気力体力ともに衰えてきたので,「老人力」をつけ始めなければならない。しかし,全面移行するには早すぎた。
「老人力」とは,一昨年2014年に亡くなった赤瀬川原平が提唱した考え方である (老人力 - Wikipedia)。老化による衰えをネガティブに考えずに,「老人力がついてきた」とポジティブに考えるのである。肉体的に健康に老いるには「アンチエイジング」も必要だろう。しかし,老いは受け入れていかなければならない現実でもある。受け入れることは,精神的に健康に老いるということにつながるのであり,その際に「老人力」は絶望から救ってくれる手がかりになりそうなのだ。
試しに,「大活字文庫 老人力1, 2」を読んでみることにした。ところが本を開いてみてビックリ。「大活字文庫」というだけあって文字が大きいのだ。22pt だそうで,大きいどころではない。大きすぎた。「大活字」は「老人力」というテーマには最適な組み合わせだと考えられる。読者は老眼だからだ。老眼が始まると,本を持った手を徐々に伸ばし始めるものだが,老眼が進んだ場合,手をいっぱいに伸ばしても足りなくなる。「もっと長い手が欲しい」そう思う反面,遠くなると文字が小さすぎて見えないという,この矛盾。この本の読者層は,まさにその辺りのはずである。残念だというべきか,まだその境地に至っていないことを喜ぶべきなのか,文字が大きすぎるのも読みづらいのであった。いつの頃か,昔の「ハヤカワ・ミステリ文庫」は文字が小さすぎて,内容をどうこう言う前に,「読む気がしない」という自分に驚いたが,文字が大きすぎるのも逆の意味で「読む気がしない」のだった。
赤瀬川原平の「すべてのことを前向きにとらえる」という究極のプラス思考は,ありがたい。読んでいて気が楽になる。日常生活でギチギチに固まって息苦しくなった心を,モノを別の視点から見ることで,開放してくれるのだ。
赤瀬川原平の「私の昭和の終わり史」にあった豆知識をひとつ。
Posted by n at 2016-08-19 16:08 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)(前略) 三木鮎郎が質問した。するとユリ・ゲラーが答えるに、上にかざした挙に、何とはなしの、下から押してくるような、つまり、 「プレッシャー」 が感じられるんですよ、と英語で言った。
すると英語がわかることが得意の三木鮎郎が、ユリは掌に何かを感じると言っています、何か下から押し上げられるような、プレッシャー、ユリはプレッシャーがあるというふうに言ってますが。
というふうに解説をしたのである。それが日本の俗世間にプレッシャーという言葉が披露されたはじめての場面なのだ。(中略) 1974年。(中略) そのことを知る人は意外と少ない。
赤瀬川原平「私の昭和の終わり史」p. 79
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