ブログらしいブログ記事とは何なのか考える。naoya 氏のブログ記事はよいお手本になる。
実際、やる前は「あのバグ直すのめんどくさいなー、あそこのコード汚いし・・・」とか思いつつなんとかようやく Emacs を立ち上げてみたら、バグを直す前に回帰テストを書く気になって、テストを書いてバグを直したらテストがあるからというのでリファクタリングを始めて、コードが少しずつ綺麗になっていって、気づいたらカバレッジを100%にして、コード全体をプラガブルなアーキテクチャで置き換えていた・・・な、なにが起こったかわからねーが作業してたら面白くなってついカッとなってやってしまった今は反省していない ─ こんなことが良く起こるし、そんな人は珍しくないはず。
自分のことを考えてみると,このようなフロー状態になるのは年に1回か2回で,普段は実に注意力散漫なのが残念だ。勤務先では死んだ魚のような目をして義務的に仕事をしていて,「オレの人生,こんなことでいいのか?」と考える暇もないほど気が散っているのが日常になっている (泣笑)。
さて,上は伊藤直也氏のブログからの引用である。その記事では「やる気」について,naoya 氏の経験を踏まえた個人の考えが述べられている。
もともと,ブログというのは個人的な経験をウェブで公開しながら記録 (ログ) していくというものである。個人的な記録であるからこそ,一般論にはない一般性がそこにはあるのだ。一般論というのは,一般的に当てはまりそうなことでありながら,結局はそれがピッタリ当てはまるという人は誰ひとりいないものである。個人的なことであっても,「自分はこういう風にシステムを上手く使ってる」という実例は,素晴らしく有用な記事になるのだ。
上の naoya 氏の記事を読んでいてビックリしたことがある。なんじゃこりゃと目が丸くなった。あまりの自分の集中力のなさに驚いたのではない。記事の中で村上直樹の「走ることについて語るときに僕の語ること」からの引用があるのだが,「naoya 氏は根っからのブロガー」なんだなと思ったのである。
どうしてその引用にビックリしたのかというと,このブログでも「走ることについて…」について取り上げたことがあるのだが,引用の使い方がまったく違ったからなのである。このブログで記事にしたものは,よくある「読書感想文」的なものだった (nlog(n): 自分のことを語りたくなる「走ることについて語るときに僕の語ること」)。
読書感想文というのは,位置づけとしてはコメント的である。というのも,ある本があって,それに対する自分の考え方を述べているので,本の内容が主となっていて,自分の考えは従になっているからである。自分の主張を主体的に述べていないという点でコメント的だということである。
図にすると,上のようになっていて,ブログ記事としては自分のものなんだけれども,文脈としては,他のものに大きく依存していてそれなしでは成立しない。ブログの世界であれば,相手のブログ記事にコメントするのと同じである。自分が他のサイトに出かけて行って書き込んでいるのだ。
一方で,naoya 氏の記事の書き方は,個人的な文脈があって,そこに本の一節を引用するスタイルになっている。もしも引用元が書籍ではなくてブログだったら,その記事にトラックバックを飛ばすような書き方である。
これも同じように図にしてみると,上のように,記事の文脈の中で引用が行われており,自分の主張が主であって,引用は従である。まあ,引用というのは常に「従」であるといえばそうなのだが,記事の文脈が引用に依存していないという点で,コメント的な記事とは大きく異っていると言える。
このような「自分主体の文脈を大切にする」という考え方は,ブログシステムの Movable Type で初めて実装されたものであって,それまでのコメントしかできなかったウェブの世界を大きく変えた革新的な概念である (nlog(n): トラックバックの衝撃)。そういう意味で,naoya 氏はブログならではの書き方をする生粋のブロガーだと言えるんじゃなかろうか。
だから,
以上、朝起きていきなりドラゴンクエスト10をはじめると作業興奮によってついついやり過ぎて一日を台無しにしてしまうので注意が必要、というお話でした。
というように冗談めかしてはいるが,実は,自分の記事に対する立ち位置とか,自分の文脈であることの確認になっているのでは,と思えるのである。
このサイトの記事にありがちな「自分語り」も (汗),「過去の自分」を主体として取り上げている点でコメント的だと言える。ブログは「現在の自分」じゃなきゃね。
コメント的でなく,自分語りでもなく,ブログならではの ―トラックバックを飛ばすような― ブログらしい記事を書いて行きたいものだ。
Posted by n at 2013-07-23 23:39 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
Master Archive Index
Total Entry Count: 1957