親が小さな子供に説明するときに使う「おともだち」は,知っている子供であるとは限らない。むしろ知らない子供に対して使う。
返してこようね。おともだちのだから。
親が,自分の子供に対して,持ってきてしまった他人のおもちゃを返させるときに,よくこんな言い方をする。ここで言う「おともだち」は,子供と同年代の他人の子供を指している。知らない子供に対して使うことが多い。つまり,普通の意味での「友達」ではないのだ。
「友達」と言えば,よく一緒に遊ぶ知り合いを指すのが普通である (Yahoo!辞書 - とも‐だち【友達】)。しかし,小さな子供に対して使うときは,知らない子供を指すのである。名前を知っていれば「おともだち」とは言わず,名前を呼ぶ。「おともだち」は名前を知らない子供に対して使うのである。ここで言う「小さな子供」とは,だいたい小学校入学前くらいまでを指す。砂場で一緒に遊んでいる子供は皆「おともだち」である。
「おともだち」は便利な呼び方である。他人の子供のことを指しているのだが,キツさがない。「よその子の」「あの子の」「ひとの」「他人の」には余所余所{よそよそ}しさがあるが,「おともだち」にはそれがなく柔らかいのである。
地域性もあるのかも知れないが,少なくとも,東京,千葉,埼玉あたりのおかあさんたちは,この「おともだち」を使っている。
ここで使った「おかあさんたち」も若干ではあるが「おともだち」と似たニュアンスがある。呼びかけには使えないが,立場は分かる。その意味で「おともだち」と同じように使えるからだ。難しいのは,特定のおかあさんに声をかけるときである。名前が分からないときの呼びかけは非常に難しい。「あの…」「ちょっと…」「すみません…」くらいしかない。もう少し顔見知りになれば,「○○ちゃんのおかあさん」が使える。そのおかあさんの名前は分からなくても,子供に呼びかけたときに,その子の名前が分かるからである。
呼びかけというのは難しいものだ。「オタク」の語源である「お宅」という呼びかけも (おたく - Wikipedia),知らない相手に対して使える便利な言葉である。語感も直接的でなく,マイルドである。最近は使われないが。
「おともだち」というのは便利な言葉だが,使いすぎると変な気分になるし,ある種の危険性も感じる。「おともだち」という言葉で満足してしまうと,それ以上の言葉を考えなくなってしまうからだ。そうすると,おともだちとの関係も深まっていかない。「おともだち」には一定の距離があって,割と居心地がいいので,それ以上近づく必要性を感じなくなってしまうのだ。名前を知らなくても平気でいられる。しかし,その結果,集団の中にいても孤独な感じがしてしまうということも確かにある。
逆に考えれば,他人との関係が希薄になってきているからこそ,「おともだち」という言葉が生まれてきたのかもしれない。
Posted by n at 2008-07-28 23:49 | Edit | Comments (2) | Trackback(0)
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名前のわからない女性は 全部オネーさん☆ 付き合っているのに 3ヶ月くらい名前を知らない・・・って事も! だいたいお店で呼ばれる名前と 普段の名前と・・・ 面倒ですよね!
Posted by: maro助 at July 29, 2008 20:29お友達・・・ 大人になってからでも 物凄く都合よくフラれる時には お友達と呼ばれます・・・
maro助 さん
Posted by: n at July 29, 2008 22:24名前も知らないオネーさんと3か月も付き合えるというのはすごいことですよ。普通マネできませんから。
「お友達」から始めて,お付き合いしたあとはまた「お友達」にかえっていくのですね。