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misc ディズニー色が濃厚だった「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」

スターウォーズ (エピソード7) フォースの覚醒を映画館で見てきた。スターウォーズはストーリーもディズニーのものになっていた。

■ ■ ■

3D 吹替版で鑑賞

2015年12月18日にアメリカ・日本同時公開となった「スターウォーズ/フォースの覚醒」。どうしてもロードショーで見ておきたいというわけではなかったのだが,タイミングよく,ぽっかりと時間が空いたので鑑賞することにした。上映館のユナイテッド・シネマに入ってみると,次の上映は「3D 吹替版」ということで (「2D 字幕版」と交互に上映),これを見ることにした。通常の鑑賞料金 1800 円にメガネ代 300 円を加算して 2100 円を払う。

realD 3D メガネ
realD 3D メガネ


入り口ではモギリと引き換えにメガネを渡してくれた。realD 3D メガネである。円偏光方式を採用しており,顔を傾けても暗くなったりすることなく見ることができるそうだ (RealD - Wikipedia)。3D の映像を見たのは東京ディズニーランドの「キャプテンEO」を1980年代に見た以来だ。「キャプテンEO」を知っている人が若い世代にもいて不思議に思ったのだが,1990年代に一度クローズした後,主演のマイケル・ジャクソンの死後に復活し,2014年まで上映されていたそうだ (キャプテンEO - Wikipedia)。「キャプテンEO」の製作総指揮もジョージ・ルーカスである。「キャプテンEO」では,椅子が動いたりした。今回のスターウォーズでも,劇場によっては椅子が動いたり匂いが出たりする 4DX という仕組みで見られるようだ (新次元の4Dアトラクションシアター ユナイテッド・シネマ)。臭いの出る映画と言えば,ジョン・ウォーターズ監督の「ポリエステル」が懐かしいところだ。あれは自分で紙をこするという手動の仕組みだった (ポリエステル (映画) - Wikipedia)。

3D メガネ回収箱
3D メガネ回収箱


3D の見え方は,メガネを外すと映像が二重に見えて,かけると奥行きがでる。キャストなどの文字が表示されるところでは,文字の向こう側に星があるという立体感の出方だった。「キャプテンEO」のように映像が飛び出してきて手で掴みたくなるということはなく,どちらかと言うと奥に広がるように立体的になっていた。鑑賞後は,不要ならば回収ボックスへ,欲しければ持って帰ってもよいということだった。もちろん持って帰りましたとも。

映画館の座席
映画館の座席


お昼時ということもあり,館内はポップコーンの匂いが (自動的に) 充満。ドリンクとポップコーンのセットで 1200 円 (【劇場限定】12/18公開「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」ポップコーンセット販売のお知らせ)。上映前の注意では,「『他店で購入した』飲食物の持ち込みは禁止」となっていた。飲食物が全面的に OK になったわけではなかった。

映画を見て

ファンの希望を汲みとった作品

娯楽作品としてはよく出来ている。一番最初の作品「エピソード4」を思わせる構成になっていて,昔からのファンへのサービス精神が感じられる。ハリソン・フォードもキャリー・フィッシャーもいい感じに歳をとっていて味をだしている。

ナウシカに似ているが…

今回のスターウォーズ,主人公は女性である。村人に信頼が厚かったりはしないものの,知識があり,行動力もあるというところでナウシカに似ている。王蟲の抜け殻は見つけないが,よさそうな部品を探して売りつける。敵の中にヨロイを着た女性がいて,ついにクシャナ登場かと思わせるのだが (キャプテン・ファズマ),残念ながらシールドをすぐ解除したりして弱すぎる。宮崎駿のアニメは,超能力を持ったヒロインが出てくるが,だからと言って男が弱いわけではない。男はどちらかと言えば,地面に這いつくばりながら前進するものとして描かれる。ところが,このスターウォーズでは,男が弱すぎるのだ。

ディズニーの影響か

今回のスターウォーズから,製作はディズニーになった。ルーカスは,エピソード1に登場させたジャー・ジャー・ビンクスが超絶的に不人気で,映画史上もっとも不愉快なキャラクター1位に選ばれてるなどしたので,頭にきて売り飛ばしたのである (ルーカスがスター・ウォーズを手放した理由は「つまらなくなったから」。なりたいキャラは「ジャー・ジャー・ビンクス」 - Engadget Japanese)。しかし,売り払った後で後悔もしている (ジョージ・ルーカス、ディズニーに謝罪+新『スター・ウォーズ』の「レトロ」な方向性への複雑な心境を語る映像。 - 中村明美の「ニューヨーク通信」)。

ヒロインの名前は「レイ」。彼女は元気だし頭もいいし可愛らしくていいのだが,強すぎる。強いだけならいいのだが,「女だからって馬鹿にしないでよ」なプレイバック的な演出が気になる。助けようとして手を差し出す黒人のフィンに対し,レイは「手を握らないで」と言うのだ。それが2回もある。逆にレイがフィンに手を差し出すシーンでは,フィンは何も言わずに手を貸してもらっている。フィンは決して弱いわけではないのだが。弱いのは敵のフォース使いであるカイロ・レンである。女が強くて男が弱い話で記憶に新しいのが,ディズニー・アニメ「アナと雪の女王」である (nlog(n): 「アナと雪の女王」は誰に向けた映画なのか)。

女は強くて正しく,男は弱い上に裏切るのだ。そんなところもアナと雪の女王にそっくり。レイとフィンが,強い口調で言い合いをしていると思ったら,実はお互いに褒め合っていたというシーンは,ディズニー・アニメのワンシーンのようだった。どこかで見たことがある。「スターウォーズはディズニー映画になってしまったのだな」と思った演出である。

黒人はいい役で出すという縛りはディズニー的かそれともアメリカならではか。これまでのスターウォーズでは小人が多く使われていて感心していたが,今回は認識できなかった。

ストーリーが軽い

このスターウォーズで,これまでのダースベイダーの立ち位置にいるのがカイロ・レンなのだが,直情的で小物なのがストーリーを薄いものにしている。カッとしたからと言って,周りの機材に当たり散らしてぶち壊すなんてあり得るのか? このキレるシーンも2回あるのだ。しかも2回目は部下のストームトルーパーに「またかよ…近寄らない方がよかんべ」と思われてしまう。重要なポストの人物がいる場所には,重要な機材があるはず。壊したらシステム全体が制御不能になってもおかしくないのに。

全体を通して気になるのは,「逃げ隠れ」が多いことである。ルークはもともと隠れてしまっているし,レイもライトサーベルから逃げ出す。ミレニアム・ファルコン号のように物理的に逃げるのはいい。問題は精神的な逃げである。

物語は,ルークの居場所を示す地図を守るところから始まる。ルークの居場所が記されているという「ルークの地図」が敵と見方双方のターゲットとなっているが,原案では「ルークのライトサーベル」だったようだ (A Compiled Synopsis of Star Wars,日本語訳 【炎上】スターウォーズ/フォースの覚醒のネタバレ&感想まとめ、2chが大変なことになってるwww ※エピソード7のあらすじ・ストーリー/予告動画あり : NEWSまとめもりー|2chまとめブログ)。「地図」の方が「ライトサーベル」よりもストーリーが作りやすいように思えるが,その地図を誰が作ったのかは不明であり,理由づけとしては弱い。

ライトセイバーはジェダイかジェダイの候補者しか使えないはずなのに,「フォースなんて伝説だと思ってた」と話すレイも,ストームトルーパーとして一所懸命働いていたフィンも,簡単に使いこなせてしまうところが謎である。恐らくどちらもジェダイの血を引いているのだろうが,それなら気づくのが遅すぎる。レイは気づくのが遅いのに,カイロ・レンよりも強いフォースを覚醒させる。ここにはもう少し理由づけが欲しかったところだ。

カイロ・レンがレイの心の中をフォースで読んだ時,「海や島が見える…見えるぞ」と言っていた。恐らく,読み取られたときに,幼いころに育った場所の記憶が呼び起こされ,その頃の父を姿を思い出して封印されていたフォースが呼び覚まされたに違いない。後になってライトサーベルを手にした時に記憶がフラッシュバックするシーンがあるが,フォースに目覚めた後のことなので,蛇足感がある。

帝国はダークサイドで悪として描かれるが,「悪」というのがよく分からなくなってきた。帝国は歯向かうものには鉄槌を下し,星を爆破したりするという意味では悪だが,力を使って秩序を保とうとしているだけなのである。秩序を保つのが悪でないなら,力を使うことが悪なのだろうか。では正義のために使う力は悪ではないのか。

今後の予想

エピソード4からは息子・娘の話だったが,エピソード1から6を通すと父親の話だった。7以降は,孫の話がメインになる流れだろう。でも親・子・孫というパーソナルな問題なのに (町山智浩 スターウォーズ6部作に隠されたジョージ・ルーカスの人生を語る),宇宙を舞台にしたばっかりに巻き込まれて死者多数ってどうなの?

エピソード7には,闇にいるカイロ・レンが「光の誘惑を感じました」というセリフがある。ダース・ベイダーは光から闇に落ちたが,今後のエピソードでは,闇に落ちているカイロ・レンが光に戻ってきて大団円となりそうだが,それだとあまりに予定調和だろうか。

気になるのはルークが誰と結婚したかということだな。

見終わった後で読みたい何から何までの情報はこちら (スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 - Wookieepedia - Wikia)。

ぼくらは間違っていたのではないか

スターウォーズはディズニーのものになり,見た目は変わっていないというものの,中身はがらりと変わっていた。もはやルーカスの個人的な考えを反映したものではなく,巨大な産業が作り上げる「何ものか」になっていた。これはやはり,エピソード4〜6でスターウォーズが大好きになった僕らが「スターウォーズはこうあるべき」という妄想を自分たちの中で作り上げたことで,エピソード1〜3を「なんか違う,こうじゃない」と,純粋に,だが無自覚に批判したからなのだ。「こうあるべき」という姿は,僕らそれぞれが違うものを想像していたにも関わらず,「こうじゃない」という意見は一致してしまった。その批判は,ルーカスにとっては個人攻撃と同じことであり,その結果,ルーカスにスターウォーズを売っぱらわせるという,ファンには予想外のことをさせてしまったのである。僕らは無邪気すぎた。そして取り返しのつかないことをしてしまったのかも知れない。

Posted by n at 2016-01-10 23:35 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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