椋鳩十編集の「ねしょんべんものがたり」に,おちんちんにお灸をすえられたらどうしようという話がある。
子供の頃に買ってもらい,何度も読んだ本に「ねしょんべんものがたり」がある。椋 鳩十 編集によるオムニバス形式のエッセー集で,総勢24名の作家が自分の寝小便にまつわる思い出話を寄せている。それぞれの話には梶山俊夫によるダイナミックな扉絵がついていて印象的である。
この本の話は,私の洞察力が最強だった小学生時代のエピソードで書いたことがある (nlog(n): 図解! 私のセックステクニック)。あのヒラメキは何処へやら…。ついぞ忘れていたが,市の図書館に所蔵があることを知って借りてみた。
その一番印象的だった話は,前川康男によるものだった。
「おきゅうを,どこにするんだろう?」
とても,しんぱいでした。もし,おちんちんにでもすえられたら,どうしましょう。それこそたいへんです。ぷりりんとやわらかいおちんちんは,びっくりして,ちぢみあがって,おなかの中へ,ぷちゅんとかくれてしまって,でてこなくなってしまうかもしれません。椋鳩十編「ねしょんべんものがたり」 p. 120 前川康男「さいごのおねしょ」より
このお話の続きは,お灸はこんなにも怖いのにおねしょをしてしまい,弟の布団に潜り込んだら弟がおねしょの布団に入って濡れたので,弟が母親に叱られてしまうことになる。弟は何も言わなかったが,弟が自分をかばって黙っていたことを知り,それから寝小便をしなくなったというところで結ばれる。
どの話も,だいたい「やってしまった」→「叱られるぞ,どうしよう」という流れで,読んでいてドキドキする。「このままでは叱られるぞ」というのは嫌なものだ。しかし,寄稿しているすべての作家は,自分の寝小便の記憶を懐かしく思い出している。親はもちろん手加減をして叱っているのだが,「またやったら布団を持って歩かせるぞ,お灸を据えるぞ」という脅かしは,子供にとってはとんでもなくおっかないことのように思えるのだ。
「ねしょんべんものがたり」の出版は1971年。そこには昔の日本の姿がある。その時代はまた,大人が自分の失敗談を語れるようになってきた時代でもある。大人が話す「おねしょ」の失敗談は,子供にとってのなかなかの贈り物になる。
時代は変わったが,おねしょは昔も今も変わらない悩みのひとつである。また同じ企画を立てれば,面白い話が集まるのではなかろうか。
Posted by n at 2013-02-09 23:53 | Edit | Comments (0) | Trackback(0)
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