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misc 大原照子「少ないモノでゆたかに暮らす」を読んでみたんだがレビュー

大原照子著の「少ないモノでゆたかに暮らす」を読んだ。身の回りのモノを最小限にしたライフスタイルの例が書かれている。著者と読者の環境や生活スタイルがあまりにも違う場合,参考にできることは少ない。

■ ■ ■

私の部屋はかなりごちゃごちゃしていて片付いていない。若い頃はいくら散らかっていても,自分の記憶を頼りに見つけたいものを探し当てることができた。難なくできた。しかし,記憶力の低下とともに,それが困難になりつつある。身の回りのものを少なくするコツは次の2点である。

  • 不要なものを捨てる
  • 不要なものを増やさない

これはコツでも何でもなく,実に当たり前のことである。問題は「不要なもの」という部分である。自分では「不要」だと思えないから捨てられないのだから,「今まで必要だと思っていたもの」→「実は不要だと思えるようになった」という意識改革が必要なのである。必要なのは「物」ではなく「意識」なのだ (nlog(n): 捨てられないのには理由がある)。

大原照子の本「少ないモノでゆたかに暮らす」

さて,そんな中,大原照子{おおはら・しょうこ}著の「少ないモノでゆたかに暮らす」を読んだ。できるだけ少ないものだけで生活するためのヒントが得られればと思ったからである。

得られたヒント

現在の持ち物を処分するためのヒントは次の通り (pp. 179-188)。

  1. 三つのジャンル別に処分していく (調理器具の日,食器の日,衣類の日)
  2. 同じジャンルに属すもの (例えば調理器具) を,すべてが見渡せるようにに広げ,本当に必要なものだけを選ぶ

処分する品は,単にゴミに出すということはしないという。まずは知人で使ってもらえる人に譲る。引き取り手のないものはバザーに出す。バザーで売れ残ったものはリサイクルにまわす。リサイクルできないものはゴミとして捨てる。のように段階を踏んでいるようだ。

ここでもうひとつ参考にしたいことは,この記事の最初で「不要なものを捨てる」「不要なものを増やさない」をコツとして書いたが,少し違っていたことである。「不要なものを捨てる」は「不要なものは譲る」で,「不要なものを増やさない」ではなく「持つものは一定にすることだけを考え,古いものは新しいものに交換していく」だった。悪く読めば「要らなくなったら他人に押し付ける」だが,その他人が喜んで貰っていくのであれば「押し付ける」ということにはならないだろう。ゴミにするよりもずっとよい。

得られなかったもの

結局のところ,私とこの本の著者は,できること,家庭,大切なもの,生き方などのすべての点で大きく違うため,同じようにはできないことが分かったのだった。もちろん私にとって合わないというだけで,この本がダメなわけでも,ましてや本の著者の生活スタイルがダメなわけでもない。

まず大きく違うのは,大原照子はスーパーウーマンという点である。料理本など,著作は100作以上。本を1冊書くためには相当な労力を必要とする。普通に生活している中ではできないことだ。つまり,この人は物事の処理能力が非常に高いのである。雑多なことを先延ばしせずにその場で処理できれば,処理待ちで積もるものが増えないのは当然のことと言えよう。

生活環境もかなり特異である。1974年の43歳のときに,スーツケース1つで単身英国に飛び4年間にわたって留学している。このようなことができるというのは,どのような環境なのだろうか。本の中に書かれている家庭環境は,厳しかった父親や母親はもうおらず,3人姉妹の真ん中で育ち,自分の料理研究のチーフアシスタントと結婚した息子がいることである。しかし,それ以上は書かれていない。不思議なことに旦那については一言も触れられていない。書かないのか書けないのか不明である。この本にあるのは,ひとり暮らしだからこそできるシンプルライフでもあるのだ。

そして,なぜそんなにもすっきりと生活できているのかと言えば,実際のところ,この本の著者はもともと整理するのが好きで,しかも日常的にやっているからということなのである。いつもやっているので,それ以上には散らかったりしないという,ごく当たり前のことだったのである。

私にとってモノをたくさん持たない暮らしは,最近に始まったことではなく,ずっと若い頃からそんな暮らしでした。

その理由は,きっと性格的に整理整頓が好きだからかなと思っています。いつでもどんな環境に暮らしていても,ちょっとしたヒマを見つけては,持ち物の整理をしているのですから,我ながら笑ってしまいます。

大原 照子「少ないモノでゆたかに暮らす (幻冬舎文庫)」 p. 199

この「ごく当たり前のこと」が真実であることは疑いようがない。習慣という日頃の積み重ねが人生を大きく変えることになるのだ。しかし,どの習慣を取り入れるかはよく考えなければならないことも確かで,それが難しいのだ (nlog(n): 新しい習慣を取り入れると別の何かが外れていく)。

まとめ

生活習慣の違う人の整理術を知っても,役に立つことはほとんどない。残念ながら大原照子のライフスタイルは私のものとは違いすぎた。自分と似た環境で,似た生活をしており,しかも性格も似ているという人が「あんな部屋がこうなった。そしてずっと続いている」という本を出してくれれば,それは大いに役に立つのではなかろうかと思う。その点で著者のプロフィールというのは重要である。参考にできるかどうかの判断にできるからである。著者の華麗なプロフィールは書かれているが,生活臭のあるプロフィールが書かれていないのが残念だ。

唯一同じ点があるとすれば,それは「老い」である。何とかしないと何ともならなくなりそうである。…だけどだってだってなんだもん。まあ,すぐにそうも言っていられなくなるだろうがな→自分。

2015年1月31日追記: 大原照子さんは2015年1月23日に逝去されたそうです。お悔やみ申し上げます。

大原 照子さん(おおはら・しょうこ=料理研究家)23日、脳出血のため死去、87歳。宇都宮市生まれ。葬儀は近親者で行った。喪主は長男千晴(ちはる)氏。 60年代から料理研究家として活躍し、英国流の暮らし方などを紹介した。著作に「少ないモノでゆたかに暮らす」など。

東京新聞:大原 照子さん 料理研究家:おくやみ(TOKYO Web)

Posted by n at 2010-12-10 23:54 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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