外国語習得のためのトレーニング方法の位置づけを書いてみたが,途中で飽きた。こんなことが書きたかったのではない。途中から脱線。
外国語習得のためにはトレーニングをしなければならない。トレーニングには様々な種類がある。それが何のためのトレーニングかを確認しておくことは,トレーニングを続ける上で大切である。トレーニング法について体系的にまとまっているのは 英語上達完全マップ である。これを参考に,トレーニングの位置づけについて考える。
外国語を習得した理想の状態が上の図である。外国語を読んだり聞いたりしたときに,その外国語で考え,自分の意見をその外国語で書いたり話したりできるという状態である。外国語をマスターした多くの人が「頭の中で言語を切り替えて,その言語で考えている」と言っているから,おそらく間違いはないだろう。
外国語マスターの前段階は,まず日本語に翻訳し,内容について考えて,外国語に翻訳し直すという状態である。
この状態は必ず必要である。「英語を勉強するなら英英辞典を使え」と言う話を耳にすることがあるが,現実的ではない。その方法が有効な人は,非常に限られた環境にいる人だけだからである。英英辞典を薦める人は,英語で対話ができる環境にある人なのだ。インタラクティブな状態でなければ無理である。すでに上達している人に関しても英英辞典は有効だが,そんな人はもはや「学習」などという状態ではない。
外国語初心者の段階では,上の状態にもなっていない。外国語を日本語に翻訳する段階で「考え」,内容について「考え」,日本語を外国語に翻訳し直すときにも「考え」なければならない。考える場所が多すぎて,脳味噌をフル回転させているにも関わらず,非常に時間がかかるものになってしまうのだ。
内容について考える「以外」の時間を最小にするための方法がトレーニングである。何度も練習することで,できるだけ自動的にそれをできるようにするのである。
入力と出力の両方に効くのは,文法の習得と語彙の増強である。入力の能力を高めるには,多くの文章を読み,多くの話を聴くしかないようだ。出力の能力を高めるには,瞬間的に作文ができるようにトレーニングする必要がある。
と,ここまで書いてきて何だが「つまらん」。こんなことを書きたいのではない。
1つ書きたかったことは書けた。それは「英英辞典は無理」ということである。英語ネイティブが身近にいる環境では,英英辞典の利用は有効である。英語ネイティブと話すということは,応答に速度が要求されるということであり,いちいち日本語を経由していたのでは間に合わないからである。そのため,仕方なく英語で考えなければならなくなり,必要な辞典も英英辞典になっていく訳である。英英辞典を薦める人は,必ずネイティブスピーカーと対話できる環境にある。
最近,英語の反復練習をバカみたいに続けてきたおかげで,英語が身近になってきた。そうなってくると,以前に挫折して嫌な思いをした「英英辞典」を使ってみようかという気にもなってくる。英英辞典の説明に書いてある単語が分からずに,その単語をまた英英辞典で引き続け,戻って来れないという状態が脱出できそうだからである。しかし,私のような中途半端な学習者が現段階で本当に欲しいのは,純粋な英英辞典ではなく,「英英・英和合体辞典」である。どのようなものかというと,英単語の意味が英語と日本語で書いてある本である。別々の辞書ではなく1冊の辞書の中に英英と英和が混在しているというもの。もちろんそんな辞書はないのだが。学習が進むにつれ,「英語の意味が英語で説明できたらいいんじゃないか」と思い始めたのだが,それはすなわち英英辞典がやっていることであり,しかしそうはいっても,日本語の説明もないと心もとないのである。だから「英英・英和が一緒になった辞典」という変則的辞書が欲しいという気分なのだ。
英語を勉強していると,日本語と英語の対応を身につけることよりも,英語の文化や考え方を知ることの方が大切なのではと思えてきた。もちろん,無生物が主語になるとか否定が主語になるとか,そういった英語の言語としての特徴も重要ではある。しかし,英語を話す人の発想がどこから来ているのかということをより深く知ることの方がもっと重要なのではないかと思うのだ。私 (男) が女性に話をするのにしても,男性に話しかけるのと同じことは話さない。女性に対してはそれに適した内容が必要なのである。つまり簡単に言えば「男同士で話すような下ネタは話さない」である。国内の男女についてそれだけ違うのであるから,文化的な背景が違えば話す内容はもっと違うものになるはずなのである。オバマ大統領の話の中にも,あっと驚くロジックがあったりする。ロジックに驚きがあるということ自体が不思議に思えるのだが,そこには文化的な背景が隠れている。私としてはその文化的な背景には興味があるが,決してアメリカ人になりたい訳ではない。それは,私が女性になっても意味がないと思っているのと同じである。
外国語を学ぶ上でその文化を知ることが大切だということを考えに入れると,上のトレーニング法では,「考える」の部分は語学を学ぶ前の状態でもできることにしていたが,実はそうではないということが分かる。自分の考えをまとめるだけの「考える」ではなく,相手の文化を含めて「考える」必要があるのだ。反応するのにも時間が多めにかかるし,学習するのにも膨大な時間がかかる。
最後になるが,この記事のタイトルを「英語」ではなく「外国語」にしたのは,英語が不自由なく使えるようになったら,他の外国語も学んでみたいからである。フランス語ができれば,アフリカ大陸はかなりいける (フランス語圏 - Wikipedia)。スペイン語ができれば南米は大丈夫である (Spanish language - Wikipedia)。ポルトガル語はスペイン語と似ているので誤差範囲。それから人口が多いといえば中国語だが,それを考えるのはずっと後にしよう。
少しはすっきりしたな。たかがブログなんだし,もっと気楽に考えて,まとまらない考えもまとまらないまま出してしまった方がいいのかも知れない。もともと,私はそれほど高尚な考えを求めているわけではないし,それで説法をたれたいというのでもないのだし。
2011年3月3日追記:
英英辞典は,力がついてくれば自然に使いたくなることが分かりました。無理して使う必要はありません (nlog(n): 英文を文頭から理解するという感覚)。
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n氏、考えすぎ!(笑)
確かに同じこと考えたことがります〜。
図解が分かりやすいので、「ああ、こういうことだったのか」と関心しました。
n氏からやられているよな、丸暗記で「気持ち」ー「言葉」パターンを沢山持つと理想的な一番上のパターンと、他のパターンが混在するようになるのでしょうか。自分は今、そんな感じです。
Posted by: おお at December 23, 2009 15:01気軽な会話は一番上のパターンですが、交渉などの仕事モードの時は上記のようなパターンです。それで仕事の時に気をつけていることは、とにかく場の空気をゆ〜っくりと話を進めること。時には黙り、わざと小さな声で、ドスと利かせる感じで話を進めています。
おお さん
ドスを利かせるてコワ〜。日本人同士でも勘弁して。
丸暗記したパターンを沢山持つのは,英語が身近に感じられるようになるのは確かですね。やってみてよかったことです。
Posted by: n at December 25, 2009 22:13理想的パターンとその他が混在しているというのは興味深いですね。人間の脳というのは,「一番効率的なパターン」で物事を処理するようになっているらしいので,混在というのは英語と日本語のいいとこ取りをしているというまさにその状態なのではないかと思います。