豆腐屋のラッパの音が聞こえてきた。懐かしい響きである。金ダライを片手に出てみると,そこには現代風になった豆腐屋の移動販売の姿があった。タライを用意する必要はなくなっていた。
夕暮れ時,遠くからラッパの音が聞こえてきた。豆腐屋のラッパである。
昭和の時代,豆腐屋は自転車の後ろに大きな木箱を乗せて,中に豆腐を入れて売りに来ていた。ちょうど夕飯の支度をしているくらいの夕暮れ時である。合図は「プー,ペー」と鳴るラッパである。ラッパの音が聞こえると,お母さんたちやお遣いのこどもたちが金ダライやボウルを持って出てきた。自転車の後ろの箱には水がはってあった。豆腐屋のおじさんは,水に沈んでいる豆腐をそっとすくって,持っていった金ダライに入れてくれたのである。
そのラッパの音が聞こえてきた。手には,昔ながらの礼儀として金ダライを持って外に出た。そこにいたのは自転車ではなく自動車で,ラッパの音はスピーカーから流されていた。
昭和 | 現代 | |
乗り物 | 自転車 | 自動車 |
入れ物 | 木箱 | 冷蔵庫 |
知らせ方 | ラッパを吹く | 録音したラッパの音をスピーカーで流す |
すべてが変わっていた。昔と変わらないのは,夕暮れ時だということと,ラッパの音だけである。ラッパそのものはすでになく,その音だけが過去の記憶を伝えていた。
昔のように豆腐をダイレクトに取り出してくるわけではなく,パック詰めされた豆腐があるだけなので,金ダライは不要。豆腐はスーパーのレジ袋に入れてくれるのだった。
ノスタルジーを除外して冷静に考えれば,豆腐屋の自転車というのは,「移動販売」のひとつの形だったということだ。持ち歩く量,小道への入りやすさなどから昔は自転車が最適だったのだろう。もう少し量が多いものの場合はリヤカーが使われた。石焼きいも屋,竿だけ屋,ちり紙交換はリヤカーが使われた。自動車に代わってから久しい。夜鳴きそばのチャルメラも聞くことはなくなった。
納豆売りも移動販売があったようだが,その存在は ひみつのアッコちゃん のエンディングテーマで知るのみである。作詞は井上ひさし・山元護久,作曲は小林亜星,歌は水森亜土である (YouTube - ひみつのアッコちゃん第1期ED すきすきソング)。今聞いてみると,オルガンのロックが炸裂している。ディープパープルみたい。
Posted by n at 2010-07-02 23:45 | Edit | Comments (2) | Trackback(0)
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もう何年も前ですが ふじみ野に住んでる頃 冬になると 青森からやってくる夜鳴きそばが美味しかった!! どんぶり持って買いに出る! あの懐かしさ・・・ 涙が出るぜw☆w
Posted by: maro助 at July 04, 2010 18:37maro助 さん
Posted by: n at July 06, 2010 06:02どんぶりを持って行くとは風流ですな。
夜鳴きそばならぬ夜泣きそばwww