気象庁の潮位データから今回のチリ地震を振り返る。
日本の裏側のチリでマグニチュード 8.6 の大地震が起きたのが日本時間の2010年2月27日15時34分 (2010年 チリ中部地震 – 東京大学地震研究所),そこから22時間から24時間かけて津波が日本に届いた。場所は チリ地震 (2010年) - Wikipedia に詳しい。
波の高さが予想より大きかったかどうかは別として,実際のデータから津波の様子を観察することができる。気象庁が過去1週間の潮位データを公開しているので,それを見てみることにする。気象庁の潮位データについては,個別には 気象庁 | 潮位観測情報 からアクセスできるが,全体を概観することはできない。例えば,今回の津波によってどこの潮位変動が最大だったのかを知るには,1つ1つを丹念に開いて見なければならない。実際のところそんなことはやっていられないので,別のソースから引っ張ってくる必要がある。
毎日新聞のまとめによれば,津波の最大の高さを記録したのは,岩手県・久慈港と高知県・須崎港でその高さは 1.2 m となっている (津波:最大1.2メートル観測 66万世帯に避難要請 - 毎日jp(毎日新聞))。
岩手県の久慈[港湾局]の潮位の実況 (2月28日) を見ると (気象庁 | 各地点潮位観測情報: 久慈[港湾局]),潮位偏差は 1.2 m を超えており,そのときに満潮なので,これを足しあわせた潮位は高潮「警報」基準を超えている。津波による潮位の変動周期を見ると,3時間内に山が10個あることから,およそ20分の周期で上がり下がりを繰り返していることが分かる。
最高潮位偏差を記録したもう1つの観測点は高知県の須崎港である (気象庁 | 各地点潮位観測情報: 須崎[港湾局])。潮位偏差のグラフを見ると,確かに 1.2 m を超えている。こちらの潮位変動は3時間で5回程度の上下だから,周期は40分で,久慈港の半分になっている。場所が違うだけで2倍の周期差があるというのは興味深い現象である。
チリ地震で起きた津波が日本に届くというのは,遮るものが間にないという単純な理由からである。ニュースな英語 - goo辞書 からリンクされている BBC のニュース記事にある地図を見ると,それがひと目で分かる (BBC News - Map: Chile quake tsunami)。この地図の右下を見ると「Source: NOAA」と書いてある。NOAA - National Oceanic and Atmospheric Administration のサイトには NOAA Center for Tsunami Research - Tsunami Event - February 27, 2010 Chile に今回のチリ地震を特集したページがある。
Tsunami Travel Times (Pacific Ocean) Viewer では,歴史的な大津波に関する津波の到達時間を見ることができるようになっている。今回のチリ地震に近いチリの Valparaiso をクリックすると,日本の岩手県沿岸には22時間で到達していることが分かる。Valparaiso は1960年のチリ地震の震源地である (チリ地震 - Wikipedia)。逆に,日本の Ofunato 大船渡をクリックすると,22時間でチリに津波が到達するのが分かる。
さて,チリと日本の間は海を隔てて約 17000 km の距離がある。そこを22時間かけて津波がやってくるということは,津波の速さは時速 700 km 以上にもなるということで,これは新幹線よりもずっと速い。海中を伝わる縦波の速さだからである。縦波であるため,水深の深い外洋では津波の大きさは見た目では分からない。沿岸の水深が浅いところに届くとこれが高さに変換されて速度も遅くなり,目に見える「津波」となるのである (津波 - Wikipedia)。つまり,沿岸にやってくる「大津波」は,あの大きさの波がはるばるチリからやってくるのではなく,それよりもずっと速い速度で伝わってきたものが,陸地の近くで大きい姿になっているのである。
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