The Who のボーカル Roger Daltrey がロックオペラ「トミー」を演奏するツアーの来日公演に行ってきた。
昨日2012年4月23日,有楽町は小雨というあいにくの空模様。有楽町に久しぶりに行ったら,かなり街の感じが変わってスッキリしていた。駅前のごちゃごちゃ感がなくなっていた。東京国際フォーラムも清潔感漂う最近の建物という感じだった。怪しげな非公式グッズを販売する露天商がどこにもない。当日券が販売されていたためか,ダフ屋もいない。時代は変わるもんだ。
入場の際の荷物チェックやボディーチェックもなし。カメラ持込み放題。時代は変わるもんだ。もちろん撮影していた日本人はいない。ステージの前まで出てきて写真を撮っていたのは外国人だけ。セキュリティも外国人にだけはスルーなのだ。これだけは変わっていない。(→誤解だったようです。追記参照)
ロジャー・ダルトリーは The Who のボーカルである。若かりし頃は金髪のイケメンだったが,現在は巻毛白髪で透け乳首の加藤茶である (笑)。今回は The Who としてではなく,ロジャー単独の来日で,ロックオペラ「トミー (アルバム)」の完全版を演奏するものだ。このアルバムがリリースされたのは 1969 年,ケン・ラッセルによって映画化されたのが 1975 年だから (トミー (映画)),モノ自体は40年くらい前ということになる。映画はケン・ラッセル節が炸裂していて楽しめるものになっている (nlog(n): ロックオペラ「トミー」初回プレス限定仕様)。主演はロジャー・ダルトリーである。
ロジャー主演映画には「McVicar (film)」があるが,日本では公開されなかった。しかし映画のサウンドトラックは日本でもリリースされた。「Bitter and Twisted」はかなり印象的な曲。現在は輸入盤で聴くことができる (McVicar: Original Soundtrack Recording)。今回の公演でやった「Without Your Love」もこのアルバムの1曲である。
今回のツアーで来日したメンバーは以下 (Who Are You - Roger Daltrey - Tommy Tour 2012 - YouTube)。
Roger Daltrey: Harmonica, Acoustic Guitar, Vocals
Simon Townshend : Guitar, Vocals
Jamie Hunting: Bass
Scott Devours: Drums
Loren Gold: Backing Vocal, Keyboards
Frank Simes: Backing Vocal, Guitar
ロジャーによると,当初予定されていたベースの Jon Button は,交通事故で足首と手首を骨折したため不参加となったとのこと。そこで急遽 Jamie Hunting の参加が決定した。彼の参加決定は2日前で,そこから40曲を覚えたという。このロジャーの英語での説明は,ギターの Frank Simes によって日本語に翻訳された。日本語ウマすぎ。
なるほどそれで疑問が解決した。ライブが始まってから不思議に思ったのは,ベーシストだけスポットライトが当たっていないことと,演奏もキレがないことだった。なぜロジャーは奴をクビにしないのかと。しかし急造であれば致し方ないことである。というか,急造であれだけやるというのは逆にどれだけ凄いんだよ的な感じである。アンチョコ用の譜面はドラムの横に立ててあったようだ。
コンサートの内容は2部に分かれていて,前半はトミー,後半はそれ以外で,ヒット曲メドレーというよりもメンバの思い思いの曲。セットリストは以下の通り。このツアーのイタリアでのセットリストとほぼ同じはずなので,行く前に Roger Daltrey Concert Setlist | setlist.fm で確認しておいた。setlist.fm では,各曲名の右横についている「>」をクリックすると対応する YouTube 動画が再生されるようになっていて便利。
「See Me Feel Me」までが Tommy である。最初にメンバーがステージに出てきた後,ステージ右側のギターのあたりで音響関係のトラブルがあったようで,7:05 からのスタートとなった。Tommy は MC なしで1時間15分の間ノンストップ演奏。途中で「See Me, Feel Me」が入る箇所があり,その雰囲気は素晴らしく,鳥肌が立った。「I'm Free」のイントロは,なぜここで「Smoke On the Water?」と一瞬思ったほど似ていて驚いた。「My Generation」はブルースバージョン。「Extra!」は1回かよ,2回言いそうになったよ。
後半は若干リラックスしたムードで進められた。「I Can See For Miles」が聴けたのは特に懐かしくて得した気分。ロジャーはマイクをグルグル振り回す。The Who では,曲の最後を締めるのにピートがジャンプして着地する瞬間を使うが,ロジャーはマイクを放り投げてキャッチする瞬間で曲を終わらせていた。マイクのコードを左腕に巻きつけてマイクの根本で注射を打つようなジェスチャーもしていた。そのジェスチャーをそこでやった意味は不明。曲はババ・オライリーだっただろうか。
1970年代,80年代に来ればよかったというようなことも言っていた。そうだよ〜,そうすればベースのジョン・エントウィッスルも来られたのにねぇ (nlog(n): ザ・フー初来日)。ピートの耳の具合がよくないらしい。でもまた来たいとも言っていた。
サイモン・タウンゼントは,声が兄のピートそっくり。あのピートの鼻詰まり声は兄だけのものじゃなかったのだ。ロジャーはサイモンを紹介するときに「かれは私の弟だ」と言っていた(「ピートの弟」ではなく)。ステージ向かって左側の最前列の席はお得感満載。サイモンのピックが飛んでくるし,最後にはサイモンとロジャーの握手つき。ロジャーは客席からブーケ大の花束をもらっていた。
ドラムは 前回来日 したときのメンバーだった Zak Starkey ではなく,Scott Devours だった。ドラムセットの前には透明のアクリル板が屏風のように立てられていた。あれが何のためなのか分からない。音の返りをよくしたいためなのか,ドラムのマイクに他の音が入らないようにするためなのか,それとも客席から飛んでくる危険物避けなのか。「Who Are You」ではもっと叩きまくってもいいんじゃないか。
キーボードの Loren Gold はラグタイム風のアドリブを「Sally Simpson」の最後に入れていた。
日本語のうまいギターの Frank Simes は,アドリブを比較的少なめに抑えて,かなり原曲に忠実にやっていた。アドリブはもろにギタリストの特徴が出る。アドリブが入ると「ピートはこうは弾かないよなぁ」と思ったりする。「Young Man Blues」はよかった。
最後にメンバー全員がステージの前に出てきて手をつないで挨拶をした後,ロジャーだけが残ってウクレレを手に「Blue Red And Grey」を静かに演奏。「ステージの上にいるけど,気持ちはみんなといっしょなんだ。Who are you? We are you. 」だと。曲の後半でキーボードの伴奏が入っていた。
終わったのは 21:20 頃だから,後半は1時間。前後半合わせて2時間15分の公演だった。最初の曲が始まると同時に最前列の人が立ち上がったので,観客も2時間15分立ちっぱなし。座席の意味がねえ!座席は,観客を区切ってその場に居させる拘束具としての役割しか果たしていなかった。観客の年齢層はほぼアラフィフ (50歳付近) 以上なので,かなり腰にきたのではないか。少なくとも私は足と腰にきた。
次回は是非,鼻のデカいいかりや長介を連れて来てほしいものだ。
2012年4月26日追記:
写真を撮っていた外国人は関係者だそうです (Slowhand さんのコメントより)。
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はじめまして。私も昨晩 3列目で見てきました。ロジャー、頑張ってましたね!写真を撮っていた外国人はスタッフでオフィシャルサイトにそのショットも公開されていました→http://www.thewho.com/news/title/tokyo-welcomes-tommy
Posted by: Slowhand at April 25, 2012 12:46Slowhand さん
Posted by: n at April 26, 2012 02:073列目というのは間近ですね。写真を撮っていた外国人はスタッフでしたか。誤解していました。情報ありがとうございました。
はじめまして!
Posted by: Midge at April 26, 2012 21:57素晴しいライブでしたね!
私は同じ日の左側2列目でしたので
真後ろか横の後ろかもしれません。
私の右二人となりの人が最前列の前に落ちたピックを
そそくさと拾いに行ってましたが、
そのあたりの方だったでしょうか?
(写真を撮っていた外国人の方はパスを首から下げていましたが
係り員が勘違いして制止して恥をかいてましたw)
ではでは。
Midge さん
Posted by: n at May 04, 2012 02:00そのくらい近いとステージ上の足音なんかも聞こえそうですね。
初めまして。僕は関東最終日の神奈川県民ホールに行きました。初め三階席という予定でしたが、客数がちょうど一階席分くらいだったためか、なんと一階の真ん中辺り、素晴らしい位置になりました。僕のような学生はやはり少なく、中高年の方が多いという印象を受け、どんな雰囲気になるかと思っていましたが、開演の合図と同時にほぼすべての人が立ち上がり、大変な盛り上がりでした。
Tommyを演奏していくうちに、だんだん声の調子も上がり、Sensationなんかは声が裏返る、あるいはかすれることがなくアルバムそのままの歌声であり、ただただ驚くばかり。
後半は疾走感のあるI Can See For Milesなど、半可通の僕にも優しい曲目揃いで、素晴らしい二時間を味わうことが出来ました。今度はPeteにも来てほしいですね。
Posted by: Duck at May 05, 2012 20:10Duck さん
Posted by: n at May 07, 2012 01:12はじめまして。若い方の中にも The Who のファンがいるというのは嬉しいです。また一緒に盛り上がれるといいですね!