水曜どうでしょうが面白いのは,本編がメイキングだからである。あるいは「本編がない」とも言える。「メイキングしかない番組」というのは他にない。
水曜どうでしょうは,北海道テレビ放送が制作するバラエティ番組である (水曜どうでしょう - Wikipedia)。北海道ローカルの番組でありながら,現在では全国的にローカル放送されている。全国的に認知されたのはインターネット配信による効果も大きい (nlog(n): impress TV と水曜どうでしょう)。
水曜どうでしょうは,鈴井貴之と大泉洋の2人の出演陣と,藤村忠寿と嬉野雅道の2人のディレクター陣の4名が織り成す人間模様を,旅番組と称して放送する番組である。当初,出演者は2人のキャストに焦点が絞られていたが,番組を続けていくうちに少しずつスタッフによる声の出演の割合が増加したため,出演者はほぼ3人ということになっている。声の出演は藤村Dがメインである。嬉野Dはほとんどしゃべらないが,独特のカメラワークや撮影中に寝ることによるハプニング的カメラワークによりスパイスを効かせている。
水曜どうでしょうは,ハプニング待ちの番組である。旅の途中でのハプニングをつぶさにとらえ,出し惜しみせずに放送していく。鈴井貴之と大泉洋は,根が演劇役者であるため,計画通りのリアクションではオーバー過ぎて面白みに欠ける。そこで,思いがけないハプニングに対する自然なリアクションを入れる必要があるのだ。
水曜どうでしょうは,ハプニングだけでなく,ハプニングに至るまでのダラダラした空気までも番組として流していくのだが,これが思いのほか面白い。なぜなら,それはメイキングになっているからである。普通の番組は,本番という「舞台」を放映し,人気が出れば「舞台裏」をメイキングとして放映するようになっている。ところが,水曜どうでしょうは「舞台」がなく,「すべてが舞台裏」なのである。これは番組開始時に計画されていた構成ではなく,「作っている間にそうなってしまった」ものなのだが,スタイルとしては他に類を見ない斬新なものとなったのだった。
この「番組自体がメイキング」であることを確信したのは,ドラバラ鈴井の巣の DVD を見てからである。DVD は,本編としてのドラマが収録されている「ドラディスク」と,メイキングが収録されているバラエティとしての「バラディスク」の2枚で構成されている。バラディスクのスタッフは水曜どうでしょうとは異なるが,そのテイストは水曜どうでしょうと似た仕上がりになっていて,本編よりも面白いのだ。
実際のところ,水曜どうでしょうにはメイキング映像がない。唯一あるのは「四国 R-14」で,これは脚本のあるドラマである。
水曜どうでしょうは,「本編なし,メイキングのみ」あるいは「メイキングが本編」という新しいスタイルを確立した画期的な番組なのである。
Posted by n at 2009-10-14 04:58 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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