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English 英語の感覚に一歩近づける「aとtheの底力」

津守光太著「aとtheの底力」を読んだ。英語ネイティブスピーカーの考え方に近づける,私にとっては「近づいた気分になる」本だった。しばらくして再読するとまた別のものが見えてくるのかも知れない。

■ ■ ■

津守光太著「aとtheの底力 -- 冠詞で見えるネイティブスピーカーの世界」は,冠詞である「a」「the」と「冠詞なし」の3つから,英語ネイティブスピーカーの考え方にアプローチしている本である。正直言うと,a と the だけで1冊書けるのかよ! 引っ張りすぎ! と驚いた本。しかし,1冊をまるまる読み終わっても完全には把握できないのだった。

この本の要点は,

a/an vs. the vs. ゼロ冠詞

津守光太「aとtheの底力」 p. 15

をどのように使えば,どういうメッセージが相手に伝わるかということを教えてくれるというもの。「ゼロ冠詞」は,冠詞がつかないことを意味している。それぞれの基本イメージは次の通り。

a: カタチあるモノの「リンカク (輪郭)」を相手に伝える (p. 21)

  • (カタチをもつモノの) リンカク (p. 55)
  • 同じ種類のモノがいくつもあるうちの1つ (p. 55)

the: 話し手同士の了解を示す (p. 19)

  • the は他のモノとの区別・峻別を表す。だから,話をしている人 (話者) 同士が了解しているモノには the をつける (p. 32)

ゼロ冠詞: リンカクを持たない名詞,固有名詞 (p. 77)

  • 動詞的な意味に重点が置かれる場合 (p. 77)

この「動詞的な意味の場合は冠詞をつけない」はかなり有効。知らなかった。

冠詞に関して (ダジャレだ),その難しさを上手く伝えているのは次の記述である。

単語 (名詞) に a を付けて可算名詞として使うのか,不可算名詞として a を付けずに使うのかは,必ずしも,その単語の中に本来的に備わっている性質ではありません。(中略) 要は,その単語を使う人が,「その単語の中に何を見ているのか」です。

津守光太「aとtheの底力」 pp. 72-73

これは本当のことである。実はすべてがそうなっているのだ。初学者は単語と冠詞が組になっていると思っているが (私もそうだった),それは間違っている。前置詞に関しても,何を使うかは話し手の意識によるのだ (nlog(n): ログインかログオンか)。

興味深かったのは次の視点である。生活を基準にして,身近な単語から身近でない単語へと順に並べるというもの。

一番身近な,「固有名詞 (人名・地名)」と目に見える身の回りの世界から一番遠い抽象名詞は,どちらも冠詞を付けないで使うことが多いのです。身の回りのものは,カタチがあれば a/an を付け,他と区別するときには,the を付けます。

津守光太「aとtheの底力」 p. 133

抽象名詞としては,簡単なものは喜び (joy),悲しみ (sorrow),難しいものとしては能率 (efficiency) が挙げられている。

ただし,抽象名詞や動詞的意味合いを持つゼロ冠詞の名詞であっても,形容詞で修飾した場合は,モノとしての意味合いが強まるため冠詞が付くことになるので (p. 139),ややこしい。

この本は Part 1 と Part 2 で構成されている。Part 1 は基礎,Part 2 は一段深い検討になっている。Part 2 を進んでいくと,だんだんと苦しい説明が増えてくる。苦しいのは,それまで説明していた概念から外れてくる例に対する,例外としての説明である。しかし,それは文法書に乗ってこない,生の言葉に何とかして理屈をつけようしているからであり,試みとしては悪くない。ただし,それを読んでしまうと,やはり何が何だか分からなくなるということも確かではある。

この本は,初級者のときにさっと目を通し,中級になったらもう一度よく読み,上級になったら批判的に読むという使い方をすると面白いのではないだろうか。今の私の英語力では,よく分かる部分と,分からない部分が混在している。

この本の欠点は,索引がないことである。後から「あれなんだっけな」と思って探そうとしてもなかなか見つけることができない。参考書としては使えない。

Posted by n at 2011-04-19 23:46 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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