最近,英語のニュースを聞いていると,ゆっくりに感じられるどころか,逆に速く感じられるようになってきた。これは後退していることの表れなのか? いや,前進していると考えることにしよう。むしろ歓迎すべき変化だと。
英語学習でリスニングの力をつけようとする場合,同じ教材を繰り返して聞くというトレーニングを行う。この場合の印象は次のようになる。
「ゆっくりに聞こえる」はあくまで自分の感覚で,教材自体の速度は変わっていない。自分の理解の速度が速くなったため,聞こえてくる英語の速度が「相対的にゆっくり」になったということである。
英語のニュースをリスニングの教材に使う場合,普通は1度しか聞かない。毎日新しいニュースが配信されるので,古いニュースを繰り返し聞いていると最新のニュースに追いつけなくなってしまうからである。この場合,繰り返し聞く教材とは別の印象になる。
単純にだんだんとゆっくりに聞こえるようになるのではなく,段階によって速く聞こえるようになることがあるのである。このようなことは初期の段階でもある。単語が聞こえるようになると,「あ,この単語知ってる。意味はなんだっけな」と思っているうちに文が先に進んでいて,知っている単語を逆に聞き逃すというのは誰でも経験することである。
文で直接表現されないことというのは,例えば「彼はかつては優秀だったんだ」という文が,間接的には「もう今は優秀とはいえないんだけどね」を意味しているようなことを指している。
文を単に単語の連続だと考えれば,単語の分離ができてくればゆっくりに聞こえるようになるはずである。しかし,文には構造が存在する。構造が聞こえてくるようになると,単語の意味を理解することに加え,構造を理解するという負荷が加わるので,頭の処理が追いつかず速く聞こえることになるのである。
文は「単語+構造」でできている。「単語への慣れ」と「構造への慣れ」の上達は別々のカーブをたどる。構造への慣れは,単語への慣れが必須条件だから,少し遅れて始まり,途中で混ざる。単語への慣れと構造への慣れの発達段階がミックスされると,全体的な進度としては後退しているように感じられる時期があるということなのである。
Posted by n at 2011-07-28 22:13 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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