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English 「和文英訳の修行」と「基本英文700選」の類似例文

佐々木高政著の「和文英訳の修行」と鈴木長十・伊藤和夫共著の「基本英文700選」には類似例文がある。対応を表にしてまとめた。

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英語の構文を学習するために鈴木長十・伊藤和夫著の「基本英文700選」を使ってきたが (1周目2周目3周目4周目5周目6周目),つい先日,この本が別の本の「類似本」であることを知った。日本語文と英語文の対で例文をあげていくスタイルで最初に出版されたのは,佐々木高政著「和文英訳の修業」だというのだ。

現在入手できるのは「4訂新版」で 1981 年発行のものである。初版はなんと 1952 (昭和27) 年の発行となっている。

この本の「予備編」には 500 組の日本語文と英文の組が載っていて,まずはこれを暗記せよと言う。眺めてみると,基本英文と同じ文があるのに気がついた。「基本英文700選」の初版の発行は 1968 年であるから,「修行」の一部をコピペして使っている可能性がある。しかし,「修行」の「1981年4訂新版」のはしがきには,250 個の暗唱用文例の入れ替えを行ったと書いてあるから,もうどちらがどちらをコピペしているのか分からなくなっている。

以下に,英文が同じもの,英文がほとんど同じもの,英文の一部が同じもの,英文は異なるが日本語の意味が同じもの,を表にして示す。

和文英訳の修行 基本英文700選
英文 和文 英文 和文
7. What made you so angry? なぜあんなに怒ったの? 「自動詞」か「他動詞」か 666. What made him so angry then, I wonder? どうして彼はあの時あんなに怒ったのだろう。 疑問・感嘆
54. He never spoke unless (he was) spoken to. 自分からは決して口をきかぬ男だった。 「現在・過去・未来」 414. A strange fellow, he never speakes unless [he is] spoken to. 奇妙な男で,彼は人から話しかけられないと口をきかない。 分詞と動名詞
55. I used to get up early and take an hour's walk before breakfast. 私も以前は早起きして朝食前に1時間ほど散歩したものだ。 「現在・過去・未来」 363. I used to get up early and take an hour's walk before breakfast. 私は早起きして朝食前に1時間ほど散歩する習慣であった。 助動詞
63. You shall want for nothing as long as I live. わしの目の黒いうちはお前に何も不自由させん。 「現在・過去・未来」 531. You shall want for nothing as long as I live. 私が生きているかぎりあなたに不自由はさせない。 副詞節
65. Shall I go for a doctor? 医者を呼んでこようか。'send for a doctor' なら「医者を呼びに(だれかを)やる」 「現在・過去・未来」 332. "Shall I send for a doctor?" "No, thank you.  There is no need for one" 「医者を呼びましょうか」「いや,それにはおよびません」 助動詞
69. He has jast left.  I don't think he has gone very far yet. 彼は今出たばかりです。まだそんなに遠くは行ってません。 「現在・過去・未来」 342. He started just now, so he cannot have gone so far. あの人は今出たばかりだから,そんなに遠くまで行っているはずはない。 助動詞
70. I have been to the station to see my uncle off. おじを見送りに駅に行ってきたところです。 たいせつな「完了形」 266. "Where have you been?"  "I have been to the station to see a friend off." 「どこへ行ってきましたか」「友人を見送りに駅へ行ってきました」 時制
87. He is always finding fault with everything I do. 奴ぼくのすることに一々けちばかりつけやがる。 「進行形」の用い方 280. She is always finding fault with others. Is she faultless herself? 彼女は他人のあらばかりさがしている。自分には欠点がないというのだろうか。 時制
109. I was caught in a shower on my way from school and was drenched to the skin. 学校からの帰り道にわか雨にあい,わたしは肌までずぶぬれになりました。 「受身形」のいろいろ 286. I was caught in a shower and drenched to the skin. 私はにわか雨にあって,ずぶぬれになった。
117. You must be responsible for your conduct. 自分の行為に対しては責任をとらねばならぬ。 「助動詞」の主な用法 589. Since you are no longer a child, you should be responsible for what you do. もう子供ではないのだから,君は自分の行動に責任を持つべきだ。 否定
123. Great books must inevitably have a strong influence upon those who read them. 偉大な本はそれを読む人に強い影響を与えないではおかないだろう。 「助動詞」の主な用法 602. One cannot read a great book without being so much the better for it. 良書を読めば必ずそれだけの効果がある。 否定
140. You might as well throw your money away as lend it to him. 君,やつに金を貸すくらいなら捨ててしまうほうがましだよ。 「助動詞」の主な用法 353. You might as well throw your money away as lend it to him. あんな男に金を貸すくらいなら,捨ててしまう方がましである。 助動詞
155. I would rather remain poor than get money by dishonest means. 不正な手段で金を得るより私は貧乏でいたほうがいい。 「助動詞」の主な用法 565. I would rather be poor than make money by dishonest means. 私は不正な手段で金をもうけるよりも貧乏している方がよい。 比較
175. I will make up for the lost time by working as hard as I can. 失った時間は精いっぱい勉強することによって取り返します。 便利な「動名詞」 53. I will make up for the lost time by working as hard as I can. できるだけ勉強して,浪費した時間を取り返すつもりです。 主語+動詞+準動詞, etc.
180. He came very near being run over by a motor-car. 彼はあやうく自動車にひかれるところだった。 心得ておくべき「分詞」の用法 48. She came very near [to] being run over by a motor car. 彼女はあやうく自動車にひかれるところだった。 主語+動詞+準動詞, etc.
220. I am sorry to have kept you waiting so long. こんなにお待たせしてしまってすみません。 英作文にひんぱんに用いる「不定詞」の用例 107. I'm sorry to have kept you waiting long.  A visitor has kept me busy till now. 長いことお待たせしてすみませんでした。今まで来客で忙しかったのです。 主語+動詞+目的語+準動詞, etc.
235. He is, so to speak, a grown-up baby. からは,まあいわば,大きな赤ん坊ですよ。 英作文にひんぱんに用いる「不定詞」の用例 483. He is, as it were, a grown-up baby. 彼はいわば,大きな赤ん坊だ。 関係詞
269. Is it any wonder that he should have failed in his examination? 彼が試験に落第したからと言ってなんの不思議がありましょう。 知らぬと困る "It" の用法 337. Is it any wonder that he should have failed in the examination? 彼が試験に落ちたからといって何の不思議があろう。 助動詞
270. What a pity it is that a man of his talent should have died so young! 彼のような才能の持主があの若さで死んだとはなんとも残念です。 知らぬと困る "It" の用法 177. I think it a great pity that he should have died so young. 彼があのように年若くして死んだのは,本当に惜しいと思う。 It と There の構文
290. There is no rule without an exception. 例外のない規則はありません。 "There..." 構文のいろいろ 476. There is no rule but has some exceptions. 例外のない規則はない。 関係詞
301. There must have been a tacit understanding between them. あのふたりの間にはなにか暗黙の了解があったに違いない。 "There..." 構文のいろいろ 190. There must have been a tacit understanding between them. 二人の間には暗黙の了解があったに違いない。 It と There の構文
302. There used to be a large cherry-tree growing in our back yard. 以前うちの裏庭には大きな桜の木が一本生えていました。 "There..." 構文のいろいろ 657. There used to be a big cherry-tree at the back of my house. 以前は私の家の裏に,大きな桜の木がありました。 前置詞
308. Whether you will pass the entrance examination or not depends primarily on your exertions. 貴君が入学試験に合格するかどうかは一に貴君自身の努力いかんにかかっているのです。 応用範囲の広い「名詞節」 131. Whether you will succeed or not depends upon your own exertions. 成功するかどうかは,君自身の努力いかんによる。 名詞節を含む構文
327. Before buying anything you had better ask yourself whether you could not do without it. 何かものを買う前にはこれはなくてもすみはしないかと一応胸に問うてみるがいい。 応用範囲の広い「名詞節」 147. Before buying anything, you had better ask yourself whether you cannot do without it. 何か物を買う前に,それがなくては困るかどうか考えてみるがよい。 名詞節を含む構文
353. It is dangerous to trust a man of whose past you know nothing. その過去についてなにも知らない人を信用するのは危険だ。 「関係詞」の用い方 454. You should not easily trust a man of whose past you know nothing. ぜんぜん素性のわからない人間を軽々しく信用してはならぬ。 関係詞
359. Have you found the book (which) you said you had lost the other day? 先日なくしたとおっしゃっていた本はその後みつかりましたか。 「関係詞」の用い方 446. Have you found the umbrella which you said you had lost the other day? 先日なくしたとおっしゃっていた傘は,見つかりましたか。 関係詞
385. If the sun were to rise in the west, I would not change my mind [resolution]. 太陽が西から上るようなことがあっても,わたくしの決心は変りません。 「仮定」の表わし方 301. Even if the sun were to rise in the west, I would not change my resolution. 太陽が西から昇ることになっても,私の決心は変りません。
392. If it were not been for [But for, Without] the heat of the sun, no living thing could exist. 太陽の熱がなければいかなる生物も生存していくことはできぬであろう。 「仮定」の表わし方 302. But for the heat of the sun, what would become of the living things on earth? 太陽の熱がなかったら,地上の生物はどうなるだろう。
395. I felt as if I were in a dream. まるで夢を見てるようなここちでした。 「仮定」の表わし方 310. I felt as happy as if I were still dreaming. 私はまだ夢を見ているような楽しい気持だった。
410. Too much exercise does more harm than good. 過度の運動はからだのためよりむしろ害になる。 「比較」の表わし方 426. Exercise, if carried to excess, will do you more harm than good. 運動も過度になると有害無益である。 分詞と動名詞
415. The more you know, the mroe you find you don't know. 知識が増せば増すほど自分の無知なことがわかってくる。 「比較」の表わし方 574. The more a man knows, the more he discovers his ignorance. 人は知識が深まるほど,自分の無知に気がつくものである。 比較
432. We do not realize the value of health till we lose it. 失ってみて初めて健康のありがたさがわかる。 その他の重要な「接続詞」の用い方 490. People do not know the value of health till they lose it. 病気になってはじめて健康の有難さがわかる。 副詞節
437. You should not despise a man because he is poor. 貧乏だからといって人をけいべつしてはいけない。 その他の重要な「接続詞」の用い方 494. You should not despise a man because he is poor. 貧乏だからといって人を軽蔑してはいけない。 副詞節
440. It looks like rain.  Thake this umbrella with you lest you should get wet and catch cold. 雨模様ですよ。ぬれてかぜでもひくといけませんからこのかさを持っていらっしゃい。 その他の重要な「接続詞」の用い方 498. Take this umbrella with you lest you should get wet and catch cold. 雨に濡れて風邪を引くといけないから,この傘を持って行きなさい。 副詞節
460. School begins at half past eight except on Wednesdays. 授業は水曜を除いて8時半に始まります。 ちょっととまどう「前置詞」の用例 640. School begins at half past eight except on Wednesdays and Saturdays. 水曜と土曜のほか,授業は8時半に始まります。 前置詞
474. An alarming percentage of men around us are mad, and no one knows it.  They don't know it themselves. わたしたちの周囲には気味わるいほどの率で気違いがいるが,それは誰にもわからない,本人にも。 ちょっととまどう「前置詞」の用例 217. They did not know it themselves. 彼ら自身も,そのことを知らなかった。 倒置・同格・挿入
492. The moon came out from behind the cloud. 月が雲のうしろから顔を出した。 ちょっととまどう「前置詞」の用例 639. The moon came out from behind the cloud. 月が雲のうしろから顔を出した。 前置詞
[ ] は言い換えが可能なことを示し,( ) は省略が可能なことを示す。 ( ) は言い換えが可能なことを示し,[ ] は省略が可能なことを示す。

このリストは1か月くらいかけて地道に作っていたのだが,出来上がった表は思ったよりもなんだかスゲくなってしまった。類似例文は全部で 37 個ある。割合にして約 5 パーセント。これを多いとみるか少ないとみるかは意見が分かれるだろう。「和文英訳の修行」の例文は,不幸だったり不吉だったり,ネガティブなイメージのものが多い。「第474番の気味が悪いほどの気違い率」などがそれである。

Posted by n at 2009-11-02 22:18 | Edit | Comments (6) | Trackback(0)
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Comments

700選は既に絶版となっている江川泰一郎著『英作文の考え方』(文一総合出版)の解答書からも随分パクっていましたね。

Posted by: 多田正桁 at April 06, 2010 13:42

多田正桁 さん
残念ながらその本は図書館でも見つけることができませんでした。古書店等で見かけたらチェックしてみたいと思います。
情報ありがとうございました。

Posted by: n at April 06, 2010 22:09

佐々木先生は或る著書で伊藤講師のパクリ行為を非難していますよ。まぁはっきりとは名指しはしてませんが。

Posted by: 天野 at August 04, 2010 02:11

天野 さん
その本を読んでみたいですね。佐々木高政著「和文英訳の修行」や「英文解釈考」には他人のことに言及する部分は見当たりませんでした。
その本はエッセイ的なものでしょうか。

Posted by: n at August 05, 2010 00:56

(コメントをどうぞ) 和文英訳の修行の例文ですが。2つを除き(4訂版で初登場)、初版か改訂版です。

Posted by: toyonobori at December 16, 2011 13:53

toyonobori さん
和文英訳の修行の例文は「1981年4訂新版」のものです。
何か違っているでしょうか?

Posted by: n at December 16, 2011 16:12
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