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Psycho 愛は樹の幹のように - 心の隙間

人生は1本の樹である。樹にはスキマがある。人生というのは,このスキマを埋める作業なのである。

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人生は1本の樹である。この樹は愛でできている。樹の形は人によって違う。スキマのある場所も違う。男が持っている樹の形と女が持っている樹の形は本質的に違う。男と女が惹かれあうのはこのためである。うまい男女の組み合わせというのは,お互いのスキマを埋めあう関係になっているのである。

つきあっていた恋人と別れたりすると,「心にポッカリ穴が空いたような」気持ちになる。これは,異性がいることで埋まっていた心の穴が,いなくなったことで,埋まらなくなってしまったために起きることである。異性と付き合わずに生きていたなら,その心の穴の存在を,自分は知らなかったかも知れない。異性と付き合うことで心の穴が埋まった時も,まだその存在を知らなかったかも知れない。しかし,一旦その穴が埋まって,その後で埋まっていたものがなくなると,そこにあった穴の存在が特別に意識されるようになるのである。

「穴の存在」というのは不思議な表現だ。穴というのは,ものの「存在していない」部分を指すからだ。ドーナツの穴は,穴だけでは存在しない。だからといって周りがあるから穴が「存在している」というのも正確ではない。「穴の非存在」では逆に穴がないことになっていまうし,「穴の認識」と言うと認識しなければ存在しないように思えてしまうしで,上手くいかない。自分が認識していなくても,落とし穴に落ちることはあるからである。あーもう。仕方ないので「穴の存在」でよいことにする。

この心のスキマは愛で満たされていない場所のことである。愛は教えてもらって始めて知ることができるものである (nlog(n): 愛は樹の幹のように - 愛は学ぶもの)。生まれてきて最初に知るのは親の愛である。子どもは心のスキマを親の愛で埋めてもらいながら成長していく。

思春期になると,子どもは親から離れ,異性に愛を求めるようになる。自分の心のスキマを埋めてくれる人にトキメイて,その人を好きになる。上手くいって付き合うようになれば,その人といるだけで心が満たされるのを感じることができる。

異性とつきあっても,すぐに別れてしまい,何度やっても長続きしない人がいる。私がそうだった。最初は上手くいっているのに,だんだん関係がギクシャクしてきて,少しずつ心が離れていく。別れる原因は色々で,相手が原因のこともある。しかし,根本的な原因が自分にあることがあるのだ。それは以下のような理由である。

自分の心のスキマを埋めるため,無意識の内にそこを埋めてくれそうな人を求める。これは誰でもそうなのだから,問題ない。しかし,求めるものが親の愛だった場合に問題が生じる。自分の心にスキマがあるとき,最初にそれを埋めてくれていたのは親だったというのは,上述の通りである。しかし,親が埋められないことがある。親も同じ場所に心のスキマがある場合である。もともと親が持っていない愛は,子どもに与えることができない。親の心のスキマは子どもにそのまま同じ穴を作ることになるのである。それは仕方のないことではある。知らない愛は与えられない,それは誰でもそうなのだ。父母が上手くいっている夫婦の場合,母親のスキマは父親が埋めるし,父親に足りないところは母親が付け加えるので,子どもにはどちらかの愛が受け継がれる。しかし,両親の関係が機能不全だったり,片方の親が不在だったりすると,そこには大きな穴が空いたままになる。

思春期になり,その後に成人して,異性を求めるときに,心のスキマが大きすぎる場合,親と同質の異性を求めてしまうことがある。しかし,それは不幸な結果だけを招くことになる。

「自分の心にはスキマがあって,親に埋めてもらいたかったが叶わなかった」ということを感じているとしよう。ここを出発点とすると,「解決できそうな」方法には2通りあることが分かる。ひとつは,心のスキマを直接埋めてくれる相手を探すことである。この場合の探す相手は,親が持っていなかった愛を持っている人である。つまり,親とは大きく違う性質を持っている人ということになる。そういう人が見つかった場合,その恋愛は上手くいく可能性が高い。もうひとつの解決法は,心のスキマを埋めてくれるはずだった親のような相手を探すことである。もともとは親が与えてくれるはずだったものなのだから,親が埋めてくれれば根本的に問題が解決するからである。この場合の探す相手は,親と同じようなタイプの人間になる。そういう人が見つかって,付き合うことになったとする。付き合いとしては,最初は順調で,このままずっと続くように感じられる。自分は親とは長年の付き合いがあるので,関係を保つ方法を熟知しているからだ。しかし,恋愛の相手との関係は徐々に崩れていく。なぜなら,相手もまた自分の親と場所に心のスキマがあるからなのである。親と同質ということは,心のスキマの場所も同一なのだ。相手はいつまで経っても,私の心のスキマを埋めてはくれない。相手にとっても,その相手の心のスキマを私が埋めることはできない。相手もまた,心の親を探しているうちに,私を見つけたからなのである。したがって,この場合,当初の「親に埋めてもらいたかった穴を埋める」という目的は永遠に叶うことがない。そして,最適だと思った相手との上手くいく可能性もゼロである。

恋愛が長続きしない場合,それは相手の選び方に失敗しているのだ。親と似ていないタイプを最初から排除してしまっているからだ。親と似たタイプだけを探しているので,そこには心のスキマを埋めてくれる人は一人もいないのである。

難しいのは,親と似た人とは,最初のうちはとても上手く行ってしまうということなのだ。逆に,親と似ていない人とは,今まで付き合ったことがないタイプなだけに,上手くいくかどうかは未知なのである。親と似たタイプを見つけても期待でドキドキするし,全く違うタイプを見つけても未知の不安でドキドキする。このドキドキがどちらのドキドキなのかは分からないのだ。

親と違うタイプの中から探せばよいということが分かったからといって,それだけで恋愛が上手くいったら世の中とても簡単である。親と違うからといって,価値観までもが違う相手とは上手くいかないのは明らかだ。単に違えばいいという問題ではない。自分と価値観は同じだが,心のスキマが違う相手を探さなければならない。だから難しいのだ。

私は幸いにして結婚をする相手と巡り会えたが,その相手が,自分の心のスキマを埋めてくれているのか,親とは違う心のスキマを持っているのか,それは未だに分からない。

Posted by n at 2011-02-19 23:15 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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