印刷用表示へ切り替え 通常表示へ切り替え 更新履歴を表示 更新履歴を隠す
English 英語のここが分からない - 分解するのが当たり前

英語には日本語にない発想がある。そのひとつに,英語では,1つのものを性質ごとに分解して,分解した1つ1つを別のもののように扱うというものがある。

■ ■ ■

主要部分は前半にあるが,言いたいことは後半にあったりする

英語には,日本語にない発想の表現がある。例えば次の文である。

203. Apparently, there’s no law that actually prevents you from steering a car with your feet.
203. 明らかに,足で車を運転するのを現実に禁止する法律はない。

旺文社「英検Pass単熟語準1級」

直訳するなら「あなたを,足を使った車の運転から実際に妨げるような無し法律がある。」である。ここでの「運転」とはハンドル操作のことを意味していて,アクセルやブレーキのことではない。「you」は「あなた」という個人を指しているのではなく,より一般的な「ある人」を意味している。この日本語は,英語の意味をできるだけ保ったまま,日本語にした中間表現なので,実際には日本語とは程遠い (こういう中間表現が実は必要ではないかと思っているのだが,実現するのが難しい)。

日本語にない発想というのはどんなものかと言えば,「あなた」と「運転」と「足」があるひとりの人から発生していることであるにも関わらず,あたかも別のものであるように表現されている点である。具体的には次のようなことである。まず「あなたを妨害する法律はない」と言ってしまった後で,あなたの何を妨げるのかと言えば「自分が車を運転すること」と言っている。「あなたを妨害する」と言えば,日本語なら普通は「他人」が来るので,「自分がする車の運転」が来たりなんかするとビックリする。つまり「自分の運転」が「他人の運転」のように扱われている点である。

さらに,それに続くのはどんな運転かと言えば「足を使った」運転だということで,これも日本語の発想にはないため,聞いている方は混乱するのである。ほとんどの英文は,途中でちょん切られても最低限の意味は通じるような語順になっているので,そのように読むと「あなたの運転を妨害する法律はない」となり,そりゃそうだろう当たり前と思うが,その後ろに「足を使った運転なんだけどね」と続くので,当たり前だが,当たり前さ加減が違うので混乱してしまうのだ。何を混乱するのか詳しく説明すると,「足がダメなら手を使った運転はどうなのか?」と考えると,妨害する法律はないわけで当たり前。そうなると,話し手が一番言いたいことは実は「足を使った運転」ということということが分かる。しかし,その一番言いたいことが,省略されてしまうかも知れない「付け足し」部分に書かれているので,混乱するのだ。

まとめると,「途中でちょん切られても最低限のことは通じるが,話し手の一番伝えたいことはちょん切られてなくなってしまうかもしれない部分にある」ということなのである。ここが非常に難しい。

分解・分離の例

1つのものを分解して,それぞれを分離させて考える例をあげる。

300. His conscience would never allow him to do such a thing.
300. 良心に従えば,彼は決してこのようなことはしないだろう。

旺文社「英検Pass単熟語準1級」

「彼の良心」が「彼」に許可を与えないようにしている。「彼の良心」は「彼」とは別のものなのである。

極めつけは次の例である。

263. Very few slaves were ever able to buy their way out of bondage.
263. 奴隷の身分からお金を払って抜け出られたものは,ほとんどいなかった。

旺文社「英検Pass単熟語準1級」

「bondage」が「奴隷の身分」で,「slave」が「奴隷」。うへぇ。分離が細かすぎてついていけない。放っておくと「昨日のお前と今日のお前は違う」などと言い出しそうである。どこまでを分離して考えて,どこまでを同一視するのかの境目が難しい。

最後の例。

360. Her best facial feature is her pretty little nose.
360. 彼女の顔の一番の特徴は,かわいらしい小さな鼻である。

旺文社「英検Pass単熟語準1級」

「彼女」と「顔の特徴」と「鼻」はそれぞれ別のものとしてとらえる。分解・分離が当たり前なので,所有格をいちいちつけているのだ。

それぞれの名詞に,いちいち「彼の」「彼女の」をつける理由は,「分解・分離が当たり前」だからだったのである。

分解するという考え方

ものを分解して,それぞれの部品を独立したものとして考えるというのは,言葉の構成だけでなく,欧米人の基本的な考え方として根づいているもののようだ。物質の成り立ちについての考え方は,古代中国,古代インド,古代ギリシャでそれほど違うものではないのに (元素 - Wikipedia),どこかの時点で「分解・分離」という考え方をし始めているようなのだ。

2009年8月24日放送の日本テレビのバラエティ番組 世界まる見え!テレビ特捜部 - こんなに違う!?東洋と西洋 が興味深い (動画: YouTube - 東洋人?西洋人?おもしろ心理テスト 世界まる見え!テレビ特捜部)。一般の人へのアンケート結果があり,東洋と西洋での根本的な考え方の違いが現れている。花の絵を分類する際に,東洋人は全体としての印象を重視し,西洋人は花びらと茎と葉に分けてそれぞれの共通点について考えるというのだ (東洋と西洋の考え方の違いにビックリ! - 日伊文化交流協会)。この番組はあくまでバラエティであるので面白おかしく描かれてはいるが,「東洋的」「西洋的」な考え方としては,言い当てているように思える。

上で引用した「英検Pass単熟語準1級」には以下の新版が出ている。

Posted by n at 2011-05-09 23:22 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
Trackbacks

  • 「手違いで複数トラックバックを送ってしまった!」という場合でも気にしないでください (重複分はこちらで勝手に削除させていただきます)
  • タイムアウトエラーは,こちらのサーバの処理能力不足が原因です (詳細は トラックバック送信時のエラー をご覧ください)
  • トラックバックする記事には,この記事へのリンクを含めてください(詳細は 迷惑トラックバック対策 をご覧ください)
Comments
Post a comment
  • 電子メールアドレスは必須ですが,表示されません (気になる場合は「メールアドレスのような」文字列でもOKです)
  • URL を入力した場合はリンクが張られます
  • コメント欄内ではタグは使えません
  • コメント欄内に URL を記入した場合は自動的にリンクに変換されます
  • コメント欄内の改行はそのまま改行となります
  • 「Confirmation Code」に表示されている数字を入力してください (迷惑コメント対策です)


(必須, 表示されます)


(必須, 表示されません)


(任意, リンクされます)


Confirmation Code (必須)


Remember info (R)?