10分で1000円という理髪店に行ってみた。普通の理髪店との大きな違いはコンサルタント料が含まれるかどうかであった。
最近増えている安い理髪店がある。「10分で1000円」というのが売り文句である。10分カットまたは10分間カットと呼ばれている (10分間カット - Wikipedia)。名前の通り,やってくれることはカットのみで,かかる時間は10分,そして料金は1000円というものである。
その10分カットに行ってきた。私は男なので,以下は男性の場合である。
普通の理髪店は,カット,シャンプー,軽くシャンプー,顔剃り,襟足剃り,軽く肩マッサージ,細かい仕上げカット,スタイリングの順で行われる。10分カットでは,カット以外の工程が全て省略される。シャンプーがないかわりに,掃除機を使って切った髪の毛を吸い取るのである。
10分カットに行く前の大きな疑問は「10分で1000円ということは,10分以上かかったら料金が2000円に跳ね上がるのだろうか?」ということであった。ダブル定額みたいな,そんなシステムかと。しかし,それはなかった。確認したところ「10分以上かかっても1000円」とのだった。「10分」というのは,かかる時間の目安であって,携帯電話の料金のように厳密なものではないとのこと。また,10分以上経過しても,そこで中途半端なまま店を追い出されるということもないとのことだった。私が行った店では,1000円札を券売機に入れてカードを購入するようになっていて,順番が来たらそのカードを店員に渡すシステムになっていた。こうすることで,「1000円はかかるが,それ以上はかからない」ということが客にも分かるようになっている。お店にも確実に1000円が入るので万々歳である。
さて実は,上で述べた普通の理髪店での工程には,目に見えない工程が省略されている。10分カットに行ってみて,初めてそのことが分かった。10分カットでは,最初に「今日はどのようにしますか?」と聞かれる。これは普通の理髪店でも同じである。違うのは,「注文は客の指示のみ」という点である。これでは分かりにくいと思うので具体的に言うと,「耳は出して,横は短め,後ろは刈上げてください」などと指示するのだ。しかし,これもまた普通の理髪店と同じである。
世間話があるかないか? それはどちらもある。もっとも,しなくてもいいものでもあるのだが。
大きく違うのは,「相談ができるかできないか」なのである。普通の理髪店では,途中まで切ってみて「う〜ん,どこか想像していたのと違うなあ」「それでは,こうしてはどうでしょう?」「じゃあ,それお願いします」という会話が可能なのである。つまりコンサルトしてくれるということなのだ。もちろん髪の毛であるから,すでに切ってしまったものを元に戻すことはできないが,少しずつ軌道修正して好みのスタイルにしていくことができるのである。ところが,10分カットではこれがない。指示が「客→理髪師」の一方通行なのである。
もちろん,10分カットの理髪師もロボットではないので,多少の融通はきく。私の場合,切っている最中に「もう少し横を少なめにして,それと,ここに角ができないようにしてもらえます?」と言ってみたところ,その通りにしてくれた。一通り終わった後での変更は利かないが,途中の早い段階であればいけるのだ。
私の場合,かかった時間は15分であった。それで1000円。顔剃りがないのは惜しいが,シャンプーが合わなくて痒くなったらどうしようなどという心配もないので,そういうものだと割り切ってしまえばそれでいい。10分カットに行ったことで,普通の理髪店の意義も分かり,有意義だった。つまり,普通の理髪店に行ったときは,コンサルトしてもらわなければ損ということだ。
髪型を大きく変えてイメージチェンジしてみたいのなら,普通の理髪店へ。いつもの髪型のまま短くしたいのなら,10分カットへ。そういう使い分けがいいのではなかろうか。
※料金については事前にお店にご確認ください。著者は責任が持てません。
10分カットの多くは,「Sマーク」加盟店ではない。「Sマーク」とは,厚生労働省が決めた「厚生労働省認可の標準営業約款に従って営業しているお店の表示であり、「安心、清潔、技術」を約束するマーク」のこと
である (Sマークとは何ぞや−高級官僚・公務員の天下り先ではとの疑問 英語と詩と写真そして世の中の矛盾など/ウェブリブログ)。全国生活衛生営業指導センターというところが登録店の管理を行っている ( 安心・安全への取組み(Sマーク))。要するに天下り先である。
「Sマーク」への登録には登録料や更新料がかかったりするので,登録していない普通の理髪店もある。親しくなった理髪師が言うには「Sマークに登録することは地域の組合に加入することであり,組合に入ると価格設定を他の組合員と大きく違うものにはしづらい」とのことだった。なかなか難しいものである。
Posted by n at 2009-10-07 10:09 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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