子どもが結末を知ることがないという噂の寝かしつけの本『おやすみ、ロジャー』。我が家で試してみたが,全くの逆効果で眠るどころか騒ぎ出す始末。ブーイングにより途中で読むのをやめざるをえなかった。理由は違うが「子どもが結末を知ることがない」は本当だった (笑)。
読む人を眠りに誘うという絵本「おやすみロジャー」を我が家の子供たちに読み聞かせてみることにした。ただし,注意点がある。「おやすみ、ロジャー」を読んで眠たくなるのは子供だけではないらしい。本文に入る前に次の「本書の読み方の手引き」という注意書きがあるからである。
【注意!】
車を運転している人のそばで絶対に音読しないこと。
ということで,かなり強力な効果がある本ということになる。子どもにそのまま読んで聞かせたところ「うそだー」との反応。
次の注意書きもあったが,黙読で流し,子どもには聞かせないことにした。
- 太字の箇所は、言葉や文を強調して読む
- 色文字の箇所は、ゆっくり、静かな声で読む
- 【あくびする】など動作の指示に従い、【なまえ】にはお子さんの名前を入れる
- うさぎの名前、ロジャーは、口一・ジーャーとあくびを2回しながら読んでもよい
この本には特別に組み立てられた文や厳選された言葉が含まれています。 多少見慣れない文もあるでしょうが、そこには心理学上の意図があるのです。 それでは健やかに、よい眠りを!
本文は次のように始まる。
さーて、いまからとっても眠くなるお話をしましょうか。すぐ眠っちゃう子もいるし、夢の国につくまでにちょっとだけ時間がかかる子もいます。【あくびする】【なまえ】はどっちかな? いますぐ眠る? それとも、お話の終わるころに眠る?
手引きの指示にしたがい【あくびする】であくびをし,【なまえ】には子どもの名前を入れて読む。あくびというのは不思議なもので連鎖する。連鎖する原因についてはよく分かっていないが,集団的な直感であるという説や,眠る時間を互いに知らせるためのシグナルになっているという説があるそうだ。昔,動物のあくびを次々に映すコマーシャルがあって,つられてあくびをした覚えがある。あくびは異種の動物間でも連鎖するのは本当なようで,犬→人間もあるし,人間→犬もあるらしい。今度,犬や猫の見ている前であくびを試してみよう。「あくび」に「欠伸」という漢字があてられたのは,「口を開けて,伸びをする動作」に由来するとのこと (あくび - Wikipedia)。
さて本題に戻って,あくびまではよかったが,この本には「眠る,眠くなる,眠ってしまいました」という言葉があまりにも多く出てくるという問題がある。子どもも聞いているうちに鼻につき始めたらしく「また? もういいよ〜」とうんざりの様子。子どもからの苦情により,読み聞かせは中断せざるを得なかった。その多さは次の一節だけでもその多さが分かるだろう。
どういうわけか今日にかぎって、ロジャーのきょうだいたちは、いつもより早く眠ってしまいました。そのとき、ロジャーが考えていたのは、いますぐ眠るために、考えているうちにくたくたになって眠くなっちゃうようなこと。いつもくたくたになって、眠くなっちゃう、うーんとくたくたになって、うーんと眠くなっちゃうようなこと。遊ぶこととか眠ることとかいろいろ、とにかくロジャーときみが、いますぐくたくたになっちゃうようなこと。
親として読んでいて気になったのは,「なこと。」で終わる体言止めが多用されていることである。上に引用した短い文章だけでも3回も出てくる。普段は使わない表現なので,「えっ,何? よく分からなかった」と言われてしまった。例えば,上の引用の最後の「いますぐくたくたになっちゃうようなこと」が何を示しているのかと言えば,その文の中には出てこなくて,2つ前の文にある「ロジャーが考えていたのは」である。国語のテストかよ? まあ,これにも この本には特別に組み立てられた文や厳選された言葉が含まれています。多少見慣れない文もあるでしょうが、そこには心理学上の意図があるのです。
なのだろうけどもね。好意的に解釈すれば「難しくしているのは,考えるのを放棄させるのが目的」とも考えられるが,原書の英語の語順のままであることから,日本語に訳しきれていないのが正直なところではないのかと思うのである。
主人公のロジャーはウサギだが,挿絵のウサギが可愛く描かれていないのも問題である。痩せていて,茶色で,毛並みも悪い。病気っぽいので,子どもの感情移入の邪魔になっていた。子どもにしてみれば「可愛くないウサギが眠たいんだって? 勝手に寝れば?」という感じである。本文はだらだらと長く,退屈。
このように,我が家での睡眠導入は見事に失敗。子どもは,怪しい催眠術師に真っ向から抵抗するかのように,意地でも眠らないという意地を見せていた。
我が家の場合,普通の絵本の方がずっと早く寝る。
Posted by n at 2016-12-20 22:48 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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