竹内郁雄教授の最終講義が東大であるというので行ってきた。その奥義は「研究は楽しく」であった。
竹内郁雄教授の最終講義が3月3日にあるというので (竹内郁雄 教授 最終講義のご案内 - qwik.jp/asakusarb),これを逃すと絶対に後悔すると思い,無理矢理に休暇をとって出かけることにした。場所は東京大学本郷キャンパスの工学部2号館1階213講義室。上の写真にある入口は建物の2階で,この2階にも「213」という部屋があってややこしい。2階の213は懇親会場なのだった。
受付で渡されたのは,nue プロジェクトのシール,レジュメ,それと何も書いてない紙だった。
司会の石川教授によれば「最終講義というのは先生の思いのたけを話す場」であるとのこと。講義と言うのはまさにそうあるべきで,この紹介は素晴らしかった。
最終講義の題目は「研究・開発は楽しく」。この最終講義は,決して楽ではない研究や開発を如何にして楽しめるものにするかというアイデアがつまったものだった。その方法の1つは,プロジェクトには元気の出る名前をつけるべきで,いい名前があるとそれに向けてメンバの意識が統一され活力にもなるとのこと。名前は言葉遊びでよく,「nue」「TAO」などの名前についての思いが語られた。話を聞きながら,「『最終講義』というのは,その道を極めた達人の『最終奥義』披露の場でもあるのではないか」などと思った。この言葉遊びはもちろん最終講義の影響である。
講義は2台のパソコンを使って2画面のスライドで行われた。狙いは「残像効果」だが,操作が難しいという欠点がある。
印象に残った言葉を意訳入りで以下に紹介する。
レクレーションは 100 % ルールで
Google がやっている 20 % ルールのさきがけ?
ジョークも全力で
エイプリルフールネタ (e^{π√163} は整数) や go to 命令に代わる come from 命令(!!)など。come from 命令は,ダイクストラによる「goto 文撲滅運動」(エドガー・ダイクストラ - Wikipedia) のまわりで盛んに出されたジョーク論文の1つにあるという。「自己矛盾に陥っていないので掲載した」というエディタの素晴らしさにも触れていた。
ドキュメントをしっかりすると数年がかりでもプログラムは完成する
これは仕様をしっかり決めてドキュメント化しておくことが大切で,実装は実は後回しでもいいということでもあろうかと思う。仕様は変わらないが,実装はその時々で (心境によっても) 変わり得るからだ。
人知れず地べたを這う努力をしなければならない
Lisp の仙人であっても苦しいときは苦しい。しかし,それを楽しみに変えるのは考え方次第で可能だというのだ。
「分野をまたぐと上向きの矢印ができる」上の写真の左のスライドは,それぞれ異なる分野を研究している建物をつなぐ橋の上に立っているところを撮影したもので,境目には細い隙間がある。この分野の間を,文字通り「またいで立つ」と,隙間と股で矢印が出来るというものである。
講義後,受付で渡された白紙の使い方の説明があった。「2つ折りにして切り離し,メッセージを同じ内容で2枚書く。1枚を渡して1枚を自分に持っておく。これが懇親会でのIDになる。同一の内容があった場合は,そのようなオリジナリティのないものは破棄される (笑)」。
竹内先生の書いたものに関しては,PDF 化して公開する予定があるとのこと。これは楽しみ。
当日の雰囲気は,twitter なら #nue で検索すると少し分かる (Twitter / Search - #nue)。講義で話のあったプログラミングと Taoism についてはスラッシュドットで読むことができる (スラッシュドットジャパン: 竹内 郁雄氏からのコメント - Binary Day 2008)。
Posted by n at 2010-03-04 23:40 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
Master Archive Index
Total Entry Count: 1957