英語学習におけるプラトーについて,自分の経験をもとにして,簡単なモデルを作って考える。
学習をしていると,努力の度合いは変わらないのに,成績が伸びない時期が訪れる。伸び悩みの時期,停滞期,横ばい状態,スランプ,プラトー期などと呼ばれる。プラトー (plateau) というのは「高原」の意味で,山登りをしているときに途中にある平坦な場所のことである。歩き続けているにもかかわらず高度がちっとも上がらない。実際の高原というのは爽やかな風が通り抜ける気持ちのいい場所なのだが,学習におけるプラトーは,高きを目指して進んでいるときに出くわす平らな場所なので,気分は爽やかどころかどんよりするという,あまり気持ちのいい場所だとは言えない。
練習すれば,問題に対する応答時間も短くなる。練習量と反応時間の関係を表すグラフを学習曲線というそうだ (学習曲線 - Wikipedia)。学習者の感覚としては,伸びが実感できる時期と,まったくできない時期が交互に来て,部分的には S 字の曲線となるので (Church Planting and Conquering the Learning Curve « David McDaniel),ソフトウェアの信頼度成長曲線に近い (信頼度成長曲線 - Wikipedia)。2倍上達するのに100回の練習が必要ならば,4倍の上達には10000回の練習が必要だという,べき乗法則が成立しているという話もある (第50回 練習の効果 | ワイアードビジョン アーカイブ)。英語の場合,何をもって2倍とか4倍などとするかは難しいが,やればやるほど効果が見えにくくなることは確かである。
英語のトレーニングをしている途中で出てくるプラトーについて,自分の経験をもとにモデルを考えることにした。きっかけは,英語のリスニングについての経験で,ゆっくり聞こえるようになったのに,その後また速く感じるように逆戻りしたことである (nlog(n): 英語が速く聞こえるようになってきた)。
英語学習における実力というのは,上のグラフのように上昇下降を繰り返しながら変化していくものだというモデルである。
出発時から,傾きの違う2本の直線が伸びている。傾きが急なのは「単語記憶力」で,機械的な反復で力が伸びていく直線である。もう1本の傾きが緩やかなのは「内容理解力」で,単語同士が有機的にからみあった状態から内容を理解する力を表す直線である。これを合わせたものが,自分の認識できる「実力」となる。
最初からすべてを理解できるわけではないので,当然ではあるが,能力の限界がある。これを黄色の横線で表す。人間は,「あらゆる手段を尽くして」自身の持てる力を最大限に発揮しようとする。最初はできるだけ単語を聞き取ろうとする。単語は機械的な反復で学習が可能なので,早い段階から学習効果が現れる。単語力が能力の限界に達すると,単語力には余裕が出るため,単語以外のことを聞き取ろうとする。そこで内容を理解しようとすると,今まで聞き取れていた単語への注意がおろそかになり,聞き取りができなくなる。これが下に向かう赤い矢印である。そこで「いやいや,単語が聞き取れなければ内容は分からないではないか」と考えて,また単語に注意を向ける。これが右上に向かう赤矢印である。このように行きつ戻りつしながら徐々に能力が上がっていくのである。
単語記憶力と内容理解力が能力の限界に到達すると,ブレークスルーが起こる。次の「能力の限界」は大きく引き上げられる。ブレークスルーといっても,無限ではなく,次の限界がある。それでも,今までの伸びとは大きく違うことを実感するのである。
プラトー脱出は,このブレークスルーが起こることで認識することができる。小さなブレークスルーの連続が能力を高めていくのである。ブレークスルーを起こすためのポイントは次である。
結局,このモデルでは,プラトーというのは現時点での自分の能力の限界のことである。プラトー脱出のブレークスルーは,低い方の能力 (この場合は「内容理解力」) が高まって自分の能力の限界に達したときに起こるのである。機械的反復でも変化がある方が続く。音読を続けていれば力は自然とついていく (nlog(n): 若い頃の自分に教えたい英文音読トレーニング法)。
Posted by n at 2011-09-05 23:47 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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