか。しかも，覚える負担が大きい割にご利益は少ない。

まず情報の分け方がおかしい。「暗証番号1」で引き出せる情報は，氏名，生年月日等，「暗証番号2」で引き出せるのは，本籍と顔写真である (暗証番号の設定の手引きより)。2種類に分けるとしても，セキュリティのレベルによって分けるとか，免許証に印刷されている情報かどうかで分けるとか，違反や持ち点情報で分けるとか，そういうことなら分からないでもないのだが，そうはなっていない。だいたい，暗証番号がなくても本人確認はできるのだ。顔写真があるからである。暗証番号には意味がない。

「電話会社，銀行，レンタル店などで，免許証を身分証明書として使う場合は，暗証番号の入力を求められることがあります」と言うことなので，どこで情報を見られるのか聞いてみたところ「情報を読み取る機械があるのは，運転免許センターか警察署のみです」との回答だった。つまり「電話会社，銀行，レンタル店」で入力を求められたとしても情報を読み取ることはできないらしい。それに何の意味があるのか。まぁ，これから出てくるのかもしれないが，店にとっては読取器を購入してまでやるメリットはない。見れば本人確認ができるのだから。

一度決めた暗証番号は，次の更新まで変更することができない。どこかで漏洩してしまっても，自己防衛できないのだ。もしかして，この理由から「キャッシュカードやクレジットカードと異なる番号にしてください」と勧めているのだろうか。ますます暗証番号の意味がない。

暗証番号を忘れてしまった場合はどうなのか? 説明書によると，「ご本人が免許証を持参して，運転免許センターか最寄の警察署においでいただいた場合だけ回答します」とある。なんと，暗証番号を教えてくれるのだ。暗証番号を再設定するのではなく教えてくれるシステムを見たのは初めてである。変更は何が何でもできないのだ。

講習会終了時に，免許証と一緒に暗証番号が印刷された紙をくれる。この紙は感熱紙のため「時間が経つと薄くなってしまうので，転記しておいてください」と注意があった。なるほど，暗証番号設定の手引きにも「暗証番号・本籍の控え欄」がある。そういえば，運転免許更新のお知らせのはがきにも備忘のための暗証番号記入欄があった。暗証番号が書いてある紙が増えるばかりである。

IC カードになったおかげで，PASMO や Suica と重ねることができなくなってしまった。ほとんど使わない IC なのに，重ねておくと PASMO が読み取られなくなってしまい，とても不便である。

おわりに

優良講習会の30分の中では，「高齢者の運転に注意」「高齢者マークは義務化されたがその後義務でなくなった」「飲酒の罰則が厳しくなった」などのいいことも言っていたのだが，免許証そのもののダメさ加減に上書きされたので，書く気が失せた。

2014年4月22日追記:
5年後の更新を行いました (nlog(n): 運転免許証の更新に行ってきた)。

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Posted by n at 2009-05-22 05:47 | Edit | Comments (4) | Trackback(0)