今日で禁煙12周年を迎えた。喫煙していたとき,やってみようと思ってついにやらなかったことがある。ポイ捨てである。
今日は自分にとっての禁煙記念日である。といっても,12年も経った今,この日にはほとんど何の意味もなくなってしまった。意味があるとすればこのブログに記録が残っているということだけである。そして,残ってしまっていることで,この日に強制的にでも記事を書かせられる我が身なのである。
さて,私には喫煙していたときにやってみたかったことがあった。禁煙に慣れきった体になっても,なお思い出されるのは,そのことなのである。それは「タバコ吸いてぇ〜」ではない。「ポイ捨て」である。私はポイ捨てがしたかった。
私がしたかったポイ捨ては,吸っていたタバコを単に道端に捨てるというものではない。やりたかったのは次のようなことだった。革靴を履いていて,硬い道をコツコツと靴音をたてて歩いている。立ち止まってタバコを一服。吸殻を足元に捨てて,靴で「ゴリッ」と踏んで火を消す。これである。
しかし,喫煙当時の私は,常に吸殻入れを持ち歩いていて,吸殻は全てその中に入れるしかなかった。それは財布型の吸殻入れで,火のついたまま吸殻を入れてフタを閉じると,燃焼に必要な酸素がなくなるため,そのまま自動的に火が消える仕掛けだった。しかし,ポイ捨てを踏みとどまらせたのは,実はそんな吸殻入れに感動していたからではなく,その後のことを考えてしまったからだった。「ゴリッ」と踏み消した吸殻をそのままにして立ち去る気にはなれない。かといって,拾って吸殻入れに入れるというのでは,何のために踏み消したのか分からない。拾ったとしても,その後には黒い灰や,細かいタバコの葉が地面には残ったままであり,それは回収できないのである。ホウキとチリトリを常に持ち歩く気にもなれない。そんなことを考えているうちにタバコそのものを吸わなくなってしまった。
もうひとつやってみたかったのは,タバコにマッチで火をつけて,そのマッチを爪ではじき,静かな湖の水面で「ジュッ」という音をさせることだった。これについても,燃えさしの回収について考えてしまったため,とうとう実行するに至ることはなかった。
靴の裏でマッチの火をつけるということもやってみたくて,マッチ箱についている薬を濡らしてマッチ棒の頭に塗りつけることで,箱にこすりつけなくても点けられるマッチを作ってみたりした。それでもって,ツーリングの途中で湖に立ち寄り,靴の裏でマッチを「シュパ」,湖面に「ジュッ」,吸い終わって「ゴリッ」の合わせ技を完成させることもできたはずだが,タバコはやめるわバイクは盗まれるわでもうボロボロ…。
もしまたタバコを吸うようになったとしても,ポイ捨てはやらなそうだ。しかし,なんだろうか,この「やりきっていない感」は。それでも私はこのなんとも言えない残尿感とともに生きていくのだろう。
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